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サーキュラー・エコノミーへの起業・会社設立は有望?成功するための参入の考え方とは

世界の国や企業がSDGs(持続可能な開発目標)の実現に向けた活動を進めていますが、その中で「サーキュラー・エコノミー(循環経済)」の重要性がより増してきました。そのためビジネスにおいてサーキュラー・エコノミー(CE)に基づく活動が不可欠になってきています。

 

そこで今回の記事では、CE分野へのコア事業からの参入や起業・会社設立で成功するための重要点について解説します。CEの概要、求められる背景のほか、その参入や起業・会社設立のメリット、参入への流れ・ポイント、取組事例や注意点など説明するので、CEビジネスを知りたい方、この分野で起業・会社設立したい方、ビジネスで循環型社会に貢献したい方は参考にしてみてください。

 

 

1 サーキュラー・エコノミーの概要

サーキュラー・エコノミーの概要

 

ここでは従来の大量消費型社会で生じた環境問題等の解決手段として期待されるサーキュラー・エコノミーの特徴、役割や期待される背景などを説明しましょう。

 

 

1-1 サーキュラー・エコノミーとは

「サーキュラー・エコノミー(CE)」は、日本語では一般的に「循環経済」と訳され、循環型の経済モデルを指すことが多いです。それを簡単に表現すると、「資源の循環を実現し、廃棄物を排出しない」ことを目指す経済モデルと言えるでしょう。

 

具体的には、生産される製品の原料調達から廃棄までのライフサイクルを通じて、廃棄物をゼロにしていくという考えの経済モデルです。製品のリサイクルやアップサイクルのほか、廃棄物は資源として再利用・再生するという循環的な資源利用の仕組みが確立された経済システムになります。

 

20世紀の主な生産システムは、資産の調達、製造、販売、利用、廃棄という過程による、資源を「取って(採って)きて、作って、使って、捨てる」という一方通行型の経済モデル(リニア・エコノミー)でした。

 

しかし、資源の枯渇、廃棄物による環境汚染等の問題や、売り切る・使って捨てるといった資源の活用度の低さ、などを伴うリニア経済モデルでは成長の持続や発展が困難になってきているのです。

 

このリニア経済モデルの欠点の打開策として、廃棄物などの無駄をなくす経済モデルである「サーキュラー・エコノミー」が注目を集めるようになってきました。

 

①CEの定義

参考までに、国の機関等が定義しているCEの内容を紹介しましょう。

 

●経済産業省・環境省の資料「サーキュラー・エコノミーおよびプラスチック資源循環分野の 取組について」より

 

「循環経済とは、従来の「大量生産・大量消費・大量廃棄」のリニアな経済(線形経済)に代わる、製品と資源の価値を可能な限り長く保全・維持し、廃棄物の発生を最小化した経済を指す」

 

「これは、循環型社会に向けて我が国が推進してきた従来の3R(リサイクル、リユース、リデュース)を、シェアリングやサブスクリプション(定期購読、継続購入等)といった循環性と収益性を両立する新しいビジネスモデルの広がりも踏まえ、持続可能な経済活動として捉え直したもの」

 

●サーキュラー・エコノミーの実現に向けた3原則

 

国際的にCEを牽引するエレン・マッカーサー財団は、循環経済の実現に向けた下記の3つの原則を提唱し今後の経済においてはこの原則に基づいた活動が不可欠で基準や指針になる、としています。

 

サーキュラー・エコノミーの実現に向けた3原則

 

1)DESIGN OUT WASTE AND POLLUTION
廃棄物や汚染を生み出さない設計を行う
⇒この内容は「廃棄物を出さない」という考え方で、従来のリニア経済システムを根本から転換するための活動指針になる原則です。

 

2)KEEP PRODUCTS AND MATERIALS IN USE
製品や原材料を使い続ける
⇒社会・経済を維持するには資源を長期に使い続けられることが求められます。

 

3)REGENERATE NATURAL SYSTEMS
自然のシステムを再生する
⇒人間が乱したり壊したりした自然に備わっていた循環システムをもう一度元の状態へ戻すことを意味します。

 

②3RとCEとの違い

日本では2000年に「循環型社会形成推進基本法」が施行され、3Rを中心とした循環型社会の実現に向けた取組が本格的に始まりました。そして、3Rでは使用可能な廃棄物はできる限り再利用し、循環させ、資源利用を減らして廃棄物や汚染の発生を抑える、というう「リサイクリング・エコノミー」の取組が推進されてきたのです。

 

しかし、このタイプでは循環システムが弱く、システムの基本形態はリニア・エコノミーであり、その延長線上の形態と言えます。リニア・エコノミーは「原材料⇒製品⇒使用⇒廃棄物」の一方通行の経済活動ですが、リサイクリング・エコノミーは「製品⇒使用」の間で「リサイクリング」が加わる形態です。

 

この形態の考えは廃棄物の量を減量させるものですが、ゼロにする考えではありません。一方、サーキュラー・エコノミーは、「廃棄物と汚染を発生させないこと」を前提とした経済システムであり、リサイクリング・エコノミーなどのリニア型と根本的に異なるのです。

 

モノやサービスの企画設計段階から廃棄物・無駄・汚染を発生させない方法を立案し、「原料、部品や製品を使い続ける」活動で、その価値を維持しつつ、一度投入した資源を同じサイクルの中で循環させようとするのがCEになります。

 

下図はオランダ政府のHPに示されている上記経済モデルの概念図です。左側の図が従来の一方通行型の経済モデルで、中央がリサイクリングを伴う延長線上のリサイクリング・エコノミーになります。そして、右側が廃棄物を発生させないサーキュラー・エコノミーのモデルです。

 

サーキュラー・エコノミーのモデル

 

③経済産業省の「循環経済ビジョン2020(概要)

下図は経済産業省が2020年5月に示した「循環経済ビジョン2020(概要)」でのCEの概念図です。黒色の矢印が従来の資源の流れで、赤色の矢印がCEの流れになります。

 

従来の経済活動では利用した後の回収後には廃棄物が発生していますが、CEではそれを回避する活動を伴うのです。CEでは設計段階で資源の減量、利用の長期化、補修の容易性、再利用の容易性・多様性などを考慮します。

 

