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会社設立時からも必要!テクノロジーの民主化等も活用したデジタル化推進

ITを含む先端技術の活用が、今後のビジネスの発展に大きな影響を及ぼすようになってきており、新設会社や中小企業等においてもDX(デジタルトランスフォーメーション)等の推進が必要となってきました。そして、DX等の推進のキーとなるのが「テクノロジー(デジタル・AI・IoT等)の民主化」です。

 

この記事では、テクノロジーの民主化等を活用したデジタル化推進を取り上げ、DXやテクノロジーの民主化の内容、必要とされる理由、テクノロジーの民主化の種類・特徴、活用例のほか、デジタル化推進等の進め方などを説明していきます。

 

自社事業にAI・IoT等のテクノロジーを活用したい方、導入方法やポイントなどを把握したい方は参考にしてみてください。

 

 

1 DXやテクノロジーの民主化の概要と求められる背景

DXやテクノロジーの民主化の概要と求められる背景

 

まず、DXやテクノロジーの民主化の主な特徴、ビジネスで必要とされる理由を説明しましょう。

 

 

1-1 DXとその必要性

1)DXとは

『DX推進指標』とそのガイダンス」(2019年、経済産業省)において、DXは以下のように定義されています。

 

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

 

つまり、DXはデータやデジタル技術を使って、顧客視点で新たな価値を創出することであり、その実現に向けて、ビジネスモデルや企業文化などの変革を伴う取組であると指摘しています。

 

従って、ITを活用して既存のビジネスシステムを少し改善するといったレベル(「デジタイゼーション」等)はDXとは言えません。デジタル技術を活用してこれまでのビジネスのあり方、経営組織の仕組み等を根本的に変えることで、ビジネスでの新たな価値を生み出し、事業の成長や企業の発展に繋がるような取組がDXなのです。

 

そして、この取組は顧客ニーズへの対応が前提になります。いくら革新的な価値を創出する取組であったとしても顧客視点から外れたビジネスモデル(ビジネスの仕組み)に変革したのでは価値がありません。DXの推進においてはターゲットにとって有用な価値を生み出すことが不可欠です。

 

なお、他のIT化とDXの取組を整理すると以下のような違いが見られます。

 

・デジタイゼーション:

各業務で使用されているアナログな仕組みについてデジタルツール等を活用したシステムに移行すること

 

・デジタライゼーション:

中長期的視点等を踏まえて業務全体のプロセスをデジタル化すること

 

・DX:

顧客ニーズに基づき、デジタル技術等を活用し企業組織を含むビジネスシステムを変革して新たな価値を生みだすこと

2)DXが求められる理由

経済産業省の「デジタルガバナンス・コード2.0」では、近年の経営環境を以下のように整理しています。

 

「あらゆる要素がデジタル化されていくSociety5.0に向けて、ビジネスモデルを抜本的に変革し、新たな成長を実現する企業が現れてきている。一方、グローバルな競争の中で、競合する新たなビジネスモデルにより既存ビジネスが破壊される事例(デジタルディスラプション)も現れてきている」

 

こうした状態へと変化しつつある今日において、企業が持続的な企業価値を向上させていくためにDXの実現が必要だと指摘しています。

 

人間の生活および企業の活動は産業革命以降、急速な発展を遂げしてきました。経済発展の中で、生活の利便性や快適さの向上、エネルギーや食料の需要の増大、寿命の延伸や高齢化が進展しています。

 

また、グローバル化の進展、国際競争の激化、富の集中や地域間の不平等の現象が顕著になり始めました。生活の向上や経済発展が見られる一方、解決すべき社会的課題は増えその内容も複雑化しています。

 

例えば、温室効果ガス(GHG)排出の削減、食料の増産やロスの削減、高齢化社会への対応(コストの抑制)、サステナブルな産業化の推進、富の再配分や地域間の格差是正、などの課題が生じています。

 

こうした経済発展と社会的課題の解決を両立することが不可欠な状況になってきており、その達成ための手段として企業におけるDXの推進が求められています。

 

IoT、ロボット、人工知能(AI)、ビッグデータなどの社会およびビジネスの在り方に影響を及ぼす新技術が登場するようになってきており、これらの先端技術を活用したビジネスの変革が、経済発展と社会的課題の解決を両立するカギとして期待されています。

 

また、DXを実現することによって企業には、環境変化に対応できる組織を形成する力、競争優位を獲得できる力、生産性を高める力、様々な課題に対処できる力、何より顧客ニーズに向き合いターゲットが求める価値を提供できる力を手に入れることが可能になります。

 

加えてDXへの取組は、業務上の問題を改善し生産性を高めることを通じて従業員の労務環境や就労条件等の改善にも繋がるため、働き方改革にも役立つと期待されています。

 

 

1-2 テクノロジーの民主化と必要性

1)テクノロジーの民主化とは

最近、「IT(デジタル技術)の民主化」「AI(人工知能)の民主化」「IoT(もののインターネット)の民主化」などの表現がよく見聞きするようになってきました。ここではこうしたデジタル技術を含む科学技術に関する民主化の動きを「テクノロジーの民主化」として扱います。

 

この「テクノロジーの民主化」とは、一部の大企業や専門分野の企業だけが特定のテクノロジーやその製品を利用するという状態ではなく、会社設立したばかりの企業や中小零細企業など、どの事業者でも利用できる状態のことです(詳しくは後述します)。

2)テクノロジーの民主化が求められる理由

企業の事業活動では、最新のテクノロジーに基づく製品・サービスが開発され導入されるケースがよく見られます。しかし、こうした先端技術のツール・システムや設備機器などを導入するためには高額な投資や専門性の高い技術力が必要です。

 

従って、それらを実際に利用できるのは大企業などの一部の企業に限られるという状況が生じています。そして、利用できる企業とできない企業との間(大企業と中小企業等との間)には、競争優位性や生産性の面で大きな差が生じ、結果として収益格差の拡大に繋がると問題視されるようになってきました。

