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東大、京大が世界中の憧れに?指定国立大制度の導入で教育水準の引き上げへ

日本の大学法人に大きな変革が訪れようとしています。文部科学省は、昨年1月、世界の有名大学と互角の競争力やブランド力を持たせ、研究やイノベーションの水準を引き上げる「指定国立大学」制度の概略を発表しました。

 

世界には米オックスフォード大学やマサチューセッツ工科大学、英ケンブリッジ大学など名だたる名門大学がありますが、日本が誇る東京大学は、世界大学ランキングでも40位程度となっています。

 

文部科学省は指定国立大制度の導入により国際的に活躍できる人材を育成したい考えで、資金力の豊富な民間企業との連携も含め、教育研究環境の改革に乗り出しました。

 

果たして、世界中から優秀な人材が日本の大学に留学し、米マイクロソフトやアップルを脅かす企業が誕生するような日が訪れるのでしょうか。

 

 

目次

  1. 1 指定国立大学制度の概略
  2. 1-1 東大、京大など計7大学が応募済み
  3. 1-2 越えなければならない3つの壁
  4. 2 最新の世界大学ランキング
  5. 2-1 日本最高位は東大の39位
  6. 2-2 高等教育の成長が著しいアジア圏
  7. 3 目指すはスーパーグローバル大学

 

1 指定国立大学制度の概略

文部科学省のホームページには、有識者会議の資料として配られた指定国立大学の基本的な考え方が公開されています。これによると、当制度の導入目的は「国際的な研究・人材育成、知の協創拠点となる国立大学の形成」とされ、必要な取り組みとして、1.国内トップレベルの研究力、国際協働、社会連携、2.人材獲得・育成、3.研究力強化、4.国際協働、5.社会連携が挙げられました。

 

・ 新制度導入に向けた5つの取り組み

1 国内トップレベルの研究力、国際協働、社会連携 優秀な人材を引き付ける世界最高水準の教育研究を展開するため、国内の競争環境の枠組みから出て国際的な競争環境の中でその卓越性の更なる伸張を図る
2 人材獲得·育成 優秀な学生、教員、研究者を国際市場からの引き付け、育成する
3 研究力強化 独創的で卓越した研究分野を生かして新たな価値創造のための分野融合や新領域の開拓をする
4 国際協働 海外大学等との連携を含めた国際協働を図る
5 社会連携 卓越した研究成果を生かすための社会との協働・連携の積極的な展開を行う

(参照:文部科学省)

 

文科省は5つの改革を推し進めるため、大学法人が透明性の高い運営を行い、学内外から信頼されるガバナンス体制を構築することが必要だとしました。また、資金力の強化に向けては、財源の多角化・多元化をすることで、資金調達を円滑する方針を掲げました。

 

 

1-1 東大、京大など計7大学が応募済み

指定国立大学に申請するためには、研究力、国際協働、社会との連携の分野で国内最高水準に達している必要があります。具体的には上記3分野において、それぞれ1つ以上の要件の国内10位以内に位置することと定められました。

 

・指定国立大学に申請するための要件(一例)

研究力 学研究費助成事業における分野単位で2分野以上、新規採択件数の累計が国内10位以内
Q値(論文に占めるトップ10%補正論文数の割合)が国内10位以内
社会との連携 受託・共同研究収益の割合の平均値が国内10位以内
寄附金収益の割合の平均値が国内10位以内
特許権実施等収入の割合の国内10位以内
国際協働 国際共著論文比率の平均値が国内10位以内。
学部における全学生に占める留学生及び日本人派遣学生の割合の平均値が国内10位以内
学院における全学生に占める留学生及び日本人派遣学生の割合の平均値が国内10位以内

(参照:文部科学省)

 

昨年11月から公募を開始したところ、東北大学、東京大学、東京工業大学、一橋大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学の7大学から申請があったことがわかりました。なお、各大学からの申請は3月末で締め切られており、5月以降に行われるヒアリング審査や現地視察を経て、夏頃に指定国立大学法人が決定される予定です。

