昨年、中学生2年生で将棋のプロ棋士としてデビューした藤井聡太四段が、一度も負けずに15連勝の新記録を打ち立てたことが話題を呼んでいます。さらに、非公式戦ながらも、羽生善治三冠にも勝利したことで、将棋界に衝撃が走りました。
膨大な知識や研究以上に、ひらめきや直感力が必要とされる棋力。果たして藤井プロの強さの秘密はどこにあるのか。それは幼少期に遊んだとある海外有名メーカーのおもちゃが関係しているようです。
目次
- 1 中学生棋士藤井4段のスゴさとは
- 1-1 破竹の15連勝で新記録樹立
- 1-2 あの羽生名人も負けた!?
- 2 藤井棋士を育てた?スイス製おもちゃ「cuboro」
- 2-1 売り切れ続出で入手困難に
- 2-2 こんなにある!知育玩具の種類
- 3 将棋界に羽生善治以来のブーム再来か?
- 3-1 将棋人口は減少傾向
- 3-2 一世風靡を巻き起こした羽生善治を超えることはできるか
1 中学生棋士藤井4段のスゴさとは
(▲藤井聡太棋士プロフィール / 参照:日本将棋連盟)
昨年10月、14歳2ヶ月の若さでプロデビューを果たした藤井聡太棋士。今月1日には渋谷区の将棋会館で行われた対局に勝利し、公式戦連勝記録を15に伸ばしました。
1-1 破竹の15連勝で新記録樹立
全7タイトルある中でも最高峰と言われる竜王戦※の予選で、対戦相手はオーストリア・ウィーン生れの金井恒太六段(30)。
読売新聞社が主催する竜王戦は、全棋士と女流棋士4名・奨励会員1名・アマチュア5名で行われ、1組から6組に振り分けてトーナメント戦を行い、各組の上位者の計11名で挑戦者決定トーナメントを行う方式となります。優勝賞金は将棋界最高の4,320万円です。
第6組に振り分けられた藤井四段と金井六段は準決勝であいまみえ、午前10時から静かに始まった対局は、昼食、夕食とはさんで午後9時まで行われ、90手で藤井四段が白星を飾りました。
11時間に及ぶ激闘を制した藤井四段は、インタビューで「15連勝は(自分にとっても)驚き。プロとしてやっていく自信になった」と謙虚に語り、敗れた金井六段は「(藤井四段が)優勢になってからは慎重に時間を使った。的確だった」と対戦相手を褒め称えました。
昨年10月のデビュー戦で現役最高齢の加藤一二三九段(76歳)に勝利して以降も勝ち続け、連勝記録は15となりました。これまでデビューからの連勝記録は松本佳介六段と近藤正和六段の10連勝が最高でしたが、今年4月にはこれを更新。将棋界を代表する羽生善治三冠も中学生でデビュー以降は6連勝止まりでした。
次戦は新人王戦で横山大樹アマと対戦し、さらなる連勝記録の更新に挑みます。
・ 連勝記録ランキングベスト10
順位 | 棋士名 | 連勝数 | 年度 |
---|---|---|---|
1 | 神谷広志 | 28 | 1986~87 |
2 | 丸山忠久 | 24 | 1994 |
3 | 塚田泰明 | 22 | 1986 |
羽生善治 | 22 | 1992 | |
山崎隆之 | 22 | 2002~03 | |
6 | 有吉道夫 | 20 | 1984 |
7 | 羽生善治 | 18 | 1987~88 |
中田宏樹 | 18 | 1991 | |
丸山忠久 | 18 | 1999 | |
羽生善治 | 18 | 2005 | |
永瀬拓矢 | 18 | 2011 |
(参照:日本将棋連盟)
※ 竜王戦では、全てトーナメント戦によって行われる。竜王戦独自のランキングを用いて、出場棋士を6つの組に分け、その各クラスの成績上位者で決勝トーナメントを行い、優勝者が挑戦権を獲得。挑戦者が竜王と七番勝負を行い、4勝した棋士が竜王となる。
1-2 あの羽生名人も負けた!?