また、利用ではメンテナンス対応の充実、再販売・再利用の促進、シェアリングなどの新しい利用方法の提供、別目的の再利用の促進などが推進されます。使用品の回収段階では、再資源化や他の原料への再生などが行われ、廃棄物ゼロが目指されるのです。

 

この図からも分かるように、CEは「従来のリニア経済モデルの原材料を取ってきて、作って、利用して廃棄するという単純な活動」ではなく、システムを変えて限りある資源を無駄にしない最大限の有効活用の実現を目指すほか、一連の過程で多様な付加価値を生み出す仕組みになります。

 

循環型社会の実現が叫ばれる社会では、CEに基づく企業活動が求められ特定の製品を作るメーカーだけでなく、サイクルの各工程(利用、リサイクル等の段階)を担う様々な企業の参加が必要です。つまり、循環させるための仕事が多くあり、それがビジネスチャンスになると期待されます。

 

サイクルの各工程

 

④新たな付加価値の創造

経済産業省のCEの概念では、CEは「従来の3Rを、シェアリングやサブスクリプションといった循環性と収益性を両立する新しいビジネスモデルの広がりも踏まえ、持続可能な経済活動」としていました。つまり、CEは新たな付加価値を提供するビジネスモデルが出現する有望なビジネス分野です。

 

例えば、現代では利用段階の方法を購入して使用する方法から共有するというシェアリングによる使用が広がりつつあります。シェアリングは安価で短期的な製品の利用が可能になるため、利用者が増大し既存資産の価値の最大化が図れる上、結果的に事業者の収益増大にも貢献します。

 

また、フードロスが社会問題になっていますが、小売店からのPOSデータや販促情報を利用して人工知能(AI)による分析で需要予測の精度を上げてロスを削減するという取組が実施されています。こうした取組がビジネスモデルとして事業化されているのです。

 

以上の通りCEは単なる環境対策としての経済モデルとしてだけではなく、デジタル技術なども活用して新たな付加価値を生み出す成長戦略の手段としても期待されています。

 

 

1-2 サーキュラー・エコノミービジネスが求められる背景

CEが必要される理由や背景について説明しましょう。

 

①資源枯渇というリスクの顕在化

現代は経済活動を維持していくための資源が減少しており、このままでは枯渇しかねない状況です。

 

1)国際的な資源需要の増大

 

東南アジアなどの新興国が急激な経済発展を遂げつつあり、それに伴い資源需要が世界的に増大してきました。

 

平成29年度エネルギーに関する年次報告」(エネルギー白書2018)によると、世界のエネルギー消費量(一次エネルギー)は経済成長とともに増加して、石油換算で1965年の37億トンから年平均2.5%で増加し続け2016年には133億トンに達しています。

 

この間に世界のエネルギー消費量を多く占める国や地域の主役が、先進国から新興国へ変化していますが、世界のエネルギー消費量はなお増大し続けているのです。

 

平成29年度エネルギーに関する年次報告

 

*出典:「平成29年度エネルギーに関する年次報告」P195

 

2)資源不足の加速

 

世界的にエネルギー消費量の増大が続く中、心配されるのが化石燃料や希少金属等の資源の枯渇、それらの近い将来における資源価格の高騰、確保の不安定化などです。

 

先のエネルギー白書2018によると、例えば、世界の石油確認埋蔵量(推定)は、2016年末時点で1兆7,067億バレルであり、これを2016年の石油生産量で除した可採年数は50.6年となります。

 

世界の天然ガスの確認埋蔵量は2016年末で約186.6兆㎥、可採年数は2016年末時点で52.5年です。石炭の可採埋蔵量は11,393億トン(2016年)で、可採年数(可採埋蔵量/年産量)が153年と見込まれています。

 

ウランの確認埋蔵量は2019年1月で615トン(一般財団法人日本原子力文化財団のHP「原子力・エネルギー図面集」より)で、可採年数は115年です。

 

以上のように主要なエネルギー資源は、今後150年程度までで枯渇する恐れがあり、さらに経済発展が加速すればその枯渇の時期も早まりかねません。

 

②廃棄物処理システムの崩壊

これまでの国内の廃棄処理システムが機能しなくなりつつあります。

 

1)海外での廃棄物輸入規制

 

今までアジア諸国などに輸出していた古紙、廃プラスチック、廃電線などの廃棄物が海外で輸入規制の対象となってきており、そうした廃棄物の国内滞留が多く見られるようになってきました。その結果、国内全体での廃棄物処理が逼迫する事態になってきたのです。

 

例えば、アジア諸国では以下のように廃棄物規制が導入されています。
*出典:経済産業省・環境省の資料「サーキュラー・エコノミーおよびプラスチック資源循環分野の取組について」P4

 

●中国
・2017年:非工業由来のプラスチック等の環境への影響が大きい廃棄物の輸入禁止
・2018年:工業由来のプラスチックくず、プレスされた廃車等の輸入禁止
・2019年:木くずや鉄鋼くずの輸入禁止

 

●タイ
・輸入許可実績に応じた輸入枠制を取るが、輸入枠の発行は既に停止しており、2021年には完全に輸入がなくなる見込み
・E-waste(電子廃棄物)は全面的に輸入禁止の方針

 

●インドネシア
•廃プラスチックは輸入許可制で、政府はコンテナの検査を厳格化
•E-wasteは輸入許可制

 

こうした海外での輸入規制の結果、日本の廃棄物の輸出量は減少しています。例えば、以下のように中国への廃プラスチックの輸出量が大幅に減少しています。

 

・中国の輸入規制導入前の2017年と導入後の2018年を比べると、廃プラスチックの輸出量は約40万トン減少している
・また、中国への輸出は、全体の71%から5%へ大きく減少した

 

2)国内の廃棄物の循環システムを支える産業の縮小

 

例えば、セメント産業は「資源の効率的利用」に努め、早くから可燃性廃棄物(タイヤ等)をセメント製造に使用してきましたが、こうした産業の生産規模が縮小傾向にあり、現在の資源の循環システムを今後維持していくのが困難になってきています。

 

このようにこれまで国内外で頼ってきた廃棄物の処理システムを今後同じように使用するのが難しくなっており、国内の資源循環システムの見直しなどが不可避となっています。

 