 

申請した大学は今後、想定される経済的・社会的環境の変化を踏まえ、将来のプランとそれを実行するために必要な手段を明らかにすることが求められます。

 

文科省は、世界の有力大学と対等に競い合える大学にすることを最終目標に掲げており、これを実現することで大学世界ランキングにおいて上位に食い込む狙いです。

 

 

 

1-2 越えなければならない3つの「壁」

文科省は、日本の大学と世界の有力大学を比較したときに、学内の「壁」、学外との「壁」、海外との「壁」の3つの壁が問題になっていると指摘します。

 

・ 海外大学と比較したときの乗り越えるべき3つの「壁」

学内の「壁」
  • 学部、研究科、研究所など部局間の目標や情報の共有、リソースの流動性が少ない
  • 融合分野、新領域の開拓が進みにくい
  • 研究科・専攻ごとに定員が固定化されているため、大学院生の所属が固定化され、優秀な人材獲得を阻害している
  • 報酬において国家公務員準拠の慣行が踏襲されているため、個々の教員の業績が適切に反映されていないケースがある
学外との「壁」
  • 産学連携が研究者個人の単位で行われているため、産業界のR&D(研究開発)が海外の大学に流出している
  • 新たなシステムの変革に向けての提案等について、大学が組織全体で総合力を発揮して取り組む活動が十分に行われていない
  • 社会からの評価を受けることが少ない
  • 社会の要請に対して真摯に向き合う姿勢に欠けている。
海外との「壁」
  • 留学生が学びやすい環境の整備に努めているが、途上
  • 大学に在籍する教職員の活動が「内向き」の場合には、海外からの研究者が、学内で自由闊達な活動を行うことができない
  • 海外からの研究者を引き付ける教育研究環境の充実や、生活環境も含めた支援についても途上

 

特に学外との「壁」については、日本と世界とでは大きな開きがあるとされます。旭化成が行った日米の産学連携活動の比較調査によれば、日本の大学では多数の特許が出願されているものの、高いロイヤルティー収入に結びつく特許はあまり出願されていないことがわかりました。

 

一方、米国の大学では多額の研究費を費やして少数の特許が出願されていますが、それらの特許は、多額のロイヤルティー※収入を生み出していており、日本の大学との差が歴然です。

 

・ 日米の大学の出願1件当たりの研究費とロイヤルティー収入の比較

大学名 出願1件あたりの研究費 1件当たりのロイヤルティー
カリフォルニア大学 2億3300万円 2721万円
マサチューセッツ工科大学 1億9900万円 1924万円
スタンフォード大学 1億9800万円 5312万円
ハーバード大学 3億6900万円 3331万円
東京大学 4800万円 18万円
神戸大学 4700万円 15万円
慶應義塾大学 3400万円 10万円

(参照:旭化成「日本及び米国の大学における産学連携活動に関する分析」)

 

旭化成は、日米の比較からは、大学における産学連携活動の違いは、研究の規模の差の違いはさることながら、知財戦略に大きな差があると指摘します。日本の大学と企業は、大学発特許の待遇改善に取り組みが求められます。

 

※ ロイヤルティーとは、特許を利用する者が、特許権を持つ者に支払う対価のこと。ライセンス使用料ともいう。

 

 

2 最新の世界大学ランキング

世界と日本の大学で産学連携に大きな差があることはわかりましたが、ここで英タイムズ社が発表している最新の世界大学ランキング※(Times Higher Education World University Rankings 2016-2017)を見てみましょう。

 

・ 世界大学ランキング(1〜10位)