 

また、最新のテクノロジーを活用できる大企業等だけがその市場を支配するようになれば、買手である消費者等は供給量や価格の面で不利益を被る可能性が生じます。その結果、その産業全体として見れば、そのテクノロジーは十分に活用されず、産業の発展が阻害されることもあり得ます。

 

こうした状況を回避するためには、高度な最新のテクノロジーを、資本力が劣る企業、そのテクノロジーを活用する技術力・人的資源等がない企業などどの企業でも容易に利用できる状態にすることが必要になります。すなわち「テクノロジーの民主化」が今、求められています。

 

しかし、会社設立して間もない企業などがDXに取り組む場合、そのためのデジタル部門等を設置してプロジェクトを推進する活動が必要になりますが、IT人材等の確保やシステム開発等への投資は容易ではありません。

 

例えば、DXへの取組を始めて、戦略仮説・コンセプトの検証作業まで進めたものの、人材・資金不足から適切なシステム開発やシステム等の導入などができず変革と言えるような仕組の構築に至らずに終わるケースが少なくありません。

 

つまり、DXを実現するための技術力がない、デジタル技術等を有する人材がいない、システムを開発・導入していくための資金がない、などの理由によりDXを進められない企業や失敗する企業などが多いです。

 

こうした状況を打破するための手段として、「テクノロジーの民主化」の進展が期待されています。テクノロジーの民主化は、先進的な技術をどの企業でもできるだけ容易に、大きな資金負担なく利用できることになるため、DXに伴う障害を乗り越えやすくしてくれます。

 

インターネット利用が普及し、データが大量で高速に受送信され処理される状況となって、インターネット上のデータをビッグデータとしてビジネスに有効利用できるようになってきました。

 

また、IT領域でのクラウド化の進展や利便性の向上が見られるようになり専門性の高い各種のアプリケーションをどの企業でも迅速かつ低コストで利用することも可能になっています。

 

「SaaS」(Software as a Service)などを活用することで、企業はそのサービスを短期間・低コストで利用でき、新規事業の開発や業務の効率化・最適化を進めることが容易になってきました。

 

また、専門のプログラマーでなくても一定品質のアプリケーションを開発できるプラットフォームを提供するサービスも登場してきており、IT等の専門人材の確保という問題も緩和されつつあります。

 

人材面と資金面および導入する手間や時間などがネックとなって、いまだに「紙」や「口頭」のようなアナログな手段を中心とした業務プロセスに依存する中小企業等が多いですが、彼らの業務のデジタル化の推進に「テクノロジーの民主化」の活用が期待されています。

 

1-3 DXへの取組状況

(独)中小企業基盤整備機構は、2022年5月に「中小企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に関する調査」の結果を公表し、中小企業のDXへの取組状況を下記のように示しました。

 

●「2割超の企業がDXの推進・検討に着手済み。具体的な取組内容は「ホームページの作成」が約5割」

⇒DXの取組状況では、「既に取り組んでいる」との回答が7.9%と1割に満たない状況です。その一方で、今後取組みを検討している企業は24.8%と一定数を占めています。

 

なお、「取り組む予定はない」と回答した企業は41.1%と多い状況です。また、DXの具体的な取組内容を確認すると、「ホームぺージの作成」が47.2%、「営業活動・会議のオンライン化」が39.5%、「顧客データの一元管理」が38.3%、となっており、デジタル化の初期段階の導入が多くなっています。

 

他方、「IoT活用」は19.4%、「AIの活用」が16.9%、「デジタル人材の採用・育成」が15.7%となっており、DXが目指すデジタル化の推進・活用による新しいサービスの創出に向けた取組内容の比率は相対的に低い状況です。

 

●「DXやITに関わる人材不足や具体的な成果が見えないことに課題を感じる企業の割合が高い」

⇒DXの取組に関する全体的な課題としては、DX・IT関連の人材不足が多く占めています。

 

また、「具体的な効果や成果が見えない」や「予算の確保が難しい」などが次いで多いです。従業員規模20人以下では特にこうした傾向が強く見られ、規模の大きい企業ではそれらに加え、「DXに取り組もうとする企業文化・風土がない」が理由も見られました。

 

業務にITを活用したい、DXに取り組みたいという企業も増えてきましたが、IT化・デジタル化を進める専門人材、システム開発やIT機器等の導入資金、などの確保が容易でない点がその推進の妨げとなっています。

 

加えて、IT化・デジタル化の目的や意義の不明確さ、業務変革が難しい企業文化、など組織上の問題がネックになっているケースも少なくないという状況が垣間見えました。

 

1-4 テクノロジーの民主化のメリット

テクノロジーの民主化には以下のような利点を得られる可能性があります。

1)低コストでデジタル化やDXが可能となる

自社の業務効率の向上に向けたシステム開発に何百万円や何千万円といったイニシャルコストが必要な場合でも、ITの民主化によるプラットフォームやアプリケーションなどを活用すれば月数万円~といったコストで利用することも可能です。

 

また、システム開発には導入の検討から運用に至るまでに相当な時間が必要となりますが、上記のサービスを利用することができれば、運用までの時間が大幅に短縮できデジタル化する業務を十分に検討できるといった効果も得られます。つまり、デジタル化の成功確率が高まります。

2)IT等の高度な専門人材が必要ない

ITの民主化に該当するサービスを利用すれば、業務アプリやシステム開発のほか、ビジネスシステムへのAI活用などが専門知識等を持たない既存の従業員でも対応できるようになるため、人材確保にかかる手間・コストが大幅に削減できます。

 

また、専門のIT人材でなく業務に精通した従業員が開発・運用してデジタル化推進を行えば、担当者による現場視点での実用性の高いシステムを導入することが可能です。

 

