訪問・通信販売で悪質な業者が増加していることを受けて、昨年3月、取り締まりを強化した改正特定商取引法や、改正消費者契約法が成立しました。
改正では、虚偽の情報で商品を購入させるなどした業者への罰金を現行の300万円以下から1億円以下に引き上げられました。
このほか消費者が日常生活において 通常必要とされる分量を著しく超える商品の売買契約等について、行政処分(指示等)の対象としました。なお、改正法は今年中に施行される予定です。
目次
- 1 悪質業者に対する刑事罰などを強化した特定商取引法
- 1-1 罰金が300万円から1億円に
- 1-2 違反業者の法人設立を制限
- 1-3 多すぎる商品販売にNO!
- 2 不適切な内容の契約書は無効とした消費者契約法
- 2-1 消費者の利益を不当に害する条項は無効
- 2-2 契約条項の無効の例
1 悪質業者に対する刑事罰などを強化
改正法は、うそをついて商品を買わせたり、違反行為を行うために次々と会社を設立する業者に対応しました。
1-1 罰金が300万円から1億円に
うその情報(不実告知)により商品を販売する業者に対して課される罰金を300万円以下から1億円以下に引き上げました。
たとえば、マンションの購入を勧める際、景観が非常に良いマンションであることを告げ、他方で、その景観を台無しにする高層マンションの建設計画があることを知っていながらそれを告げないような場合が不実告知にあたります。(参照:東京弁護士会「消費者契約法・特定商取引法 改正」)
また業務停止命令違反に対する懲役刑の上限を2年から3年に引き上げ、業務停止命令の期間も最長1年から2年となりました。
1-2 違反業者の法人設立を制限
業務停止を命じられた法人の取締役やこれと同等の地位・経営権を有すると認められる者に対して、法人を新たに設立すること禁止できるようになりました。たとえば違反業者が業務停止の行政処分を受けたあと、あらたに会社を作り、同様の業務を行った場合、個人は3年以下の懲役又は300万円以下の罰金、法人は3億円以下の罰金が科せられます。
1-3 多すぎる商品販売にNO!
これまで訪問販売のみ適用されていた過量販売規制を新たに電話勧誘販売にも適用できることとなりました。
過量販売規制とは日常生活において通常必要とされる分量を著しく超える商品・サービスを購入する契約を締結した場合、消費者は、契約締結の時から1年以内であれば、これを解除することができるという制度です。(特定商取引法9条の2)
改正法では電話勧誘販売において、たとえば消費者が寝具を4か月で6回購入する、72本の化粧水と乳液や2,160袋のパウダーを購入するなど、日常生活で必要とする分量を明らかに超えた商品の売買契約を結んでしまった場合、申込みの撤回又は解除を行うことができます。
2 不適切な内容の契約書は無効とした消費者契約法
悪徳事業者が作成する契約条項の中には、本来消費者に認められている権利をわざと放棄させるようなものを盛り込み、サインさせるといった事例が見受けらます。
2-1 消費者の利益を不当に害する条項は無効
たとえば次のような条項になります。
- 携帯電話端末の売買契約…「ご契約後のキャンセル・返品、返金、交換は一切できません」
- 大学医学部専門の進学塾と消費者との間の冬期講習受講契約…「代金払込後の解除は一切できません」
しかし、事業者に債務不履行がある場合や、事業者が行った給付に瑕疵があり契約の目的を達することができない場合、消費者には契約を解除する権利が認められています。(参照:東京弁護士会「消費者契約法・特定商取引法 改正」)
そこで改正法では、本来あるべき権利を放棄させるような条項を無効としました。
2-2 契約条項の無効の例
改正法では消費者と事業者との間に情報・交渉力の格差があることを考慮し、 契約の取消しと契約条項の無効を規定しました。次のものを消費者の利益を不当に害する条項としています。
1 | 事業者の損害賠償責任を免除する条項 |
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2 | 消費者の支払う損害賠償額の予定条項 |
3 | 消費者の利益を一方的に害する条項 |