市場成長率年10%以上と言われるグリーン業界。環境保全が叫ばれるようになってから注目されてきた業界ですが、今や観葉植物のレンタル市場だけでも約500億〜600億円と言われています。これまでグリーンビジネスには興味を示さなかった中国までも本気で取り組み始めました。
いまあらためて注目されてきているグリーンビジネス。今後どのような発展を遂げるのでしょうか。
目次
- 1中国が取り組んだ緑化キャンペーン
- 1-1仕掛けたのは鉄道会社
- 1-2中国の緑化支援に90億円計上へ
- 2“生活の快適さ”追求に舵を切った00年代
- 3下火になったグリーンビジネスに未来はあるか
- 3-1トランプ大統領はグリーンビジネスに興味なし!?
- 3-2脱原発を表明したドイツのその後
- 4最新のグリーンビジネスを紹介
1 中国が取り組んだ緑化キャンペーン
2016年11月、中国の地下鉄に奇妙な電車が現れたと話題になりました。中国大手のWebメディア「騰訊網」は、浙江省杭州市の地下鉄1号線で、大自然をテーマにしたラッピングした車両がお披露目されたと報道。座席から網棚にいたるまで車内設備に人工芝などのフェイクグリーンを施しました。
電車内はまるでジャングルのような光景になり、居合わせた市民たちは物珍しそうにカメラで写真に収めていたそうです。
(参照:レコードチャイナ)
1-1 仕掛けたのは鉄道会社
しかし、乗客の評判はよくありません。「ラッシュアワーは混雑するから邪魔だ」「草で手を切ったら、どうする。すぐやめろ」などの辛辣な批判が多数。鉄道会社は当初、長期で運行する予定でしたが、わずか12時間で奇妙な緑化キャンペーンは打ち切られました。
鉄道会社は、「都市の森林を通じて、人びとにクリーン、低炭素の理念を伝える」ことを目的に徹夜して人工芝や人工植物を置いたと説明。
緩やかになったとはいえ、経済成長を続ける中国経済。急速な成長で失ってしまった自然の尊さを市民に訴えたかったのではとも指摘されています。
1-2 日本政府、中国の緑化支援に90億円
ラッピングの電車の件はさておき、中国政府は全国規模で植林緑化運動に取り組んでいます。
きっかけは1998年の青海省でおきた長江の大氾濫。中国国内で死者が3000人を超え、被災者は2億4千万人にのぼるなどの大災害に見舞われました。
この大洪水を教訓に、中国は植樹事業に力を入れてきましたが、当時の小渕総理大臣は日中植樹支援として100億円を拠出※1。さらに2015年12月、日本政府は新たに90億円を拠出して、中国の植林運動を支援しています。
日本政府は、植林・緑化の支援事業を通じて中国との関係改善を図るのが目的。また、支援活動が中国から飛来するPM2.5など汚染物質の低減につながるとしています。
しかし、政府与党内では緑化支援に対する批判的な声も多く、「いまだに日本が中国の植林事業を支援する必要があるのか」「形を変えたODA(政府開発援助資金)だ」などの意見が相次ぎました。
※1 1999年7月の小渕総理(当時)訪中時に、1998年の大洪水を教訓として全国規模の植林緑化運動に取り組んでいる中国に対する民間団体等による協力を支援するため、100億円規模の基金の設立を小渕総理が提案。中国に対して植林緑化協力を行おうとする日本の民間団体に資金助成を行うとの仕組みを定める交換公文を取り交わした。日本政府は同委員会に対し、平成11年度の本予算及び補正予算から計100億円を拠出。(参照:外務省HP)
2 “生活の快適さ”追求に舵を切った00年代
緑化運動は日本においても至るところで取り組まれてきました。大規模なものとしては、都会におけるヒートアイランド現象を緩和する手段として街路樹の植栽や壁面の緑化があります。
また、緑化にはCO2低減など科学的な効果だけでなく、都会に緑を増やすことで生活の快適さや精神的な安らぎの効果も期待されます。
高度経済成長期では、建物とコンクリートを増やすことに力を注ぎましたが、高層ビルの無機質で冷たい感じに、あらためて自然のありがたみを感じたといいます。
日本はこういった背景を受け、都市生活に快適性や居住性を求めるアメニティーの概念が根付くようになりました。そして、家庭用ガーデニング関連、観葉植物のレンタルサービスなどグリーンビジネスが注目されるようになったのです。
3 下火になったグリーンビジネスに未来はあるか
グリーンビジネスで雇用を創出しようと民進党の蓮舫代表は主張しています。また、オバマ前アメリカ大統領も就任当時は環境ビジネスで500万人の雇用の創出が可能だと訴えていました。
ところが、グリーンビジネスや再生可能エネルギー事業での雇用創出は思ったほど進んでいないのが現状です。
3-1 トランプ大統領はグリーンビジネスに興味なし!?