その結果、現場が求めるシステムが開発・運用できるようになるため、迅速な業務改善などの成果に繋がることが期待できます。

3)デジタル化の足掛かりになる

業務のデジタル化を進めたいが資金や専門人材の確保などの点で導入を躊躇っている企業にとっては、テクノロジーの民主化は上記のとおりその問題点の解決に繋がることも多いため、その利用は自社業務のデジタル化の足掛かりになり得ます。

 

資金や人材面の負担が少ないことは、デジタル化の導入・運用での失敗に直面しても経営的なダメージも小さく済むため、経営者の決断を促すことにもなります。

 

また、失敗しても資金的なリスクが小さいため、別のサービスを利用して挑戦することも容易になります。その結果、成果をもたらすサービスの利用やアプリ開発などが促進され、業務上の成果も得やすくなります。

4)新規ビジネスや事業変革などに繋がる

業務のデジタル化などを進めて行くと、顧客ニーズ、市場動向や自社のビジネスシステムなどを見直す機会を持つこととなり、新規ビジネスの創出や事業変革の契機になり得ます。

 

例えば、自社のビジネスシステムは、従業員が有する顧客情報を主として構築されるケースが少なくありません。しかし、現代ではインターネット等を活用して、顧客へのダイレクトなアンケート、ネット等でのクレーム・相談・問い合わせといった情報のほか、ビッグデータなどが容易に収集できるようになってきました。

 

こうした幅広い顧客情報をデジタル技術で収集・分析することで新たなニーズを発見し新規ビジネスを創出したり、既存事業を抜本的に変えたりすることが困難でなくなってきています。

 

つまり、ITの民主化に属するサービスを利用すれば、業務のデジタル化を進め、新たな価値を創出して事業を変革するという活動が容易になります。

 

 

2 テクノロジーの民主化の種類とその内容

テクノロジーの民主化の種類とその内容

 

ここでは「テクノロジーの民主化」の「テクノロジー」の種類とその内容をいくつか紹介しましょう。

 

 

2-1 ITの民主化

テクノロジーの民主化の代表は、「ITの民主化」あるいは「デジタル技術の民主化」になるでしょう。両者は内容的に同じものと考えられ、ここでは統一するために「ITの民主化」で説明していきます。

 

ITの民主化とは、デジタル技術や情報通信技術等により生み出されたその製品やサービスを誰でも利用できる状況やそのための取組等のことです。従って、「AIの民主化」や「IoTの民主化」なども「ITの民主化」の一領域と言えるでしょう。

 

例えば、ホームページを作成する際にプログラム言語を直接的に使わずに作成支援するサービスなどがその一例です。ホームページの基本的な作成には、Windowsの「アクセサリ」の「メモ帳」などにHTML(HP用の記述言語)で必要な情報を記述することで「タイトル」や「本文」などを表示させることができます。

 

従って、自力でホームページを作成する場合、HTMLの使い方を理解しておかねばなりません。しかし、HTMLを使わなくてもホームページの作成ソフト、WEBオーサリングツール(HP作成ソフトの一種)やHP設定支援サービスを利用すれば、ワープロ感覚でHPを作成することが可能です。

 

また、最近ではネットショップの開設を支援するプラットフォームを提供するサービスも登場しています。これを利用すれば、事業者自身がネット販売のためのサイトを作成しなくても容易にネットショップが開設できます。事業者は販売に必要な商品の情報や画像などのデータを用意し入力するだけなので、専門的なプログラム言語を理解する必要がありません。

 

また、最近では「ノーコード」によるサービスも増えています。一般的にシステム開発やサイト制作などを行う場合、コンピューターに指定の処理をさせる命令をプログラミング言語で記述しなければなりません。その際の記述された文字列が「ソースコード」です。

 

そして、その必要されるコードを自身で記述しなくてもプログラムを実施できるようにするサービスが「ノーコード」と呼ばれています。ノーコードは主に以下の2つの意味で使われるケースが多いです。

 

1つは、「プログラミングしなくてもシステム開発できるプラットフォーム」がノーコードとして扱われています。そのプラットフォームでは、プログラマーなどの専門人材でなくても複雑でないシステム開発なら非エンジニア系の従業員でも、ソースコードを記述することなしに制作できます。

 

もう1つは「プログラミングの作業なしに特定のことが実施できるようにする専用のツール」もノーコードとして扱われます(「ノーコードツール」)。例えば、ノーコードツールにより特定の業務を行うサイトやアプリ等が非IT人材でも制作できるようになります。

 

ノーコードの利用により、IT人材だけにできていたことが非IT人材でもできるようになり、事業・業務のデジタル化が大幅に促進される可能性が高まります。

 

従業員の誰もが「WEBサイトを作れる」「アプリを作れる」「顧客管理・財務管理・労務管理等のツールを作れる」などのためのノーコードツールが多数見られるようになってきました。また、多様なシステム開発が可能なプラットフォームを提供する事業者も増えています。

 

デジタル化やDXの推進にはIT人材、資金、導入時間や企業文化などが障害になりますが、ノーコードの活用がそれらの解決に役立っています。ただし、一定のIT人材を確保しておくことはノーコードを上手く活用したり高度に利用したりする場合などでは必要になります。

 

ほかにも「ローコード」の活用も有効です。ローコードとは、少数のソースコードでシステム開発等を可能にすることを指します。ローコードのプラットフォーム+「一定のソースコードの記述」により開発の拡張性を高め、ほかのソフトウェアとの連携が可能になることもあるため、大規模なシステム開発での利用も可能です。

 

こうしたノーコードやローコードを利用したプラットフォームやツールを提供するサービスを中心としてITの民主化が進んでいます。

 

 

2-2 AIの民主化

AIは一般的に「人工知能」と表現され、内容的には「人間の頭脳ように情報を処理・分析・生成等ができる人工的なシステム」と考えてよいでしょう。今までは一部の企業などがビジネスで利用していましたが、「AIの民主化」が進みどの企業でもAIが活用できる状況になってきました。

