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起業・会社設立は何を根拠で行う?その考慮すべきタイミングと環境とは

新型コロナ禍といった特殊な時期に起業や会社設立するのは無謀に見えますが、特定の産業・業種では有利に働くケースも少なくありません。

 

そこで今回の記事では、起業・会社設立の成功に影響するタイミングと環境を取り上げ、その適切なタイミングの取り方や好ましい環境の見極め方などを説明します。

 

起業・会社設立におけるタイミングや環境とは何か、その重要性や影響を指摘するほか、新型コロナ禍などをタイミングや環境の例として、どのように対応することが成功する起業・会社設立に繋がるかについても解説していきます。

 

パンデミックの中での起業を諦めている方、事業環境の分析の仕方に不安を抱いている方、いつ起業や会社設立するかで悩んでいる方などは参考にしてください。

 

 

1 起業におけるタイミングと環境の重要性と影響

起業におけるタイミングと環境の重要性と影響

 

事業を始める際の起業や会社設立のタイミングと環境とは何かについて説明し、その重要性や影響などを紹介しましょう。

 

 

1-1 起業する場合のタイミングと環境とは

起業は個人事業主或いは会社設立して法人として行うかのどちらかになりますが、その点を踏まえたタイミングと環境について説明します。

 

①事業を始めるタイミングと環境とは

個人事業主の場合、事業をいつ始めるかという起業のタイミングと、個人事業主で一定期間事業を継続した後に法人化(法人成り)するというタイミングの2つがあります。どちらのタイミングも重要で誤った時期に行うと業務に支障が出たり事業の成長に悪影響が出たり、することもあるため注意が必要です。

 

起業におけると環境とは、上記の各々タイミングにおける自社ビジネスに関わる自社や社会状況全般を意味します。具体的には、政治、法律、経済、社会・文化、技術、金融、雇用などの「マクロ環境」と、自社、市場と競合先との関係で見る「ミクロ環境」です。

 

また、自社として扱う「内部環境」とそれ以外として扱う「外部環境」とに分ける見方もあります。内部環境は、自社が保有する人・モノ・金・情報などの経営資源の内容や状況等が対象です。外部環境は上記のマクロ環境と自社を除くミクロ環境の要素が対象になります。

 

これらの環境が起業時や会社設立時にどのようになっているかを分析して、自社にとって有利となる状況が起業等の適したタイミングになるわけです。なお、法人として起業する場合のタイミングと環境の内容は上記の個人事業主の場合と同じになります。

 

②法人化するタイミングと環境

個人事業主から法人化する場合のタイミングと環境は、起業時と内容が若干異なります。違う点としては起業時には主に事業が成功するかどうかに着目されますが、法人化時では事業主にとってよりメリットが得られるか、事業がより大きく成長できるかなどが着目されるのです。

 

詳しい内容は後述しますが、具体的には所得税の節税効果、信用度の上昇等に伴う資金調達力の向上、販売先や仕入先等の拡大や人材確保の対策などを理由に法人化されます。

 

従って、法人化のタイミングはこれらの内容に関わる状況(環境)が有利か否かで判断されるわけです。たとえば、個人事業主としての所得が低い状態で法人化しても所得税での節税効果が期待できない上に、逆にその他の税金負担が重くなることもあります。

 

法人化のタイミングは、起業時のように今後の事業が上手くいくかどうかの観点に加え、節税や事業上のメリットといった面で環境が整っていることが重要となるのです。

 

 

1-2 環境の影響と起業のタイミングの関係

ここでは環境による影響と起業時のタイミングについて説明します。

 

①マクロ環境

マクロ環境

 

マクロ環境の内容を確認していきましょう。

 

●経済状況

株式市場、不動産市場や消費市場などが好調である好景気の状況下では消費者の購買意欲は高く、企業の生産活動や投資活動も活発となるため、直接的に関連する分野のみならず多くの業界で景気が良好になります。

 

当然、そうした環境下で起業すれば対象とする需要も上向きになっているため事業は順調に進み短期間での成長も可能となるのです。

 

逆に景気全般が悪化している場合、消費者の財布のひもは固く企業の生産・投資等の活動も低調となるため、多くの企業において仕事量が低下することになるでしょう。

 

このような不況時に起業すれば、対象とする需要も減少していくこととなるほか、競争も厳しくなり事業は不安定になりやすくなるため経営の持続が困難になりかねません。

 