トランプ新大統領は、グリーン産業には目もくれず、国内の炭鉱産業の復活を重視。化石燃料の生産を増加させ、エネルギー自給率100%を目指すとしています。(参照:Wedge infinity)
3-2 脱原発を表明したドイツのその後
また、脱原子力エネルギーに舵を切ったはずのドイツはその移行に苦しんでいます。
2011年3月に発生した東日本大震災をきっかけに、ドイツのメルケル首相は2022年までにドイツ国内の原子力発電所稼動を完全に停止すると発表し、世界を驚かせました。
しかし、すべての原子力発電所を停止させ廃炉するには巨額の予算が必要とされています。また、原子力関連会社はドイツ政府に対し、稼働停止による約295億円の損害賠償を請求。仮にドイツ政府が敗訴した場合、その費用は国民の税金でまかなわれることになりますが、果たして国民が納得するのか。ドイツの今後の動きに注目が集まります。(参照:日経ビジネス)
4 最新のグリーンビジネスを紹介
グリーンビジネスによる急速な雇用創出は難しいかもしれませんが、再生可能エネルギーに未来を託す会社をいくつかご紹介したいと思います。
・ ISTエネルギー社
(参照:Green Living)
この会社はゴミや不要になった硬貨からガスと電気に変換させる機械を開発。安価に電力を提供することができ、また、それに廃棄物処理コストを削減することができます。学校や病院などの大型施設に設置することも可能です。
・ グレートプレーンズ社
(参照:ファゼンダ藤田)
カメリナ※1からバイオディーゼルを作ることに成功した会社です。カメリナを原料とするバイオディーゼル油ジェット燃料は大気へのCO2放出を80%も減少させることがわかっています。次世代のクリーンエネルギーとして注目されています。
グレートプレーンズ社は今後5年間で、100万エーカーの燃料を生産し、約1億ガロンの燃料を生産することを目指しています。
※ 1
カメリナとはアブラナ科に属する植物。おもにアメリカ、カナダ等で栽培されている。種子から絞られるカメリナ油は食用、またバイオディーゼル燃料の原料としても近年注目されている。
・ ボレゴソーラーシステム社
ボレゴ社は太陽エネルギーを活用した、会社と顧客の双方にとってWin-Winなビジネスモデルを構築しました。
顧客はボレゴ社の設備費を負担するかわりに、使用するエネルギーのみを支払うことができるという電力購入契約を交わします。
消費者は太陽エネルギーをこれまで以上に手頃な価格で入手できるようになり、製造者はさらに利益を上げることができるシステムとなっています。
・ リトルフットエナジー社
廃熱によるエネルギー生産に注目した会社です。
同社は、シャワーで排水溝に流れるお湯をエネルギーに変換して、空調に電力を供給するシステムを開発しました。
このシステムは、さまざまなプロセスで使用される熱をリサイクルし、さらにその熱をほかの設備に再分配することができます。