 

AIの進化は凄まじく、画像の認識・検出・生成(顔認証、自動運転、防犯、監視、医療診断支援、等)、音声の認識・生成(スマートスピーカー、議事録作成、等)、言語処理(自動翻訳、チャットボット、等)、異常検知(センサー、IoT、データを活用した各種点検)、需要予測(売上データや顧客情報などのデータを解析した需要の予測、等)などへの利用が実際に進められています。

 

こうしたAIシステムを実現させるためには専門的でかつ高度な技術やシステムが必要であり、自社のリソースだけでビジネスに利用するのは困難でした。しかし、現代では、AIモデルの自動生成、データの準備、AIの実装・運用などのAIシステムを統合管理できるAI Cloudプラットフォームなどを提供するサービスが登場しています。

 

そのため、先のAIの用途などにおいて、そうしたサービスが利用されれば、専門知識のない企業でもAIのモデル開発から運用管理までをトータルで支援してらえて、革新的なビジネスシステムを比較的簡単に作れるようになっています。

 

進化し続けているAIは、もはや人間の情報収集能力や情報処理能力を凌駕しており、また、睡眠・休み・食事(栄養補給)などを必要とせず稼働できるため、人間以上の成果を容易に生み出せます。そのため、今後のビジネスにおいてAIを自社の事業に活用できるか否かが成長に大きく影響し得ます。

 

AIの民主化は新設会社や中小企業等においてもAI活用を促進させ、事業の飛躍に貢献するものと期待されています。

 

 

2-3 IoTの民主化

誰もがIoTの技術や製品・サービス等を利用できる状況が「IoTの民主化」と呼べるでしょう。IoTとは、一般的に「もののインターネット」と訳されることが多いです。

 

具体的には、今までインターネットに接続されていなかったモノ(センサー機器、駆動装置、建物、車、家電製品、電子機器など)が、ネットワークを通じてサーバーやクラウドサービスに接続され、相互に情報交換できるシステムのことと言えます。

 

例えば、IoT化された照明器具ならスマートフォンからスイッチのオン・オフの操作ができるようになります。家の給湯システム(お風呂)がIoT化されれば、同じくスマホから遠隔で給湯の指示を出せるわけです。

 

工場の設備・機器・センサーなどをIoT化すれば、運転の自動化のほか、正常運転の診断などが可能となり、生産性の向上や故障の防止などに役立てられます。

 

自社のビジネスシステムに対してIoT化を支援してくれる企業が登場しており、IoTシステムの知識・技術を持たない企業や専門人材がいない企業でもそうしたサービスを利用して自社に適したIoT化が実現できるようになっています。

 

 

2-4 その他の「○○の民主化」

テクノロジーの民主化は以下のような「○○の民主化」に繋がっており、ビジネスシステムの高度化や効率化のほか、事業変革にも貢献しています。

1)「マーケティングの民主化」

マーケティングとは、「ビジネスでの儲かる仕組み(システム)」のことであり、「マーケティングする」とは「儲かる仕組みを作りそれを実行すること」と言えるでしょう。

 

顧客や市場を調査・分析してそのニーズや量を把握し、それに対応する(それらを吸収できる)製品・サービスを考案・提供できるようにするプロセスがマーケティングです。

 

マーケティングの重要性は1960年代あたりから注目され、米国の大企業などで重要視されるようになりました。しかし、近年に至るまでは精度の高い(収益に直結するような)マーケティング活動の実施は容易ではありませんでした。

 

市場調査を的確に行ってターゲットとそのニーズを正確に把握して、ライバルに勝てるような方法で製品・サービスを考案・提供するシステムを作るには多大な時間とコストがかかります。何よりそうした仕組みを作るための知識・経験を備えた経営者や担当者(マーケッター等)が必要でした。

 

そのため日本企業では、適切なマーケティングを実施できない、あるいは組織的なマーケティングが行えない、体系的なマーケティングができていない、という状況に陥るケースが多く見られたのです。

 

しかし、テクノロジーが進化して、インターネットの普及が進み大量かつ高速の情報伝達や情報収集が可能となった現代ではマーケティングのあり方が変わってきました。

 

例えば、以前の広告はチラシ、新聞、ラジオやテレビなどの媒体が主流でしたが、現在ではインターネットを介した広告が広まり、低コストの上にニッチな領域の限られたニーズにピンポイントでPRすることが可能になったのです。

 

コーポレートサイト上の広告、FacebookやTwitterなどのSNS上の広告のほか、グーグルなどの検索連動型広告などが低コストで、かつ、専門の広告代理店を通さずに自社でそうした広告を進められるようになっています。

 

市場調査に関してもインターネットを利用した様々な調査方法が実施されており、そうした調査サービスが低コストで利用できるようになっています。もちろんマーケティング活動を支援するツール(マーケティングオートメーション)なども登場しています。

 

このようにマーケティング活動が手軽に低コストで実施できる時代になってきており、それを上手く活用できるか否かが事業の成長のカギになってきています。

2)「ものづくりの民主化」

「ものづくりの民主化」とは、これまで特定の製造業だけが可能だった「ものづくり」が、個人や異業種の企業などが容易に実施できる状況と言えます。

 

これまでの製造業では、特定の設備や機器を保有して、特定の事業者から必要な素材や部品等を調達し、専門の設計者が製品をデザインして専門の作業者が機械等を操作して製造する(あるいは設計・仕様に基づき製造する)という形態が一般的でした。

 

つまり、ものづくりはその専門の製造業者が担っていたわけです。しかし、製造技術の発展やIT化の進展などにより、ものづくりは特定の製造業だけのものではなくなりました。

 

高精度の3Dプリンター(立体物等のデータから樹脂・金属などで加工して、立体造形物を製作する機器)が比較的低コストで入手できるようになり、高精度の工作機器等を使わなくても同形状のものが制作できます。

 