ただし、こうした景気の善し悪しは各市場によって異なるケースも多く、消費市場では不景気でも建設・不動産市場などでは好景気になっていることも少なくありません

 

どの分野の業界・業種で起業するかによって経済状況による影響は異なってくるため、景気全般の状況から判断するのは適切ではありません。逆に景気全般が比較的良好であっても自分が起業する事業分野の状況が悪いは或いは今後悪くなりそうな場合はリスクが高くなります。

 

また、起業する事業分野に大きな影響をもたらす業界もあるため、それらの動向なども考慮して起業のタイミングを測るべきです。

 

●政治・法律

どの政党が政権を握り、どのような政策を実施するか、法律・規制を作るかで企業活動は大きな影響を受けます。

 

アメリカでは2020年の大統領選挙で大きな問題が生じていましたが、結果として民主党のバイデン政権が2021年に誕生しました。バイデン大統領は就任から1週間程度で30本以上にも及ぶ異例の大統領令を発行し前トランプ政権時の政策を転換しようとしています(実質的にオバマ政権時代の政策への回帰)。

 

たとえば、バイデン大統領は温暖化ガスの排出削減を目指す大統領令に署名し、連邦政府の管理地における新たな石油・ガス開発を規制することにしたのです。その一方で、洋上風力発電を2030年までに倍増させることが決定されています。

 

これらの大統領令によりカナダから米国への石油輸送プロジェクトは中止に追い込まれるほか、石化系エネルギー産業は大きなダメージを受け大量の雇用喪失が懸念されているのです。逆に洋上風力発電などのクリーンエネルギー産業では需要が大きく増大することが見込まれます。

 

*なお、上記の大統領令は法律に基づいて発せられているとは限らないため、関係する州や企業などから訴訟が起こり裁判により効力がなくなるケースもある

 

日本では今のところ自民党から他の政党へ政権が代わる可能性は低いですが、誰が首相になるか、政権を握るかで政策が大きく変わることもあります。たとえば、親中派と呼ばれる派閥が政権を担えば中国との経済活動はより積極的に進むことになるでしょう。

 

逆に対中強硬派の派閥が政権を握れば中国との経済活動は抑制されるほか、尖閣諸島問題や南シナ海問題での対立が激しくなり日中間の貿易や中国本土での事業で支障が生ずる恐れもあります。

 

また、現在の菅政権は2050年までに脱炭素社会を実現すると宣言しており、ガソリン自動車事業は苦境に追い込まれることになりました。その一方で、次世代型太陽電池、カーボンリサイクルなどグリーン社会に貢献する事業の拡大が推進されます。

 

このように政治・法律によって企業活動は大きく影響されるため、起業のタイミングもどのような政治・法律の状況になっているか、なりそうなのかを見極めることも欠かせません。

 

●震災・パンデミック等の厄災

現在、新型コロナ感染症の拡大により毎日千人以上の新規感染者が発生し医療体制が崩壊の危機に直面するといった状況にあり、経済活動は大きく制約されています。

 

飲食・接待を伴う業種では営業時間の短縮などが要請され、会社への通勤も7割減が要請されている地域もある状態です。当然、飲食・宿泊業等では客数が大幅に減少し、倒産・廃業に追い込まれる企業は少なくありません。

 

また、家庭においても生活防衛を中心とした消費行動が余儀なくされ、消費支出そのものも大幅に抑制されることになり2020年度の消費支出は大きく落ち込みました。

 

家計所得、家計消費支出勤労者世帯(二人以上の世帯)対前年同月名目増減率(%)
実収入 可処分所得 消費支出
2020年1月 2.9 3.1 -4.1
2月 2.2 3.2 0.1
3月 2.0 1.4 -7.6
4月 1.0 -0.5 -9.9
5月 9.8 13.4 -15.5
6月 15.7 19.0 -3.3
7月 9.5 12.0 -10.1
8月 1.4 1.0 -6.5
9月 2.6 2.9 -7.7
10月 2.0 2.1 2.3
11月 -0.5 -1.5 0.5

 

*出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構 HP 「国内統計:家計所得、家計消費支出」エクセルデータ「家計所得、家計消費支出統計表」より作成