AbemaTVが提供する将棋チャンネル※では、藤井四段が7名のそうそうたる有名棋士と対局する『藤井聡太四段 炎の七番 ~New Generation Story~』が行われ、第2局以外は全て勝利し、6勝1敗で幕を閉じました。
・対戦相手と成績
対局 | 対戦相手 | 結果 |
---|---|---|
第1局 | 増田康宏四段 | ◯ |
第2局 | 永瀬拓矢六段 | × |
第3局 | 斎藤慎太郎七段 | ◯ |
第4局 | 中村太地六段 | ◯ |
第5局 | 深浦康市九段 | ◯ |
第6局 | 佐藤康光九段 | ◯ |
第7局 | 羽生善治三冠 | ◯ |
最終局では、同じく中学生でプロ棋士デビューを果たし、19歳で初タイトルとなる竜王を獲得、25歳で前人未到のタイトル棋戦全7冠に輝いた羽生善治相手に勝利を収めました。
※ 将棋界で最も歴史と格式のある「名人」のタイトル称号を懸けて行われる「名人戦」への挑戦者を決定する「順位戦」や七番勝負「名人戦」を全て無料で生中継している。
2 藤井棋士を育てた? スイス製おもちゃ「cuboro」
果たしてこの中学生棋士を天才足らしめる理由は何なのか。その答えは幼少期の頃まで遡ることができそうです。
2-1 売り切れ続出で入手困難に
まだ3歳だった藤井少年は、祖母がプレゼントしてくれたという積み木のおもちゃで毎日遊んでいました。それは、スイス発祥の「cuboro(キュボロ)」という立体パズル型のおもちゃで、穴や溝が掘られた5センチ角の立方体の積み木を重ねて、ビー玉ころがしのコースをつくるというもの。立体空間の構造を想像、理解する力をつけることができる知育玩具としてスイスでは人気商品の一つとなっています。
(▲キュボロの商品紹介画像 / 参照:cuboro swiss)
(▲図のようにしてビー玉転がしのコースを作って遊ぶことが可能 / 参照:cuboro swiss)
一見、大人でも苦労しそうなおもちゃですが、藤井少年はわずか4歳で80種類以上もあるキュボロを自在に組み立てて何時間も遊んでいたといいます。
このキュボロによって、現在のたぐいまれなひらめきと直感力が養われたのではないかと話題になり、メディアで紹介されて以降、売り切れが続出している模様です。
2-2 こんなにある! 知育玩具の種類
キュボロのほかにも知育玩具は近年注目されるジャンルの一つとなっており、日本玩具協会は子どもの教育・知育に貢献した玩具を毎年表彰しています。
2016年度のエデュケーショナル・トイ部門では、株式会社メガハウスによる「おえかきアーティスト」が大賞を獲得しました。
(▲おえかきアーティストの商品画像 参照:メガハウス)
デジタルペンで描いた絵が動く次世代玩具として人気となった商品です。
おえかきアーティストを紹介しているリセマムの記事によれば、「動く絵モード」「パラパラアニメモード」「パラパラ写真モード」「マンガ作成モード」「カメラモード」「メッセージアニメモード」「ぬりえモード」「せんなぞりモード」「もじなぞりモード」「おえかきモード」の全10モードを搭載。
本体の液晶パネルに、付属の専用タッチペンで絵を描くと、モードに合わせて絵が動いたり、パラパラアニメを作れるなど、デジタルならではのおえかき遊びを楽しむことができます。(参照:リセマム)
このほか、アイアップ社の「マナー魚(フィッシュ)」、アガツマ社の「マイフレンドテディ」、パイロットインキ社の「スイスイおえかき」、ピープル社の「くにキャラ®地球儀」が優秀賞に選ばれています。
知育玩具は零細企業が開発しやすい分野としても注目されており、新たなビジネスチャンスの発掘が期待されます。
3 将棋界に羽生善治以来のブーム再来か?
藤井聡太棋士の存在は、競技人口が低迷する将棋界に新たなムーブメントを巻き起こす可能性があると指摘されています。
3-1 将棋人口は減少傾向
公益財団法人日本生産性本部による「レジャー白書2016」によれば、2015年の将棋人口は約530万人となり昨年比でおよそ200万人減少するなど、将棋人口は年々減少しています。
・ 碁盤競技人の推移
(単位:万人)
年 | 2007 | 2008 | 2009 | 2010 | 2011 | 2012 | 2013 | 2014 | 2015 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
将棋 | 660 | 690 | 1270 | 1200 | 830 | 850 | 670 | 850 | 530 |
麻雀 | 660 | 740 | 1350 | 1240 | 960 | 762 | 650 | 870 | 600 |
囲碁 | 240 | 250 | 640 | 610 | 380 | 400 | 280 | 310 | 250 |
(参照:公益財団法人 日本生産性本部「レジャー白書2016」)
競技人口の減少により、協賛金収入も減り、現在の将棋界はプロ棋士であっても上位にいないと食べていけないとさえ言われています。
3-2 一世風靡を巻き起こした羽生善治を超えることはできるか
羽生善治三冠は埼玉県出身で現在46歳。1985年に中学3年生で四段昇格を果たしてから現在まで97に及ぶタイトルを獲得してきました。これは歴代棋士のなかでも最多で、ほかにも年度勝数、年度対局数、同一タイトル通算獲得数、同一タイトル連続獲得数でも歴代トップとなります。
・ タイトル獲得回数ランキング
順位 | 棋士名 | 連勝数 | 年度 |
---|---|---|---|
1 | 羽生善治 | 97 | 129 |
2 | 大山康晴 | 80 | 112 |
3 | 中原誠 | 64 | 91 |
4 | 谷川浩司 | 27 | 57 |
5 | 米長邦雄 | 19 | 48 |
(参照:日本将棋連盟)
特に、1996年、竜王・名人・棋聖・王位・王座・棋王・王将の全7冠制覇は偉業達成として当時マスメディアでも大きく扱われ“羽生善治”“羽生名人”の名が世間一般に一気に広まりました。
そして2017年現在、彗星のごとく現れた天才少年棋士・藤井4段は、デビュー後15連勝負けなしと、連日各メディアでも取り上げられており、当時の羽生善治三冠に負けず劣らずのインパクトを世間に与えています。
果たして藤井4段は羽生名人を超える棋士となるのか。今後の彼の動向に注目です。