つまり、3Dプリンターと立体造形物の3次元データがあれば誰でも一定の造形物が作れます。3次元データの取得には3D-CADの利用が必要ですが、以前の3D-CADソフトは○○万円という高額なものでしたが、今では低額やフリーで利用できるものも登場しています。

 

材料や部品などの生産財は一般の個人などに販売されるものではなかったですが、そうした製品もインターネットを通じて個人でも購入できるようになってきました。

 

また、ものづくりの民主化の進展は、ものを必要とする発注側にも大きなメリットを提供します。例えば、現在では3Dデータなどを提供するだけで短時間の見積りから製作、納品に至るサービスを、インターネットを通じて提供するサービスが登場しています。

 

これまでは発注者が適切な製作者を見つけ出すことだけでも容易ではなかったですが、それが今ではネット上のサービスとして実現されています。

 

このようにテクノロジーの進化によりものづくりが身近な存在になっており、企業はそうしたサービスを活用することによる製造システムの改善のほか、新事業分野への進出などの事業変革にも役立っています。

 

 

3 テクノロジーの民主化の活用例

テクノロジーの民主化の活用例

 

ここではIT(デジタル技術)、AI、IoTの「テクノロジーの民主化」の事例を紹介しましょう。

 

 

3-1 ITの民主化の事例

ITの民主化の事例

 

*出典:LIXILの「デジタルの民主化~従業員が自ら考え、行動する、新しい企業文化」より

 

●企業概要

・企業名:株式会社LIXIL

・事業概要:建材や設備機器の製造・販売およびその関連サービス業

 

●ITの民主化の内容

 

LIXIL社では、デジタルを活用して、よりアジャイルで起業家精神に富んだ企業文化の構築が目指されています。その一環として、同社は、各従業員が部門の枠に囚われず、自らの業務を見直し、創意工夫しながら、自律的にデジタル化を推進していく「デジタルの民主化」を推進しています。

 

その具体的な取組としては、各従業員が業務に役立つアプリを自分達で開発して運用することが挙げられます。その活動により開発されたアプリは1年間で2万件を超え、そのうち約860のアプリがLIXIL社の正式な管理ツールとして、各現場の業務改善に貢献しています。

 

開発されたアプリには、「運行記録とアルコールチェックの管理ができるアプリ(管理部門)」、「タイルインクの残量記録アプリ、目視が不要のタンク残量管理アプリ(製造部門)」などがあります。

 

これらの取組では、ノーコード開発ツールなどが活用され、プログラミングなどのデジタル知識を持たない一般の従業員がアプリを開発しました。その中には、デジタル部門では考案されないような、現場ならではの知恵を生かした画期的なアプリも開発されています。

 

●取組のポイントや効果

 

・現場担当者の目線による役立つアプリの開発

各業務に精通した現場の担当者が自身で業務上の課題を認識し、その解決に役立つアプリを開発するため、実際の運用で大きな成果が得られています。

 

・システム改修の柔軟性

自分達で開発したアプリを運用している場合、そのシステムの変更が必要となってもデジタル部門の都合に関係なく自分達で改修をフレキシブルに実施できます。つまり、そのシステム上の変更が必要となった時に直ぐに対応でき、業務を随時向上させることが可能です。

 

・アプリの開発や変更が短時間で可能

デジタル部門などにシステムの構築や改修を依頼する場合、何カ月という期間を要することがありますが、自分達で開発や改修ができれば、相当な時間短縮ができ業務の改善等が早められます。

 

・自己実現や仕事上のモチベーションの向上

デジタル業務に従事しない文系出身の事務職や製造部門の担当者などがアプリを開発するという新たな試みに取り組んだ結果、彼らは自身の可能性を広げるという「自己実現」を体験できました

 

また、この取組は、自身の手で業務を改善する、新たな価値を創出する、現場に変革をもたらす、という成果に繋がったため、従業員の仕事に対するマインドセットや行動変容をもたらしています。

 

 

3-2 AIの民主化の事例

AIの民主化の事例

 

*出典:マイクロソフト社コーポレートサイトのお客様事例「利益を上げるための店舗改善にデータ/AIを活用するまいばすけっとの取り組み」より

 

●企業概要

・企業名:まいばすけっと株式会社(イオングループ)

・事業概要:都市型小型食品スーパー「まいばすけっと」の運営

 

●AIの民主化の内容

マイクロソフト社が提供しているAIを活用したクラウドサービス「Azure Cognitive Services」の利用により、まいばすけっと社は自社の店舗の発注・オペレーション業務の最適化に取り組みました。

 

マイクロソフト社では、リテール業界の誰もが簡単にデータAIを活用して、経営や業務改善ができるTech Intensity(テクノロジー強度)やデジタル民主化を推進しており、まいばすけっと社はそのサービスを利用しました。

 

同社が特に着目したのが、Azure Cognitive Servicesの画像検知で、学習済みAIの活用を提供する同サービスを利用すれば、比較的簡単に目的のシステム開発が可能と判断し開発がスタートされました(AIに関する高度な知識を保有していなくても容易にAIアプリを開発できるサービスと判断できたため)。

 

Azure Cognitive Servicesの活用に向けて、まいばすけっと社は解決したい課題を探し、パン棚の状態を可視化するシステムの開発を検討していったのです。パンのような食品は営業中での販売で商品の補充等が適宜必要となり、欠品すれば機会損失により収益の低下に繋がります。

 

一方、欠品しないために在庫を多くしたり、常時商品を陳列に補充したりすれば、従業員の業務効率が低下しかねません(担当者には商品補充以外の仕事も多いため)。

 

こうした状況を改善するために同社は、天井上部のセキュリティカメラの映像データに基づいたAIの活用により、パンが多く陳列されている棚の状態を簡易に評価・点数化するシステムを社内のリソースだけで開発しました(外部のITベンダー等に依頼せずに内製化)。

 