順位 大学名
1 オックスフォード大学 イギリス
2 カリフォルニア工科大学 アメリカ
3 スタンフォード大学 アメリカ
4 ケンブリッジ大学 イギリス
5 マサチューセッツ工科大学 アメリカ
6 ハーバード大学 アメリカ
7 プリンストン大学 アメリカ
8 インペリアル・カレッジ・ロンドン イギリス
9 スイス連邦工科大学チューリッヒ校 スイス
10 カリフォルニア大学バークレー校 アメリカ

(参照:World University Rankings 2016-2107

 

タイムズが毎年行っているランキングは全部で980の大学がリスト化されており、大学の実力を計る世界最大の指標となっています。審査基準には、論文数や論文引用数が審査対象となるほか、外国人教員比率や留学生比率など国際化の要素も順位に反映されます。

 

最新の2016-2017版では、上位陣は米英がほぼ独占した結果となりました。英オークスフォード大学は、5度首位に輝いたことのあるカリフォルニア工科大学を抑えて、過去12年間で初めて1位となりました。また、米国の大学が首位を奪われるのも初のことです。

 

Bodleian Library in Oxford

(▲英オックスフォード大学)

 

スイス連邦工科大学チューリッヒ(ETH Zurich)は、2年連続で9位にランクインしました。英米以外の大学として、過去10年にわたりトップ10入りした初の大学となりました。

 

※世界大学ランキングは、英教育専門誌タイムズが教育、論文引用数、産学連携などの指標に基づいて上位200までの大学を毎年秋ごろにランキング形式で発表している。

 

 

2-1 日本最高位は東大の39位

日本からはトップ100までの間に東京大学39位、京都大学91位の2校のみがランクインしました。一昨年までは東京大学がアジアで首位を維持していましたが、去年よりシンガポールと中国の大学に追い抜かされました。

 

・ 世界大学ランキング アジア抜粋版

順位 大学名 国名
24 シンガポール国立大学 シンガポール
29 北京大学 中国
35 清華大学 中国
39 東京大学 日本
43 香港大学 香港
49 香港科技大学 香港
54 南洋理工大学 シンガポール
72 ソウル大学 韓国
76 香港中文大学 香港
89 KAIST 韓国
91 京都大学 日本

 

 

2-2 高等教育の成長が著しいアジア圏

ランキングを紹介している英タイムズの記事は、24カ国から289のアジアの大学が上位200位内にランクインしたことを受け、アジアにおける高等教育の改善が顕著になってきたと評価しました。

 

中国の北京大学については、昨年42位から29位でトップ30入りし、清華大学は47位から35位にあがり、トップ40に入りました。

 

また香港の6つの代表的な大学のうち5つがトップ200入りし、他のどのアジア地域よりも多くなりました。

 

韓国も大きな進歩を遂げ、また、シンガポール国立大学はアジアトップの24位にランクインしました。

 

pekin

(▲中国・北京大学 / 出典: Youth Carnival)

 

National-University-of-Singapore

(▲シンガポール国立大学 / 出典: Top Ten Schools Colleges Universities)

 

文科省は、2013年、国立大学改革プランとして10年間で世界大学ランキングトップ100に10校ランクインさせることを目標に掲げていますが、他のアジアに大学が躍進をする中、その道のりは険しいものとなりそうです。

 

 

3 目指すはスーパーグローバル大学

文科省は、今後、新興国の台頭による競争激化で日本の国際的地位が低下することがないよう、高付加価値を生み出す国立大学を創らなければならないとします。

 

そのための施策として、今後10年で世界大学ランキングトップ100に10校ランクインさせるほか、2020年までに、日本人の海外留学者数を6万人(2010年)から12万人に、外国人留学生の受入数を14万人(2012年)から30万人に倍増させ、さらに20の大学発新産業を創出する取り組みを始めています。

 

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(▲文科省による大学改革プラン。現在は第3期中期目標期間の段階に入っている)

 

日本の大学が、オックスフォード大学や、カリフォルニア工科大学を凌ぐスーパーグローバル大学となることは果たしてできるのか。今後の文科省の取り組みと国立大学の動向に注目が集まりそうです。

 

 


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