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世界と比較した日本のIT系エンジニアの給与と地位

アメリカと比べたら日本のエンジニアは軽視されている、と批判を受けることが少なくありません。確かにアメリカはマイクロソフトやグーグルを誇る世界最先端のIT大国。最近は人工知能のAI産業やICT産業が盛り上がりを見せており、IT労働者の社会的地位や年俸も高まっていると聞きます。

 

 

目次

  1. 1 アメリカのIT系の給与は?
  2. 1-1 もっとも高給なのはサンフランシスコ
  3. 1-2 その他世界各都市の給与
  4. 2 日本のIT系の給与の実態
  5. 2-1 不遇な環境に置かれるプログラマー
  6. 2-2 高い専門性が報酬に結びつかないシステムエンジニア
  7. 2-3 日米の差はIT技術者に対する“捉え方の差”
  8. 3 日本政府、100万人のIT人材を追加育成する方針

 

1 アメリカのIT系の給与は?

求職・転職サイトのhired.comでは2016年における世界各都市のITエンジニアのサラリー(給与)を紹介しています。

 

 

1-1 もっとも高給なのはサンフランシスコ

アメリカのなかでも給与が高かったのはサンフランシス・ベイエリアで13万4000ドル(約1522万)となりました。近年、サンフランシスコはスタートアップやイノベーションの中心地となりつつあり、南部に位置するシリコンバレーを凌ぐほどと言われています。

 

そのほかは、シアトルで12万6000ドル(約1,432万円)、ニューヨークで12万ドル(約1,364万円)、ロサンゼルス11万7000ドル(約1,329万円)となり、半導体産業を中心に発展してきた西海岸地区の強さを印象付けました。

 

・北アメリカのITエンジニア給与ランキング

順位 都市 給与
1 サンフランシス・ベイエリア 13.4万ドル(約1,522万円)
2 シアトル 12.6万ドル(約1,432万円)
3 ニューヨーク 12.0万ドル(約1,364万円)
4 ロサンゼルス 11.7万ドル(約1,329万円)
5 ボストン 11.6万ドル(約1,315万円)
6 サンディエゴ 11.2万ドル(約1,270万円)
7 デンバー 11.2万ドル(約1,270万円)
8 ワシントン 11.1万ドル(約1,259万円)
9 オースティン 11.0万ドル(約1,247万円)
10 シカゴ 10.8万ドル(約1,225万円)
11 トロント 7.4万ドル(約839万円)

(参照:hired.comGIGAZINE

 

 

1-2 その他世界各都市の給与

このほか、hired.comではヨーロッパではイギリス・ロンドンとフランス・パリ、アジアではオーストラリア・シドニー、メルボルン、そしてシンガポールの給与を紹介しています。

 

・ その他主要都市のITエンジニア給与ランキング

順位 都市 給与
1 メルボルン 8.3万ドル(約941万円)
2 シドニー 8.1万ドル(約918万円)
3 ロンドン 7.3万ドル(約828万円)
4 シンガポール 6.1万ドル(約692万円)
5 パリ 5.5万ドル(約623万円)

 

 

2 日本のIT系の給与の実態

2015年度のシステムエンジニアの平均年収は591万円、プログラマーは408万円となります。(参照:年収ラボ)

 

 

2-1 不遇な環境に置かれるプログラマー

不遇

(出典:Nigeria Developers Cafe)

 

年収ラボでは、プログラマーの専門性は高く、プログラムを書ける人材は限られているとしたうえで、しかしながら、日本のプログラマーは欧米諸国と比べて評価が低いと指摘しました。

 

「米国のプログラマーの年収は、日本のプログラマーの約2倍以上で、大学教授(米国)の収入より高い水準にあります。また、近年ではインドをはじめ海外のプログラマーを採用する企業が増えています。プログラミング言語は世界共通なので、人件費の安い海外のプログラマーを採用した方が、日本の企業にとっては得なのです。こうした流れを受け、日本のプログラマーの労働環境は厳しい」

 

 

2-2 高い専門性が報酬に結びつかないシステムエンジニア

さらにSE(システムエンジニア)については収入面で正当に評価されていないと指摘。

 

「基本的にプログラミングは世界共通語ですので、どの国で行っても同じです。したがって、SEやプログラマーの雇用は世界的に広がっており、その賃金(水準)も世界規模で考えられます。世界的に見た場合、日本のSEの収入は高い水準にあり、中国は日本の1/4、ベトナムは1/10です」

 

企業からすれば人件費の安さは非常に魅力的。近年はシステム開発や運用管理を人件費が安い海外の子会社に委託するオフショア開発の手法が一般的となっています。国内の高い専門性を有したシステムエンジニアが海外の労働力に取って代わられているため、賃金の上昇に結びついていない状況です。

 

 

2-3 日米の差はIT技術者に対する“捉え方の差”

日本とアメリカでITエンジニアの待遇に差が生まれる要因について、ITキャリア・オンラインは次のように分析しました。

 

「アメリカのITエンジニアは、原則として大学等でコンピューター工学を専攻し基礎理論をきちんと学んだ者のみに門戸が開かれるのに対して、日本は人材不足のため、文系の学生でも『使って育てる』スタンスで企業がなりふりかまわず採用しているのが現状」

 

日本のITエンジニアの人材不足は以前から問題となっており、企業が求める水準に達していない学生でも採用せざるを得ない状況になっていると指摘しました。

 

「日本ではプログラミングは未だに労働集約型の単純労働と捉えられている風潮があり、SIer※(システムインテグレーター)からきた情報技術に詳しくない人間が上流工程に携わり、エンジニアを指導するという不思議な光景が見られます」

 

仕事の発注側にエンジニアの仕事を正しく評価できる人材がおらず、いわゆる買い叩きのような状態になっていると分析。

 

一方、アメリカの場合は
「ITエンジニアになること自体がステイタスであり、サービスやプロダクトに『技術者』としてのアプローチをすることが逆に歓迎される環境にあります。また、アメリカのスピリットを象徴しているとも言えるベンチャー企業への投資意欲が全般的に高いことも、IT業界の隆盛とITエンジニアの地位向上を後押ししています」としました

 

※ システムインテグレーターは主に企業を顧客として情報システムの企画・運用・管理の業務を一括して請け負う業者を指す。

 

 

3 日本政府、100万人のIT人材を追加育成する方針

未来のICTインフラ整備の需要に備えて、総務省は2025年までに「IT人材」を100万人育成する方針であると発表。今後、データがビジネスの主役となり、産業構造や就業構造が大転換するとし、社会経済の効率化(ICT)から新たな社会経済を創造する必要があると主張しました。

 

昨年6月に提出された情報通信審議会の中間報告書では、ICT人材の現状について、アメリカ等と比較して質・量ともに不足しているとともに、 ユーザ企業よりもICT企業に多く偏在していると指摘。

 

ICT(参照:総務省情報通信審議会配布資料

 

グローバルに競争するIoT時代を迎え、2025年までの今後10年間で、ICT企業中心の「日本型」からユーザ企業中心の「アメリカ型」への転換を図り、最大200万人規模のICT人材の創出することが必要としました。

 

具体策としては、初等・中等教育におけるプログラミング教育の導入や、ICT人材への移行を促す新たな資格の創設などを検討しているとのことです。また、既存のICT人材についても、IoT時代に求められるスキルへの転換が急務だと付け加えました。

 

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