③環境意識の高まり

2015年9月の国連サミットで「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択され、「国際社会全体で人間活動によって生じた様々な問題を喫緊の課題として認識し、協働して解決に向けて取り組んで行く」ことが合意されました。

 

その際に採択された国際的な開発目標が「SDGs(持続可能な開発目標)」です。その目標には、貧困、飢餓、ジェンダー、教育、環境、経済成長、人権などがテーマとされ、地球環境や経済・社会の持続可能性に資する目標が定められました。

 

以前より環境保護や循環型社会への取組が求められてきましたが、SDGsの採択により世界の各国、各企業、各国民にその意識が高められています。各政府は環境保護や循環型社会を実現させるための施策を講じ、各企業は地球に優しく資源を大切にするような活動を活発化させています。

 

各国の消費者などではそうした活動を行う会社の製品やサービスを利用するというサスティナブル消費を志向する動きが見られるようになってきました。日本国内でも同様の動きが強まりつつあるのに加え、新型コロナにより環境問題への意識や行動がより前向きになってきたのです。

 

公益財団法人旭硝子財団が実施した「2021年(第2回) 日本人の環境危機意識調査」によると、「新型コロナ流行後、半数近くが食品ロス削減や省エネなど環境問題への意識や行動に前向きな変化」が見られたと結果を公表しています。

 

●質問
~新型コロナ流行以前の生活と比較して、あなたの生活における環境問題への意識や行動について変化はありましたか?(複数回答)

 

●回答
新型コロナ流行後の環境問題への意識や行動の変化で、何かしらの「変化があった」(64.9%)、特に「変化がなかった」(35.1%)となり、「変化があった」の回答のうち何かしら環境問題の解決に向けての前向きな意識や行動の変化があったのは半数近く(45.2%)で、昨年の結果(43.0%)を上回りほぼ同じ傾向が見られました。

 

新型コロナ以外にも世界的な自然災害の急増などもあり、世界の人々は環境保護や循環型社会に関心を寄せており、それに伴いサーキュラー・エコノミーへも関心を強めているのです。

 

④新たなビジネスモデルの拡大

生産された物がより多く使用できる、長期に渡って利用できる、稼働率が良くなる、といった利便性等を向上させ資源の使用効率性を高めるようなシェアリングやサブスクリプション(以下「サブスク」に省略)等の新しいビジネスモデルが台頭してきました。

 

例えば、メルカリなどのように使用した商品を個人間で容易に売買できるプラットフォームサービス、月額の定額制で衣料を購入できるサブスク、利用していない自家用車や自宅等を他者に貸すシェアリングサービスなどが普及しています。

 

また、デジタル技術の進展により従来のリニア経済モデルの生産システムの効率化を進めるビジネスも多く見られるようになりました。例えば、コンビニやスーパー等の食品ロスを抑制するためのAIによる需要予測型自動発注システムです。

 

食品ロスの発生は需要予測の結果として生じますが、在庫量、発注量、販売量、気候、イベント、季節、曜日、などの要素によって影響されます。その需要予測をできるだけ正確に行うために、こういった要素が実際の販売量にどう影響するかをAIで分析し予測に反映させるシステムが登場しています。

 

こうしたデジタル化の導入は廃棄物を処理する静脈産業などにも普及しています。例えば、廃棄物処理施設では廃棄物を分別し燃焼してエネルギーを得るという作業が実施されますが、そのプロセスでAIによる廃棄物の分別判断や燃焼の監視判断が行われているのです。

 

このようにCEの実現・推進に向けてデジタル技術などを活用した新たなビジネスモデルが登場しており、CEビジネスとして企業に新たな成長をもたらしつつあります。

 

 

2 サーキュラー・エコノミーの取組事例

サーキュラー・エコノミーの取組事例

 

CEビジネスを理解しやすいように産業界や企業の取組内容を紹介しましょう。

 

 

2-1 自動車産業のCEの取組

先の経済産業省・環境省の資料「サーキュラー・エコノミーおよびプラスチック資源循環分野の取組について」(P6~)からCEの取組を説明します。

 

①部品製造およびその設計の段階

この段階では以下のような取組が見られます。

 

●再生可能資源・再生材の利用
・東京製鐵では自動車由来の鉄スクラップを用いた自動車用鋼材が製造されている=水平リサイクルの推進

 

・本田技研工業では従来、副産物として処理されていたブランキングの端材を加工しやすい形状に打ち抜き、外注業者に支給して小物部品の材料として活用している=プレス副産物の低減

 

●環境配慮設計(軽量化、易解体設計、モジュール化等)
・各自動車メーカーおよび部品メーカー等
⇒自動車の適正なリサイクルを実現するための方法を構築し、リサイクル率の向上に取組まれています。

 

例えば、ばね類、スタビライザーやシートフレームなどの軽量化、部品の製造工程での切削くずの減量、シートやバンパー等のリサイクル、解体・分別のしやすい設計などです。

 

●生産時の歩留まり向上
⇒各自動メーカー等では工程ごとに継続的な改善が実施され、歩留まりの改善による排出物の低減等が進められています。

 

●シェアリング用、MaaS(移動のサービス化)用車両の開発
⇒自動車の新しい利用方法・利用サービスとして、シェアリングやMaaSが注目を集めていますが、そうした用途に適した設計が実施され始めました。

 

②使用の段階

●修理・メンテナンス、リビルド、部品リユース(自動車整備工場、部品メーカー、自動車部品リビルト事業者)

 

・ブリヂストンのリトレッド
⇒一次寿命が終了したタイヤのトレッドゴム(路面と接する部分のゴム)の表面を削り、その上に新しいゴムを貼付け・加硫して再利用するという方法が考案されています。台タイヤを再利用するため省資源に有効です。

 

・デンソーリマニ(自動車部品のリサイクル会社)の自動車部品のリビルト
⇒自動車のスタータやオルタネータを分解し、磨耗・故障している部品の交換あるいは加工・補修を施し、品質を確保した上で再生させた製品を、リビルトメーカーなど国内外のアフターマーケットへ供給するという取組が行われています。

 

●製品リユース
⇒中古車は中古車販売各社を通じて再利用されています。

 

●サービス提供
・MaaS、シェアリング、レンタル、リース等としてのサービス提供
⇒MaaSは所有に依存しない自動車の有効利用に繋がるサービスにもなるため、所有以上の稼働率の向上(資源の効率的な利用)に有効です。