そして、同社は自分たちの手でAIを活用した、パン棚の「あれやすさ」の状態の定量化、売上実績、廃棄等のバランスを踏まえた利益の確保、奥の商品を手前に引っ張り出す作業(前陳)や商品補充などのオペレーション最適化を目指すシステムを開発していきました。

 

●取組のポイントや効果

 

・システム開発の過程(検証等)を通じた課題や解決策の発見

新たなシステム開発・導入が、漠然としていた問題点を明確にし、根本的な解決策を導くことがあります。問題が生じる現状を観察して影響する要因等を特定するという改善活動が、こうしたシステム開発の過程で可能になることもあります。

 

同社では従来のPOSレジのデータから、ある商品を何個発注して何個売れ、後で販売したのが何時であったかのデータは確認できますが、その商品が何時頃にどのような状態になっていて、何時に欠品しているかをリアルタイムに把握することは不可能でした。

 

しかし、Azure Cognitive Servicesを利用して作成したPython(高水準汎用プログラミング言語)プログラムの運用を開始し、カメラから得たパン棚の映像をもとに売り場の状態を点数で可視化することができたのです。そして、その情報をもとに改善のヒントを現場に提示し、それが売り場の改善に適用されていきました。

 

・現場を納得させる客観的なデータの提示

システム開発での実証によって得られた可視化されたデータを確認することで店長は現実の状況(問題)を客観的に認識できます。その理解のもとで、各時間帯における売り場の状態から問題点を把握し、発注を増やしたり、前陳(前だし)したりするという改善策が業務の最適化に向けて実施されるようになりました。

 

改善活動は実際に業務を担当する現場の問題意識や改善意欲が重要となるため、現場を納得させ能動的に動かせるための情報提示が役立ったのです。

 

・売上の増大

1度目の実証成果は、パンの販売個数が取組前の109.7%になり、昨対比では107.4%に伸長しました。その理由として、「各時間帯の状態が可視化され、朝の来客が多くパンもよく売れることが判明したため、この時間帯での商品投入量を増やした」ことが挙げられています。

 

2回目の実証では、取組前に比べ114.9%、昨対比118%という大きな伸長が見られました。「2回目の緊急事態宣言明け直後という特殊なタイミングで、売上が一気に増え、過去のデータだけに頼ると品切れが出てしまうような状況でしたが、時間帯別データを参考に発注を増やしたことで成果につながりました」と同社の担当者は評価しています。

 

データに基づいてオペレーション改善を推進していけば、売上を伸ばせることが実施されたのです。

 

 

3-3 IoTの民主化の事例

IoTの民主化の事例

 

*株式会社ソラコム(IoTプラットフォームサービスの提供)のコーポレートサイトの導入事例「ピンポイントの気象データの即時取得で新たなビジネス活用が広がる!小型で安価な観測器を開発」より

 

●企業概要

・企業名:株式会社ウェザーニューズ

・事業概要:気象情報の提供および活用の支援等

 

●IoTの民主化の内容

ウェザーニューズ社は2020年9月に小型の高性能気象IoTセンサー「ソラテナ」を開発しました。このセンサーは、気象情報が求められる現場に設置すると、その場の風量や風速、雨量などの8項目が数値として見える化でき、現場の安全対策や作業の効率化などに役立ちます。

 

その観測データはクラウドへ保存され、API(第三者が開発したソフトと他のソフト・機器等と共有できるようするインターフェース=システムとシステムをつなぐ仕組み)で提供するため、データの閲覧や保存のほか、利用者のアプリケーションやシステムに組み込むことが可能です。

 

同社はこのソラテナに、ソラコム社のIoT向け通信サービスの「SORACOM Air」を利用しました。このサービスの利用により、現地での通信設定などが必要なくなり、電源を入れると同時に観測が始められるという使用が可能になったのです。

 

*電源を入れるだけで観測が開始され、SORACOMの通信を通じて自動的にデータがサーバーに伝送されます。ソラテナの利用者はAPIを通じてデータを入手し、閾値、アラートの設定や自社データとの連携による応用などが可能です。

 

また、ウェザーニューズ社はSORACOM Airを、同社が開発した花粉飛散量のIoT計測センサー「ポールンロボ」にも利用しています。

 

*このサービスは春の花粉シーズンに、同センサーを個人の自宅などに設置してもらい、より高精度な花粉情報を収集・提供するというものです。

 

●取組のポイントや効果

 

・IoTプラットフォームサービスの活用により通信面の負担を圧縮

IoTにおいて、通信は非常に重要なファクターです。そのためウェザーニューズ社は最初のソラテナ(1代目)の推進にあたり、自社で通信関連を構築しました。しかし、実際には大変な苦労を伴うという経験を同社は味わったのです。

 

そのため今回(2代目)の推進では、「自社の本来の仕事の目的は、サーバーに送信されてきたデータをいかに提供するか」という点であることを重視して、通信部分をソラコム社のサービスを利用して、本来のやるべきことに集中しました。

 

苦手な分野などを専門の事業者等に委ねる、活用することは全体の目的の達成や品質の向上などに繋がります。

 

・多岐に渡る分野への応用

IoTプラットフォームサービスの活用により、通信関連の業務負担が大幅に軽減され、ソラテナの水平展開(用途の拡大)が進展しました。例えば、農業やドローン、高速道路のメンテナンスなどの分野への利用が見込めるほか、販売での需要予測、防災などへの応用も期待されています。

 

 

4 「テクノロジーの民主化」等を活用したデジタル化推進等の進め方とポイント

デジタル化推進等の進め方とポイント

 

ここでは新設会社や既存企業がその事業を発展させるために、デジタル技術やそのツール・サービスなどを導入・活用してく場合の進め方や重要点を説明しましょう。

 

 

4-1 課題や目標の明確化

既存の会社の場合は優先度の高い課題を、新設会社の場合はこれから行うビジネスモデルでの目標(「○○のような仕組みを実施する」などの目標等)を第一に明確にしなければなりません。