消費財の関連業種では全般的に悪影響を受け業績を落とす企業が多く見られたのです。特に外出や出勤が抑制された影響により、化粧品関連業種は売上を大きく落としました。

 

一方、コロナ対策の衛生関連用品、在宅勤務用のパソコンやその周辺機器、巣ごもり需要としての食品や家庭生活用品などの売上が急増し関連業種では業績を伸ばしています。また、10万円給付により白物家電や調理機器などの販売も好調でした。

 

このように、何か大きな厄災が生じれば、関連するビジネスに大きな影響を与えることになりますが、全てが悪影響となるわけではなくビジネスチャンスになり得ることもあるため、その影響の善し悪し、程度を踏まえた起業の判断が求められます。

 

●技術の進化

新たな技術が登場することで事業環境が一変することもあるため、その動向を考慮した起業も必要です。

 

音楽の記録メディアは、カセットテープ⇒MD⇒CD⇒DVD⇒ブルーレイディスクやフラッシュメモリーといった内容で変遷しています。新しい製品・技術が登場して市場で圧倒的なシェアを占めれば、旧製品・旧技術は市場からの退出を余儀なくされるわけです。

 

自動車においては今後、ガソリン自動車から電気自動車や燃料電池自動車へと置き換わることになり、内燃機関関連の材料や部品の事業は衰退を強いられる可能性が高くなっています。

 

一方、電気自動車等では電池の性能が売上に大きく影響するため、電池そのものや電池関連の業種では更なる市場の拡大が見込まれそうです。また、ガソリンスタンドに代わって給電施設や水素ステーションの設置が次第に加速していくでしょう。

 

このように技術の進化は留まることなく急速に進むため、その動向を洞察しその進化を踏まえた起業を考えねばなりません。

 

●社会・文化

これまで見てきた環境の変化が生じると結果として、人の思考や行動様式に変化が生じこれまでビジネスとして成立したものが成立しなくなったり、逆に新たなビジネスを登場させたりすることもあります。つまり、社会・文化等での変化によるビジネスへの影響です。

 

たとえば、今回のパンデミックによりテレワークの導入が加速され、働き方改革が大きく進展しました。こうした変化が生じた場合、パンデミックのような問題が解消された後では前のような働き方に全面的に戻ることはありません。

 

つまり、会社という職場へ出勤して勤務するという働き方から自宅で働く、直接的に取引先に出向くといった働き方がある程度定着することになります。こうしたワークスタイルが普通となるニューノーマルの環境が定着していくのです。

 

会社への出勤が大幅に減少すれば、女性の化粧関連品や衣料などの需要はやはり元の水準に戻る可能性は低くなります。一方、自宅にいる時間や子供と一緒にいる時間が多くなる生活では、自宅で楽しめるクッキングや趣味などの関連分野での需要増が期待できるでしょう。

 

また、ビジネスや教育の分野ではインターネット経由のサービスが大きく導入され、これもニューノーマル下では当たり前に利用されるはずです。

 

このように何かの環境の変化により、その影響を受けて新たな生活様式が生み出されるケースも多いため、起業の際はそうした社会の変化に合わせた検討が求められます。

 

②ミクロ環境

ミクロ環境

 

内部環境である自社と、市場(顧客)と競合先を環境として見た場合のその影響について説明します。

 

●市場(顧客)

自社が事業の対象とする市場や顧客の状況が起業の成功や起業後の事業の成長へ直接的に影響します。何故なら、自社が直接商売の相手とする人達(企業群)の状況次第で、その企業の業績が変わってくるからです。

 

ビジネスの対象者が、購買意欲が高く、より多く購買できるほどの資金を保有し、ライバル以上に自社の商品・サービスに魅力を感じ興味を持ってくれるなら自社の事業を選好してくれるでしょう。

 

逆に上記の要素の中でそのレベルが著しく低い場合は自社の事業はスルーされる可能性が高くなるはずです。今まで見てきたマクロ環境の要素のどれかの影響を受けてターゲットの購買意欲が低下したり、所得が減少したりすれば、いくら自社の商品等が良くても買い控えられる可能性が高まります。

 

このように自社がターゲットとする市場・顧客とマクロ環境やライバルとの関係で自社事業は大きな影響を受けるため、それらの現在の状況と今後の動向を踏まえて起業を検討するべきです。

 

●競合先(ライバル)