 

⇒Timesなどがレンタカーやシェアリングなどのサービスを展開しています。

 

⇒Anycaなど、個人間で自動車をシェアするカーシェアリングサービスも普及してきました。

 

⇒トヨタなどがサブスク事業に参入しています。トヨタのサブスクサービスは「KINTO」と名付けられ、ユーザーは新車を月額料金で乗ることが可能です(駐車場と燃料費の負担あり)(リースより手軽な利用が可能)。

 

⇒MONET Technolgiesなどによるオンデマンド交通(AI等を利用した効率的な配車により、利用者予約に対応するリアルタイムの最適配車システム)が推進されています。

 

③廃棄の段階

・フォーアールエナジーの自動車バッテリーの再利用
⇒同社は自動車用(EV)バッテリーを再生し、EV、大型蓄電施設、工場バックアップシステム、電動フォークリフト、マルチ充電器などに利用しています。

 

④リサイクルの段階

⇒回収された自動車は解体され、使える部品等はリサイクル品として再利用が可能です。エンジン、トランスミッション、ドア、バンパーなどがリサイクル品として多く利用されています。

 

⇒マツダでは、交換修理などで廃棄処分される樹脂製バンパーについて、新車のバンパー原料として利用しています。

 

 

2-2 家庭用・業務用機器産業のCEの取組

家庭用・業務用機器産業の取組を紹介しましょう。

 

①部品製造およびその設計の段階

●再生可能資源・再生材の利用、環境配慮設計(軽量化、易解体設計、モジュール化等)、生産時の歩留まり向上

 

・部品・家電メーカー
⇒液晶テレビの背面カバーやパネルの内部フレーム、エアコン室外機のプロペラファン、などでプラスチックの再生材利用が多く見られます。

 

⇒使用材料・部品等の統一化や標準化、金属部品の排除、部品の取り付け構造の簡素化・容易化、材料の材質表示、といった易解体設計も進んでいます。

 

②使用の段階

●修理・メンテナンス、リファービッシュ(返品等の製品を修正・調整して新品とすること)・再製造

 

部品・家電メーカー

 

・ダイキン工業
同社は以下のようなサービスを提供しています。
(1)レトロフィットメンテナンスプラン
これは使用中のダイキンビル用マルチエアコンに、レトロフィット用圧縮機と新しい省エネ冷媒制御を“入れ替え搭載”することでパフォーマンスを向上させるサービスです。

 

(2)エアネットⅡサービスシステム
これは空調をベストコンディションに維持し、省エネ化、機器の長寿命化を実現させるサービスになります。

 

・パナソニック
同社のアプライアンス社は食品小売業向け冷蔵冷凍設備のリファービッシュサービスを提供しています。具体的には既存店舗で老朽化した設備を修繕・再塗装してチェーン店の他店舗で再活用(リファービッシュ)するといったサービスです。

 

・リコー、富士ゼロックスなどでの複合機の再製造

 

●製品リユース
・ヤマダホールディングスグループの一社シー・アイ・シー
⇒同社は、群馬県と滋賀県に家電再生工場を設置してリユース家電を供給しています。同社は使用済み家電を、1点ごとに点検、分解、洗浄、修理を行い、完全稼動品としての品質を確保したうえで再度市場へ投入しているのです(2020年は年間15万点前後のリユース家電を供給)。

 

●サービス提供(サブスク、シェア、レンタル等)
・CLAS、Rentioなどによる家電のレンタル
⇒1日単位、月単位等での安価なレンタルが可能だったり、配送料が無料だったりといったサービスが提供されています。

 

・Alice.styleなどの家電等のシェアリングサービス
⇒これは、生活家電、美容家電、健康器具、アウトドア用品、ベビー用品などを個人間で貸し借りしたり、話題の新製品等のお試しができたりするといったサービスです。

 

・リネットジャパンリサイクル
⇒同社は自治体の小型家電回収サービスをインターネットと宅配便を活用し税金を使わずに行っています。また、回収した使用済みパソコンの分解作業は障がい者の方が担当しているため、このサービスは都市鉱山のリサイクルの促進と障がい者の雇用創出に貢献しているのです。

 

・パナソニックの「安心バリュープラン」
⇒同社では購入時のまとまった支払いがなく、利用しやすい毎月の定額払いで最新のテレビが購入できる「安心バリュープラン」を提供しています(サブスクのように)。

 

・ダイソンのサブスクリプション型サービス
⇒これは、特定の製品について、一定期間、毎月の定額料金で利用でき、設定期間満了時には利用者の選択により製品の返却、変更またはアップデートが可能なサービスです。

 

③リサイクルの段階

・東京エコリサイクルの法人向けPC・OA機器リサイクル事業
⇒これは使用済みパソコンやOA機器などのリユースや再資源化です。回収した製品は手分解され部品としての再利用や希少金属の回収などが行われます。廃プラスチックは熱エネルギーとしての回収や、セメントや路床材・建築基礎材などの副原料として有効利用されています。

 

 

2-3 中小企業等のCEの取組

中小企業等のCEの取組

 

環境省の「環境ビジネス先進事例集」から2社の取組を紹介します。

 

①食品廃棄物のアパレル用品への利用

●企業概要
企業名:豊島株式会社
所在地:愛知県名古屋市
設立:1918年

 

●事業内容
・同社は1918年創業の老舗繊維卸売企業で、原糸・原料から最終製品まで、総合的に取り扱う繊維商社として活躍するほか、ビル用大型電気機器および建設資材の販売、ビル設計・施工・監理等の業務も展開している

 

●取組の背景等
・地域等の課題
1)国内の人口減少や海外からの攻勢などがあり、国内の繊維業界は厳しい状況にある

 

2)食品廃棄量の増加は地球全体の問題となっている。世界ではまだ食べられる食品が約13億トンも廃棄されており、その削減・有効活用が求められている

 

・地域の資源
1)同社の地域で有効活用されていない食品廃棄物が多数存在する

 

2)当該地域には、「愛知県の味噌」など、ブランド力を有する食品がある。そうした食品を活用した商品を開発すれば、話題作りやマーケティング面での効果が期待できる

 

3)植物を原料とした染料の開発・生産が可能な技術力を有する企業(他社)が存在する

 

