現在、仮想通貨は海外の飲食店や旅行予約サイトの支払いに使用されるなど世界的に利用が拡大しています。日本でも仮想通貨市場は広がっており、三菱東京UFJ銀行は2017年に独自の仮想通貨「MUFGコイン」のサービスを開始する予定です。
このような背景を受け、昨年6月、Bitcoin(ビットコイン)などの仮想通貨を規制する改正資金決済法が成立しました。
目次
- 1 仮想通貨って何?
- 1-1 ビットコインとは
- 1-2 規制に至った背景
- 2 改正法の具体的な内容
- 2-1 登録制の導入
- 2-2 マネロン・テロ資金供与対策
- 2-3 利用者保護のためのルールの整備
- 3 仮想通貨の今後の課題
1 仮想通貨って何?
この度の法改正により規制対象となる仮想通貨とは、「不特定多数間での物品購入・サービス提供の決済・売買・交換に利用できる『財産的価値』で、情報処理システムによって移転可能なもの」(資金決済法2条5項)と定義されます。
つまり、仮想通貨は決済手段(モノやサービスを購入する機能)を持ち、実際の通貨との交換も行うことのできる電子情報データとなります。
1-1 ビットコインとは
(出典: AFP)
ビットコインは現在もっとも多く取引されている電子通貨です。
2014年、仮想通貨の最大手だった「マウントゴックス」が経営破綻したというニュースは記憶に新しく、当時仮想通貨に対する社会的な信用は失墜。同社のマルク・カルプレス社長は記者会見で「ビットコインがなくなってしまい、本当に申し訳ない」と謝罪し、114億円相当のビッコインが消失したことを明らかにしました。
1-2 規制に至った背景
しかし、マウントゴックス破綻後も仮想通貨取引量は減少することはありませんでした。2015年、ドイツ・エルマウで開かれたG7サミット(主要7カ国首脳会議)では、仮想通貨の適切な規制と透明性を確保することで一致。各国は、仮想通貨と法定通貨を交換する交換所に対し、登録・免許制を課すとともに、顧客の本人確認義務などのマネー・ローンダリングやテロ資金供与規制を課すことにしました。
2 改正法の具体的な内容
Gサミットにおける国際的な要請も踏まえ、利用者保護のためのルールを整備しました。
2-1 登録制の導入
仮想通貨と法定通貨の交換業者に対して登録制を導入しました。仮想通貨交換業者は指定の資本要件・財産的基礎等を満たしたうえで、内閣総理大臣の登録を受けなければなりません。
2-2 マネロン・テロ資金供与対策
仮想通貨がマネー・ローンダリングやテロ資金に利用されることを防ぐため、口座開設時における本人確認などを義務付けました。また、本人確認記録、取引記録の作成・保存や、疑わしい取引の場合は当局へ届出することも盛り込まれました。
2-3 利用者保護のためのルールの整備
(出典: BLOOMBERG/YURIKO NAKAO)
利用者の信頼を得るため、適切な情報提供やシステムの安全管理を確保します。また、利用者が預託した金銭・仮想通貨の分別管理や財務諸表についての外部監査などに関するルールなども規定しました。 (参照:金融庁)
3 仮想通貨の今後の課題
ビットコインをはじめとする仮想通貨について、大和総研の主任研究員は「仮想通貨を巡る制度整備として、今回の銀行法等改正法案が、重要な一歩となること」としつつも、「今回、整備されるのは、あくまでもマネー・ローンダリング、テロ資金供与対策の国際的な要請や、国内における仮想通貨の交換所の破綻事案を受けて、迅速な対応が要求される案件が中心。言い換えれば、今回の法律改正で、仮想通貨を巡る制度が全て整うわけではない」と指摘しました。
今後は、仮想通貨の売買・使用等を巡る消費税などの税制上の取扱いはどうあるべきか、仮想通貨の貸付けに利息制限法・貸金業法を課すべきか、仮想通貨の供託・信託はどうあるべきかなどが課題になるとしました。(参照:大和総研 金融調査部「仮想通貨をめぐる制度整備」)