 

テクノロジーの民主化などビジネスで利用できるデジタル技術やツール・システム等は多数存在します。そうした中らか自社の目的に合ったものを選び利用するわけですが、その選定には自社の課題や目標との整合性が不可欠です。

 

例えば、現在のビジネスにおいて業務のデジタル化が重要となる、そのためにIT投資の必要がある、さらに事業を変革するためにDXに取り組まねばならない、などと判断してそのための取組が進められていきます。

 

しかし、その取組も解決すべき課題、達成すべき目標が曖昧であれば、実現するための手段(IT化等の内容)を適切に選ぶことができず十分な成果も得られにくくなってしまうのです。

 

そのためデジタル化推進等の取組を始める前に既存の企業では事業や業務のプロセスなどの現状を丁寧に分析する必要があります。会社設立時などでは、開始する事業のビジネスシステムの内容や各プロセスを再確認して改善したい点、他社と差別化したい点、顧客満足度を向上したい点、などを分析・評価することが重要です。

 

従って、まず、「自社の事業や業務の現状を分析する」⇒次に「課題や目標を明確にする」、そして「デジタル化やDX等を構想する」という流れが基本になることを理解して進めましょう。

 

 

4-2 デジタル化等の取組に向けた体制整備

企業が新たな取組を推進する場合、そのための体制を適切に整えていかねばなりません。既存の業務システムが大幅に変わる場合はなおさら丁寧な進め方が不可欠であり、その準備の仕方が成否を左右することに留意しましょう。

 

既存業務の遂行方法を大幅に変更する場合、それまでの作業に慣れている従業員からその変更に対して不満が生じ、新たな業務方法の習得に余計な時間がかかるケースは多いです。習得意欲の低い者が新たな業務方法に従事しても直ぐに良い結果は得られません。

 

そのため経営者は、第一に導入の実施にあたって、その戦略的な意義やメリットを全社的に明示する必要があります。その取組を経営戦略の中で示し、事業計画に反映して、新年度を迎える時などに全従業員に伝達することが重要です。

 

特にその取組が事業収益にどう結び付き、従業員の業務負担の軽減や報酬・福利の向上にどう貢献するか、などを説明することが求められます。

 

次にデジタル化等の導入・運用に必要な部門の設置や人材の確保を実施しなければなりません。推進する取組内容によって整備すべき体制は異なってきますが、対象とする課題の内容や自社のIT化のレベルおよびIT人材などの状況を踏まえた体制作りが重要です。

 

難易度の低いデジタイゼーションなら自社の従業員を中心として、外部のIT人材等の助力を得ながら進められますが、高度になっていくほどデジタル部門の設置、IT系人材の採用や専任化、外部の専門家やITベンダー等との連携といった体制も必要になってくるでしょう。

 

また、こうした取組は組織横断的なサポートと経営者の関与が重要になります。企業全体で新たな取組を成功できるように、各従業員が協力する体制が必要であり、決してデジタル部門だけに取組を丸投げしてはいけません。そのために経営者の直的な関与が不可欠です。

 

こうした体制づくりの構想は簡単ではないため自社で判断できない場合は、公的な支援機関やIT系のコンサルティング会社などに相談して、適切な体制づくりを進めましょう。

 

 

4-3 デジタルツールやシステム等の選定・導入

体制整備が完了すれば(あるいは並行して)、デジタル化推進等に向けた取組に必要なデジタルツールやシステム等の選定・導入を検討していきます。

 

既存業務のデジタル化、老朽化したITシステムの刷新、自社・グループ企業・外注企業等の情報の共有および活用、社内情報・ユーザー情報・ビッグデータ・市場情報等を活用した新たなビジネス(システム)の構築、AIやロボット等を活用した定型業務・作業の自動化、などの課題に対して、現状の社内のITリテラシーやリソースなどを踏まえ、どのようなデジタルツールやシステム等を導入すべきかを検討していくのです。

 

ここでの重要点は、自社のレベルに適した手段を選ぶということになります。例えば、現在の自社のデジタル化度が低く、デジタル部門の人員やIT系人材等が少ない状況の場合、高度なDXへの取組を進めるためのツールやシステムを導入しても失敗する可能性が高いです。

 

DXを進める場合でも全体のシステムをすべて同時に導入していくのではなく、自社のレベルで対応可能なプロセスから導入して結果を検証しながら段階的に進めるという方法も必要になります。

 

また、全システムを自前で開発したり、運用したりすることは技術的、資金的に負担が大きいため、専門事業者のサービスを活用することも重要です。例えば、「デジタルの民主化」によるサービスを活用して、技術・資金・人材の不足分を補って取組を進めることも必要になります。

 

 

4-4 運用のフィードバック

取組は新しいシステム等を導入して終わりというのではなく、その後の運用による結果を確認して絶えず維持向上を図ることが重要です。

 

新ツール・システム等を導入した場合、何らかの問題が生じていることも多いため、その点を初期段階で把握して直ぐに改善して成果を確実に出していくことが取組の成功に繋がります。そして、できるだけ早く顧客や従業員にメリットを享受させて、自社の収益や発展に結び付くようにしなければなりません。

 

システム全体を一度に進めることは現実的でないことも多いため、部分的な・段階的な導入と評価・検証・改善とをセットで繰り返して進めて行くことも必要になります。そうすることで結果的に全体の完成へと導くことができます。

 

そのステップバイステップの推進の中で、デジタル部門等と現場とが協力して、導入したツール・システムの運用結果を評価して改善方法を考案・実施していけば、取組の成功確率が高まります。

 

 

5 デジタル化等の推進における注意点

デジタル化等の推進における注意点

 

「テクノロジーの民主化」などを活用して業務のデジタル化等を進める際に注意しておきたい点をいくつか示しておきましょう。

 

 