●CEビジネスの特徴
・同社は、食品製造過程で発生する食材や商品の残渣を、国内外での特許取得済みの技術(を有する事業者)で染料化してもらい、それを衣料等のメーカーへ供給して生地やアパレル商品などとして販売してするプロジェクトブランド「FOOD TEXTILE」を立ち上げた

 

同社はブルーベリーやキャベツなどの果物や野菜を原料とする染料を使用したトートバッグ、Tシャツ、スニーカーなどの製造・販売に利用している

 

•食品残渣については食品メーカーや飲食会社と連携し、食品残渣を有償で仕入れる仕組みを作ってフードロスの削減のほか、それらの企業の収益向上を図っている

 

・コンバースなどのアパレルブランドなどと連携して、繊維・アパレル産業の高付加価値化に結び付けている

 

・地域企業とも連携して、地場で育てられた食材から出る食品廃棄物を染料化し、土産やふるさと納税の返礼品等への商品化なども進めている

 

●事業化のポイント
1)事業化を進める(取組内容や投資等の判断をする)場合、ニーズや収益性等の事業の妥当性を示す論理的根拠のほか、社外の声などを活用することも重要

 

⇒このプロジェクトの発案者は、異業種交流会への参加で食品メーカーの社員と知り合い、食品業界での食品廃棄物問題に対する危機意識を共有し、「両者で何かできることはないか」という取組のきっかけを得ました(他者との協力・連携)。

 

⇒同社は展示会を開催しており、その場で取引先にFOOD TEXTILEのコンセプトを示したところ良好な反応が得られ、その声を社内で利用してプロジェクトを本格推進させました。

 

2)事業化の初期段階では、そのビジネスモデルの価値を証明することが重要。特に新しいモデルの場合、最終的に自社が勝負するポイントのほか、川下のビジネスに取組んでその価値を示すことも必要である

 

⇒同社はビジネスモデルのコアとなる染料化技術の開発が不可欠であるため、従来から接点のある染料メーカーと協力し植物を利用した染料化技術の開発を実現したのです。

 

⇒植物由来の染料の利用を取引先に持ち掛けても価格の点で採用が進まなかったため、同社は自ら最終製品を生産して消費者の良好な反応を衣料メーカー等へ示すことにしました。その結果、良好な反応により様々な用途開発への道が開かれています。

 

3)知名度の高い商品への採用、QRコードを通した情報提供や植樹などのイベントを通して、消費者が「実際に目にする」取組で購買意欲や満足度を高める

 

⇒コンバースの定番スニーカー「オールスター」に生地が採用され、多くの人に認知されたことで、様々な企業からの相談・引き合いに繋がりました。

 

⇒どの残渣をどの程度利用したかを確認できるQRコードを製品に付ける、売上の一部が桜の植樹の寄付に回るプロジェクトへ関与する、といった取組で消費者が自社のCEビジネス(サステナブル消費機会の提供)を実感できるように努めています。

 

②生じる余剰汚泥を活用した保水ブロックによる価値創造

●企業概要
企業名:小松マテーレ株式会社
所在地:石川県能美市
設立:1943年

 

●事業内容
・同社は1943年創業の染色を基盤に多彩な事業を展開する「化学素材メーカー」

 

・ファッションやスポーツなどの衣料分野から、医療関連、建築建材関連、電材関連などの資材分野、炭素繊維や超発泡セラミックス建材などの環境共生素材を軸とした先端材料分野まで、広範囲の事業を展開している

 

●取組の背景等
・地域等の課題
1)同社は、布地製造の染色工程でエネルギーや水資源を多く使用するため環境問題への意識が高いが、排水処理で発生した汚泥は業者に委託して処理していた

 

・地域の資源
1)石川県は古くから繊維産業が発展しており、その関連産業も多い産業基盤がある

 

2)石川県能登半島は珪藻土が豊富。珪藻土は多孔質で、透水性、保水性が高いなどの特徴を有する

 

3)石川県南部には九谷焼の産地があり、地域には窯業のノウハウが豊富である

 

●CEビジネスの特徴
・同社は地元名産の九谷焼の製法や地域資源の珪藻土を活用し、余剰汚泥を保水性ブロックとして新たな価値を創出し、その開発製品を防災・建築の分野へ展開して、地方と都市の資金循環と地方の雇用拡大に貢献している。

 

同社は布地製造の排水処理工程で発生する副産物(微生物から成る余剰汚泥)の有効活用を検討した結果、伝統工芸「九谷焼」の製法をヒントに、余剰汚泥を原材料とした保水性ブロック「greenbiz(グリーンビズ)」を着想しました。

 

⇒この製品は雨水を蓄えるためゲリラ豪雨対策に役立つ他、蒸発の際に周囲の熱を奪う打ち水効果を発揮するため、水をまかなくても一週間近くの冷却効果がありヒートアイランド現象の抑制にも有効です。また、断熱性・吸音性・不燃性といった特徴もあります。

 

⇒熱可塑性炭素繊維複合材料「CABKOMA(カボコーマ)ストランドロッド」も開発されました。約160mで12㎏と、同等の強度を持つメタルワイヤの約1/5の重量と軽量で建築の強度向上のほか、建築現場の省力化・省エネ化・施工性の向上にも有効です。

 

●事業化のポイント
1)自社開発、環境問題、地域資源の活用に対する意識の高さ
⇒同社は自社開発に積極的で環境問題のへの意識も高く、自社の製造工程で生じる廃棄物の削減を目的に、排水処理工程で発生する余剰汚泥の活用を進めました。

 

同社は、余剰汚泥を「微生物を多く含む資源」と考え、地元石川県南部の伝統工芸の九谷焼をヒントに、余剰汚泥を活用したセラミックス材料の開発を構想し九谷焼の専門家に相談・連携して開発に至ったのです。また、地元から採れる珪藻土を活用しています。

 

2)柔軟で機動性の高い開発体制を構築できる企業文化や運営体制
⇒開発関連の人材を十分に確保するほか、新テーマの対応を可能とする組織の枠を超えて柔軟に人材を登用・チーム組成できる組織運営や企業文化が、開発への様々な課題を解決し事業化を実現させました。

 