自社の商品・サービスがいかに素晴らしくターゲットの興味をそそるものでも競合先が自社以上のモノを提供するなら自社の事業展開は厳しくなります。つまり、需要があってもライバルと同等以上のモノを提供できなければ起業の成功も難しくなるのです。

 

従って、ライバルという環境要因の存在を無視した起業は成功が困難になるため、彼らの状況や動向を把握した上でビジネスモデルの策定(或は修正)や事業開始時期の変更なども必要になります。

 

具体的にはライバルに勝てる競争優位性をビジネスモデルに含めて事業を始めることが不可欠で、その目途が立った時点を起業のタイミングにしなければなりません。この場合の競争優位性とは、品質、性能、価格、納期、デザイン性、サービスやブランド力などになります。

 

これらの要素の中で顧客が最も重要視する要素を把握して、それらについてライバルに勝てる或いは十分に勝負できる状態になっている時が起業のタイミングの目安になるでしょう。

 

●自社(内部環境)

外部環境が自社にとって有利な状況にあっても自社自身の環境が整っていなければ、そのチャンスを活かすことができずその起業が失敗する可能性は高くなります。

 

たとえば、景気全般が良好でターゲットの懐具合も良く財布の紐も緩んでいても自社の商品・サービスが彼らを満足できなければ自社は利用されなくなるでしょう。いくら彼らにお金の余裕があっても気に入らないモノ、満足できないモノをわざわざ購入する可能性は低いでしょう。

 

商品・サービスを提供するという事業化には、人・モノ・金・情報などの経営資源が必要であり、ライバルに勝つにはこれらの量と質を一定以上のレベルで保有する必要があります。

 

たとえば、製造業の場合、ターゲットのニーズを捉えるだけの製品を作れる設計力、生産技術力や設備能力のほか、ライバルよりも上手く販売できるマーケティング力といった経営資源が重要です。

 

もちろんすべての要素でライバルを上回る力量を保有するのは困難ですが、競争力に大きく影響する要素については確保しなくてはなりません。コストが競争の決め手になるならそれを達成できる要素の確保が不可欠となるのです。

 

このようにターゲットのニーズや競争優位性を踏まえた経営資源の確保が事業の成功に欠かせないため、それらを整えられる時点を起業のタイミングとして考える必要があります。

 

 

2 起業に関する環境の分析や捉え方

起業に関する環境の分析や捉え方

 

事業環境は起業や事業展開において脅威にもチャンスにもなり得るため、その適切な分析が欠かせません。ここではその環境の分析や捉え方の方法を紹介しましょう。

 

 

2-1 PEST分析

PEST分析とは、マクロ環境を分析するためのフレームワーク(枠組み)です。マクロ環境をPolitics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の4つの要因に分けて分析することからその頭文字を取ってPEST分析と呼ばれています。

 

各要因はビジネスに大きく影響するものであり、ビジネスモデルの考案や起業のタイミングの検討などに欠かせない評価要因になるのです。

 

①PESTの各要因

 

●Politics

Politicsは「政治・法律関連要因」です。具体的には、法律、法改正、規制緩和、条約の締結、新税制の導入・改正、政権の変更、補助・助成などになります。

 

政治や法律はビジネスを規制したり、促進したりすることに直接的・間接的に関わるため、その内容の把握や動向の推察などは重要です。国や自治体の法律・規制だけでなく、業界団体などの規制や方針などもビジネスに影響します。

 

●Economy

Economyは「経済的要因」です。消費動向、景気の好不況、インフレ・デフレの状況、株価・為替の動向、金利の変化、所得・賃金の動向などのほか、各産業に直接的に関わる要素もあります。たとえば、半導体製造装置業界の場合、半導体の需要動向が大きな要因です。

 

現在、新型コロナ禍でパソコンの需要が増大し、半導体の需要も大きく伸びており、自動車産業向け半導体が不足するといった事態に発展しています。その結果、半導体製造措置業界も好調が持続されています。

 

●Society

Societyは「社会・文化的要因」です。主な要因としては、人口、人口構成、密度、社会インフラ、流行、事件、少子化・高齢化などの社会状況、教育、宗教などが挙げられます。

 

たとえば、少子高齢化が顕著となっている社会の教育産業では少子化により売上の拡大が一般的には困難です。従って、1人当たりのサービス量を増やす、質を高めて客単を高めるといった取り組みが重要となってきます。