5-1 戦略的なデジタル化等の推進

どのようなデジタル化やIT投資などを行うにしても戦略に基づいた一貫性のある取組が必要であり、成行きで業務変革等に取り組むのはやめましょう。

 

注目を浴びているから業務のデジタル化やDXの推進などに取り組むというような、経営上の戦略的な意義を見出せない変革行為はリスクが大きいです。デジタル化等で業務内容が大きく変わることになれば、それを担当する従業員の労負担も変化し業務効率やモチベーションなどに悪影響を及ぼしかねません。

 

また、何より自社の商品・サービスの提供を受ける顧客やユーザーに不利益や利便性の低下が生じるようになれば、業績の悪化に直面してしまうでしょう。そのため「何のためにデジタル化等を行うのか」という点を戦略的に明らかにし、その価値を検証して経営戦略にその取組を含めることが重要です。

 

その価値を経営戦略や事業計画で示すことによって、全社的な理解と協力が得られ、金融機関、関係会社や取引先などからの支援も受けられやすくなります。

 

 

5-2 経営層のリーダーシップと知見

業務変革を伴うようなデジタル化等の推進では、経営層のリーダーシップとその推進に必要な知識が不可欠です。

 

業務のやり方をデジタル技術やそのシステムの活用により抜本的に変更する場合、業務フローが大きく変わり、最先端のモバイル機器・専門的なシステム機器および最新のサービスなども利用することになります。

 

その場合、そうしたIT関連の機器やシステム等に慣れていない高齢者などにとっては、操作や作業に慣れるのに苦労することがあり、負担になりかねません。そうしたケースが結果的に、取組のスピードを低下させ、モチベーションの減退に繋がり、成果も得にくくなります。

 

こうしたリスクが具現化させないため、経営層には新たな取組の意義を従業員に説明し、障害となる要素を事前に把握して対策を素早くとるというリーダーシップが必要です。

 

例えば、IT機器や情報システム等の使用が苦手な人が多いといった場合、それを克服するための勉強会や訓練・試用の機会等を経営層が率先して提供するなどのリーダーシップが求められます。

 

また、最先端のテクノロジーを活用して業務のデジタル化やDXを進める場合、経営者等がそうしたテクノロジーやその関連するシステムなどをある程度理解しておかねばなりません。

 

その主な理由は2つあります。1つは、自社の課題の解決や目標の達成に役立つテクノロジーやシステム等を適切に選定しなければならず、そのために導入の意思決定者である経営者はそれらの内容を理解しておく必要があるからです。

 

「現在の紙ベースの業務フローをデジタル化すると相当業務効率が向上するのではないか?」「この課題解決にはAIの活用が役立つのではないか?」「現状のビジネスシステムを、AIとIoTなどを活用すれば他社との差別化を図りこれまでにない仕組みが作れるのではないか?」などの発想に結び付くことが期待されます。

 

先端技術等に関する知識がある程度あれば、こうした発想を自身で思いついたり、部下などからの意見を吸収して採用したりすることができ、テクノロジーの効果的な活用が実現しやすくなります。

 

 

5-3 情報セキュリティ対策の導入

デジタル化により業務変革を進める場合、それまで以上の情報セキュリティ対策の構築も検討しなければなりません。

 

デジタル化等が進むと、業務上の情報はデジタルデータとして収集・加工・活用されるケースが多くなるため、情報セキュリティ対策を怠れば情報が外部に漏れて、顧客等に迷惑をかける恐れも生じます。

 

また、不正アクセスによるデータ改ざん等の被害にあい、業務が停止に追い込まれるような事態も起こり得るため、セキュリティ対策には万全を期す必要があります。しかし、セキュリティ対策を高度にしていくには技術的・資金的な負担も増大するため、コストパフォーマンスの高い対策(セキュリティツール等)の採用が求められます。

 

なお、ITの民主化が進んできている現代では、セキュリティ面もそれらのサービス等を活用してコストを抑えつつより適切な対策が取れるようになってきました。また、システム上のセキュリティ対策だけでなく、操作・運用する従業員への指導や管理も計画的に実行し全社的なセキュリティに関する意識と能力を高めるように努めましょう。

 

 

5-4 外部資源の活用

デジタル化等の業務改革の推進には、「テクノロジーの民主化」を含め外部のリソースを上手く活用することが重要です。取組内容が高度で広範囲になればなるほど、自社の資源だけで対応することは困難であり、成功させるためには様々な外部資源を適切に利用することが求められます。

 

デジタル化等に関する技術の検討、業務改革を伴うビジネスシステムの構想、取組全般にかかる資金の確保、といった課題に直面することになるため、各テーマで協力してくれる事業者、公的支援機関、金融機関やベンチャーキャピタルなどに支援を求めるケースも少なくありません。

 

特に業務改革の取組をどのように進めるべきか判断しかねる場合は、デジタル化等の導入などにも対応できる公的支援機関等に相談して進めることは有効です。業務改革の進め方、適切な技術やシステム等の構成のほか、補助金等の活用、などについて教えてもらえるでしょう。

 

なお、各種の専門の事業者に相談することも有効ですが、その場合は自社の事業や業務の現状を分析し課題を把握した上で必要なシステム構築等を提案できる事業者を選ぶことが重要です。

 

 

6 まとめ

デジタル化推進の要点

 

ITを含む先端のテクノロジーを自社の事業に取込んでいくことがこれからの経営には不可欠です。しかし、業務効率、競争優位性や顧客満足度の向上に繋がるデジタル化等の推進は容易ではありません。

 

特に自社のITリテラシー、リソースや資金等だけで業務改革に繋がるような取組を推進するのは困難であるため、外部資源の活用が重要になります。現代では「テクノロジーの民主化」が進展しており、第三者のツールやシステム等を活用したデジタル化等の推進が容易になってきています。

 

この機会に自社の事業を見直し、「テクノロジーの民主化」などを活用してDX推進等を検討してみてください。


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