⇒例えば、保水性・打ち水効果や遮音性等の機能の発見から製品化するための開発の実行、ヒートアイランド現象の緩和策としてのニーズに対応する柔軟な営業展開、製品化後の顧客等からの要望に対応した更なる開発、などにより事業化が進められています。

 

3)強みの既存技術の利用、地域の企業・有識者と連携で事業を推進
⇒同社は既存技術の「繊維」をもとに、微多孔性発泡セラミックスを使用した屋上緑化材、舗装用ブロック、農業分野への活用、炭素繊維の建築分野への展開、など市場の拡大に努めています。

 

 

3 サーキュラー・エコノミーのメリット

サーキュラー・エコノミーのメリット

 

ここではCEビジネスに取組むことによって、社会や企業などがどのようなメリットを享受できるかについて確認していきましょう。

 

サーキュラー・エコノミーのメリット

 

 

3-1 資源枯渇への対策と自然環境の保護

人間の生活や経済活動を支えるためのエネルギー資源やマテリアルなどは現在の消費ベースからすると150年といった期間で枯渇する恐れがありますが、CEの活動を進めることでそれを伸ばすことが可能です。

 

世界で採取し供給し得る資源の量は限られており、発展途上国の工業化の進展もあり資源消費は増大を続け、その枯渇へのスピードは加速しています。その結果、水、高品質の土壌、天然ガス、鉱物、貴金属などの有限の資源が不足しつつあるです。

 

こうした資源不足の危機を回避しつつ世界経済が発展を持続していくためには資源消費の無駄をなくし有効利用することが必要であり、CEの実践がそれに役立ちます。

 

また、生産活動や消費行動等により生じる廃棄物をCEによりゼロに近づけていくことで、無用な自然資源の採取を抑制するとともに自然環境への汚染を回避することも可能です。生産過程で生じる廃棄物、消費の途上や使用後の廃棄物をCEに基づく別の方法で利用できれば環境への負荷を大幅に低減できます。

 

 

3-2 経済的利益の拡大

CEビジネスは新たな事業機会を創出し収益の向上にも有効です。もちろん廃棄物の処理が少なくなることで企業のみならず、国や自治体などの負担も小さくなり、結果的に国民・住民の利益にも繋がります。

 

生産過程で生じた廃棄物を別の生産の原料などの資源として収益化する、生産した製品の利用のバリュエーションを増やしてビジネスを多様化することでその製品需要を増やす、その派生するビジネスで収益を得る、などCEによる新たなビジネスモデルが出現してきました。

 

また、こうした環境を配慮した企業活動やサスティナブルな経営は消費者、顧客、取引先や金融機関などのステークホルダーからの支持も得やすく企業イメージの向上に繋がり、取引で有利に働くこともあります。そして、結果的に企業収益の向上や成長に繋がることもあるのです。

 

消費で生じる廃棄物が減少していけば、それを処理する自治体等の負担も減少し、それらに回す税金支出を減らすことも可能になります。そのことで住民税等の負担の軽減や、別の用途に税金を回すといったことに繋がれば、住民にとってのメリットも小さくないはずです。

 

 

3-3 イノベーション等の創出

CEの取組は、資源利用の削減、製品や資源の最大限の利用および再利用、効率的で付加価値を生み出す廃棄物の処理方法、などを目指すことになるため、イノベーションの創出の苗床になります。

 

CEの取組では、リニア経済での原材料の採取⇒生産⇒使用・消費⇒(リサイクル⇒)廃棄という流れの中ではあまり見られない長期化・稼働率の向上・再利用・別利用・再生などの用途でのビジネス化が重要です。

 

従って、自社の既存の技術・ノウハウ等だけでは対応できないことも多く、新たなアイデアをもとにした技術革新も求められるようになります。当然自社の力だけでは対応が困難になりやすいため、他者との協力・連携などを活用したイノベーションの推進が重要です。

 

その他者との協力・連携等により新たなアイデアを生み出し、それを具現化するためのイノベーションを誘発する取組が期待されます。そして、実際にこれまでになかったビジネスを生み出し、新たな収益源としているケースが少なくありません。

 

CEの実践は環境負荷の低減といった差し迫った課題への対策の1つの手段であるのみならず、新たなビジネス機会としても有望となるため、それらに関するイノベーションに取組むメリットは大きいと言えるでしょう。

 

もちろんイノベーションの実現でなくても既存のビジネスのあり方やプロセスを変更・調整してCEを進める方法も有効です。例えば、製造業において廃棄物やその副産物を排除または削減し、あるいは再利用することを目的として、廃棄物の総合的な管理システムを構築しそこから利益を得るという取組が実施されています。

 

廃棄物を分析して他の原材料とへと変換する方法を考案し新たな利用(再生)を創出する、再生が難しい廃棄物は生産プロセスの改善や効率化を進め発生を抑制する、といった環境負荷の低減も進められているのです。そして、こうした取組によりコストは削減し企業収益は向上します。

 

 

4 CE分野での参入・会社設立に関する主な手順とポイント

CE分野での参入・会社設立に関する主な手順とポイント

 

ここではCEビジネスを始める際の進め方や重要点を見ていきましょう。

 

 

4-1 CEビジネスを始める場合の流れ

起業・会社設立してCEビジネスを開始する場合と既存のコア事業からCEビジネスに参入する場合の流れを簡単に示しておきます。

 

①CEビジネスで起業・会社設立するケース

既存事業がないあるいは既存事業があるがそれと関係なくCEビジネスを開始する場合の主な手順は以下の通りです。

 

  1. 1)CEビジネスのアイデアの発想
  2. 2)CEビジネスのコンセプトの設定
  3. 3)CEのビジネスモデルの構築
  4. 4)CEビジネスのプラン化(事業計画化)
  5. 5)必要資源の確保や組織編成
  6. 6)事業開始

 

以上の内容は一般的な起業・会社設立する場合の手順と基本的には同様の内容と言えます。ただし、CEビジネスでは、廃棄物をなくす、自然環境を保護する、環境への負担を軽減する、資源を有効利用する、などの目的やニーズへの対応が不可欠です。

 

そのため上記の1)~3)が特に重要となり、一般的なビジネスモデルの構築とは違う循環経済の要素を踏まえた構築が求められます。なお、これらの点については後ほど説明しましょう。

 

②コア事業からCEビジネスを始めるケース

既存のコア事業と関連するCEビジネスを開始する場合の流れも基本的には上記①の内容と同様です。ただし、ビジネスアイデアからプラン化・実施までの過程において既存事業との関係性を考慮した取組・内容が重要になります。

 

具体的には、CEビジネスに参入することで既存のコアビジネスにどのような良い影響をもたらせるかについての反映です。例えば、既存の生産工程で生ずる廃棄物を再生して他の原料として収益化できれば、廃棄物の処理コストが減少して既存製品のコスト競争力が高まります。

 

また、製品の利用頻度を高めるなどのCEビジネスを展開すれば、既存製品の販売量を伸ばすことも可能です。このようにコア事業のある企業がCEビジネスに参入する場合、コアビジネスの補完、変革や成長などへ繋げることも考えねばなりません。

 

 

4-2 CEビジネスのコンセプトとモデル

CEビジネスを始めるにあたり特に重要となるCEビジネスのニーズやビジネスモデルなどについて確認しましょう。

 

①CEビジネスの基盤となるニーズの把握

ビジネスの成功は、どのようなニーズをもとにビジネスアイデアとして優れたコンセプトにできるかに依存します。ここではCEビジネスを考案する際のニーズについて確認していきます。

 

CEビジネスの基盤となるニーズの把握

 

1)社会や環境に優しいものを選び利用したい

 

消費者、企業や自治体などでは社会や自然環境に悪影響を及ぼさない、負荷の少ない製品等を購入し使用しようというニーズが増大しており、それを捉えるためのCEビジネスは有望です。

 

例えば、従来なら製品の使用後はゴミとして、費用をかけて廃棄・処理されるところをCEビジネスとして再利用・再生できるようにすれば、環境に優しい製品を評価する消費者等に購入してもらいやすくなります。

 

再生・再利用することによる、品質面等の不安を払拭し、さらに性能面の向上や環境負荷への低減の効果などをアピールできれば普及が期待できるはずです。

 

2)所有より利用を重視したい

 

消費者にはモノを購入して長期に渡って利用するという価値観から必要な時に好きな分だけ利用するというニーズが強まってきており、それに対応したビジネスが求められるようになってきました。

 

車での移動は、マイカーではなくレンタルやカーシェアリングなどを利用する、家電製品等でも新品を購入して使用するのではなく、中古品やレンタル品を活用する、といった消費者が増えています。

 

企業では、設備・機械、事務機器、副資材、事務的サービス、などにおいてリースやレンタルの利用は多いですが、IoTの進展とともに設備や機械などを従量制で提供するサービスも拡大中です。

 

こうした「利用」に対してコストを支払うというニーズが増加しており、それに対応するCEビジネスは今後も増加していくでしょう。

 

3)より長期に利用したい

 

高額な製品やインフラなどはできるだけ長期に渡って利用できることが望まれるため、それに寄与するビジネスが期待されています。

 

例えば、スマートフォンなどの筐体が損傷した場合、買い替えが検討されるケースは多かったです。しかし、その筐体が自己修復機能を有する材料で作られていれば、買い替えに至らず長期に利用される可能性が高まるでしょう。

 

また、コンクリートに自己修復機能を有する機能があれば、それを使用したインフラの寿命は大幅に延長することになります。こうした製品を長期に利用したいというニーズも少なくないため、それを捉えられるCEビジネスは有望です。

 

4)より安くより手軽に使用したい

 

以前から「安く使用したい」というニーズがあり、それに対応するリサイクルや再生などのサービスが提供されてきました。

 

技術の発展に伴い画期的な機能や斬新なデザインなどを有する製品が次から次へと投入されますが、消費者にはそれに費やすためのお金に限界があります。そのため消費者の中に「より安くより手軽に使用したい」というニーズが増大しているのです。

 

一定期間使用後の製品を回収・修繕・アップグレードして新品よりも安く販売する、といった方法で「より安く」というニーズを満足できます。また、シェアリングやサブスクなどの方法で「より安くより手軽に」というニーズに対応することも可能です。

 

②CEのビジネスモデルの構築

環境問題等に関するニーズを特定できたら次は、それをもとにビジネスアイデアを発想し、それに基づいてビジネスの仕組みを作ることが必要になります。ここではニーズからビジネスモデルへと昇華させていく際に参考となるアクセンチュア社の5つのビジネスモデルを簡単に紹介しましょう。

 

CEのビジネスモデルの構築

 

1)循環型(再生型)サプライチェーン

 

このモデルは、リサイクル可能な原材料をリサイクル使用する、循環型サプライ材料を利用するタイプです。具体的には繰り返し再生・使用できる100%再生可能な製品のリサイクルや生物分解が可能な原材料などを利用したビジネスになります。

 

このモデルのメリットは、調達リスクの大きい材料や希少材料等の投入を最小限化し、資源価格の変動リスクに備えるのに役立つ点です。例えば、欧米の企業では、植物由来材料や生分解性材料の強みを保有する企業がその優位性を高めるためにCEビジネスへ参入しているケースが少なくありません。

 

日本でも積水化学が産業廃棄物などをエタノールに変換する技術を開発しています。都市ゴミなどが燃料やプラスチック等の原料に再生させるビジネスが多く見られるようになってきました。

 

2)資源の回収とリサイクル

 

このモデルは、生産から消費の全プロセスで発生する中間廃棄、副産物、製品廃棄を可能な限り再利用、再生、2次転用して廃棄を最大限に無くすこと目指すタイプです。

 

回収やリサイクルによって廃棄物の再利用を進めるというビジネスモデルで、3Rを推進してきた日本では技術面や制度面を含め取組みやすいタイプと言えるでしょう。

 

ただし、これまでの3Rの取組のように廃棄物を単に減少させるという取組だけでなく、原材料や製品の回収・リサイクルを、無駄なものから長期的に価値を創造する取組に昇華させることがポイントです。

 

自動車メーカーでは自社製品を回収して同等品質の部品材料として再生する、部品の再製造に利用する、などの資源循環により企業にとってはコスト競争力、ユーズにとっては低価格、といった価値が創造されます。

 

3)製品寿命の延長

 

このモデルは、修理・回収サービスの充実や利用ベースの課金制などによって製品寿命の延長を目指すタイプ取組で、顧客価値と事業収益の向上が期待できます。

 

具体的には、より耐久性の優れた製品を作り長期の使用を可能とする、中古品を回収して修繕・クリーニング・アップグレードなどを行い再利用の可能性を高め製品寿命を長くする、といったビジネス・取組が該当するでしょう。

 

中古品であっても部品を現行モデルのものにアップグレードすれば、製品価値は大きく上昇し需要の増大が期待できます。例えば、中古パソコンでは、メモリーを増設する、HDDからSSDへ変更する、CPUを新世代タイプに変更する、といったアップグレードによる中古販売です。

 

ほかにも自己修復機能を持たせた材料で製品化する、インフラ向けの自己治癒能力のあるコンクリートを開発する、といった取組が見られています。中古品を単に回収して再販売するのではなく、新たな価値をつけニーズの幅を広げるなどの取組もCEビジネスとして重要です。

 

4)シェアリング・プラットフォーム

 

このモデルは製品の生産量が減少するものの、シェアリングにより製品の稼働率を向上させて使用者の利便性を拡大させ、資産の無駄を減少させるタイプです。例えば、シェアリングは未使用資源や利用頻度の低い資源を他者と共有し、より効率的な製品・サービスの利用を可能にします。

 

移動、宿泊、日用品、自転車、自動車、スキル、など様々な分野でデジタル技術を利用したシェアリングが普及しており、グローバルに展開するAirbnbやUberなどの企業も登場し始めました。

 

このモデルは、「資産の所有から利用」という消費者や事業者の購買行動の流れに対応できるものであり、今後も様々な分野でさらに進展するものとして期待されます。

 

5)製品のサービス化(Product as a Service=PaaS)

 

このモデルは、従来の製品等の売り切りスタイルから製品等を利用した分だけ支払う従量課金制のようなサービスで提供するタイプです。具体的な提供方法としては、リース、シェアリング、サブスク等で行われます。

 

例えば、自動車のタイヤの場合は1本いくらで購入してもらう形態から、毎月に走行した距離分だけ対価を支払う、といったビジネスです。最近ではIoTの普及により製品の稼働状況をリアルタイムで把握できるようになってきたため、その利用度に応じた費用が容易に算定できます。

 

高額な製品や設備等を一括で購入しなくても毎月の決まった金額や使用した対価だけで利用できるようになるため、資産の導入・利用を促進させるビジネスになるでしょう。

 

 

5 CEビジネスへの参入における注意点

CEビジネスへの参入における注意点

 

起業・会社設立してCEビジネスを始める場合や、コア事業の関係で参入する際に特に気を付けたい点を説明します。

 

CEビジネスへの参入における注意点

 

 

5-1 参入による他の環境負荷の上昇

CEビジネスへの進出によってこれまで以上の環境負荷を増大させないように取組まねばなりません

 

例えば、自社製品の製造工程で生じる廃棄物を再生して他の原材料とする取組を行う場合に、その再生により多くのエネルギーを消費し多くのCO2を発生させるようでは余計な環境負荷を生み出すことになります。

 

つまり、自社の廃棄物を削減し新たな収益源を確保してもこれまで以上に環境へ負担をかけては意味がありません。

 

 

5-2 ニーズの存在の確認

自社が取組もうとするCEビジネスのニーズが本当に存在するかの確認が不可欠です。廃棄物を再生して新製品を開発する、中古品を回収・修繕してリサイクル品として販売する、必要な時に使用しやすいようにシェアリングサービスを提供する、といったCEビジネスが登場しています。

 

これらのビジネスが成立するのは、各々を求めるユーザーのニーズがあってこそです。たとえ先に確認したCEのビジネスモデルのタイプに合致している事業を始める場合でも、対象とするニーズが存在しないのであれば事業として成り立ちません。

 

例えば、中古品をリサイクル販売する場合に、それを求めるユーザーが本当にいるのか、自社が行う修繕やアップグレードの内容を支持するユーザーが存在するのか、という点を確認した上でビジネスを構築する必要があります。

 

 

5-3 コストや需要量の確認

また、ニーズの存在とともに事業として成立し得る需要量と事業コストも確認しておかねばなりません。CEビジネスを開始するにあたり、その初期費用(投資)や運営コストを算出して、その金額を回収できる販売量がないとビジネスは失敗してしまいます。

 

特にCEビジネスでのニーズは「環境意識」や「利用に関する価値観」に関わり、一般的な製品ニーズとは異なるため慎重な需要調査が必要です。環境に良いから、廃棄物を削減できるから、ユーザーが便利だから、といった理由だけでビジネス化するのは避けた方が賢明です。

 

また、ビジネスの内容を支持する人が少なく投資・運営の資金が回収できない、時間がかかり過ぎる、というようなビジネスは持続できません。他の新規事業等同様にマーケティング調査を行いCEビジネスとしての継続可能性を確認しましょう。

 

 

5-4 他者との協力・連携

CEビジネスでは新技術の開発や最先端のデジタル技術の活用などが重要となるため、他者との協力・連携は重要です。

 

CEビジネスを展開していくためには既存の生産や販売の方法だけでは対応できないケースも多く、他者の技術・製品・ノウハウ・ブランド力・サポート力などの活用も必要になります。そのため異業種との交流、金融機関や自治体との良好な関係なども重要になるのです。

 

CEビジネスの分野で事業化し成功するためには、他者の力を有効活用することが大事であり、他者の有する資源を有効活用する行為そのものがCEの考えにも合致します。

 

 

5-5 既存事業から参入する場合の注意点

既存事業からCEビジネスへ参入する場合、コアビジネスの変革や成長に繋げる、CEビジネスをコアビジネスに育成する、といった取組が必要です。

 

例えば、製品の所有から利用が重視される時代において、一面では製品の販売量が減少する可能性が生じます。その対策として、CEビジネスでシェアリング等による利用頻度を上げる取組を行えば、所有に依存しない形で販売量を増大させることも可能です。

 

つまり、本来の製品の製造販売というコアビジネスを維持向上させるための手段としてCEビジネスが活用できます。そして、そのCEビジネスを単なるコアビジネスの補完手段とするのではなく、コアビジネスへと成長させるように取組めば、もとのコアビジネスはより長期に継続できるでしょう。


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