 

一方、高齢化により介護産業は売上の増大が期待できるため、供給を伸ばす取り組みがしやすいです。また、健康増進に対する人々の関心は日増しに強まりこれらに関わる産業も有望です。このように社会・文化的要因もビジネスに大きく影響するため分析が欠かせません。

 

●Technology

Technologyは「技術的要因」です。技術の動向や技術革新がビジネスを左右するため、この要因の分析も重要になります。具体的には各種新技術の開発、特許やイノベーションなどで、今後はビッグデータ、AI、IoT技術等が注目されるところです。

 

近年では特に情報通信技術の発展により、各産業分野の技術も高度化し産業や人の暮らし・生活様式が大きな影響を受けてきました。インターネットとモバイル端末の普及によりいつでもどこからでもショッピングできたり、機械を操作したりすることができる時代になっています。

 

今後も5Gや6Gといった超高速通信網の整備、AIを活用したロボットの各産業および人の生活への導入などが進み、ビジネスを大きく変化させることになるでしょう。

 

②PEST分析の例

例として、教育産業での起業を考えた場合のPEST分析の仕方を紹介します。

 

●Politics

政府はIT人材の育成を図るため、2020年度よりプログラミング教育の導入などを含む「情報教育(情報活用能力の育成)の推進」に取り組んでいます。具体的には、

 

・「プログラミング的思考」等を育むプログラミング教育の発達の段階に応じた位置付け(小学校段階からのプログラミング教育の実施、中・高等学校における一層の充実)

 

・小学校段階から、文字入力やデータ保存等の基本的操作技能の着実な習得

 

などが含まれ情報教育の推進が図れることとなったのです。英語教育については既に強化されており、学校外での英会話や情報に関する教育サービスの需要の増大が予想されます。

 

●Economy

現在は新型コロナ禍の真っ只中で、緊急事態宣言が出るなど経済活動は制限され消費マインドも再び大きく落ち込みそうです。

 

そうした中でもオンラインによる教育サービスの提供は可能であり、そのサービス自体や、提供するためのプラットフォームやアプリなどの需要は期待できます。飲食やレジャーなどへの支出が減る分、教育や趣味等の分野は有利になるはずです。

 

また、経済の発展は今後ともに情報通信技術に支えられ、グローバルな経済活動がさらに進展することが予想されるため、IT人材や英語が堪能な人材の需要は増大するでしょう。そのためこれらに関する教育サービスの需要は期待できるはずです。

 

●Society

日本国民の教育費の全体としての支出は減少傾向を辿っていますが、少子化が急速に進んできたため、子1人に対する教育費は増加しています。少ない子供に手厚い教育を施そうとする親も増加しているため、普通教科に加え英会話や情報といった科目への教育にも力が注がれる可能性が高いです。

 

●Technology

経済がITよって支えられていると述べましたが、現在ではデジタルトランスフォーメーション(DX)が牽引役となり世界経済をリードしています。DXとは単なるIT化ではなく、ITを利用したイノベーションなどを通じて新たな付加価値を提供する「ビジネスの変革」のことです。

 

アマゾンのインタネットショッピングサイト、マイクロソフトのOffice365(クラウドサービス)や不動産・宿泊先仲介のAirbnb(エアビーアンドビー)などがDXの代表例として挙げられます。

 

こうしたDXを起こすためにはIT人材の確保が必要であり、情報分野での教育サービスは期待できるでしょう。

 

 

2-2 5フォース分析

5フォース分析

 

5フォース(5つの力)分析とは、マイケル・ポーターによって提唱された業界の魅力度を把握するためのフレームワークです。この業界の魅力度とは、業界での収益性を指し、次の5つの力関係で決定されると考えられています。

 

  1. 1)新規参入の脅威
  2. 2)業界内の競争の度合い
  3. 3)代替品の脅威
  4. 4)買手の交渉力
  5. 5)売手の交渉力

 

①5フォース分析の概要

5フォース分析は、5つの力関係を考察し、どの業界が自社ビジネスにどう影響するのかを考察するのに有効です。そして、分析結果に基づいて、どのような戦略をとるのか、どのような対策を打っていくのか(はたらきかける)といった検討がしやすくなります。

 

5フォース分析の概要

 

この5つの力の具体的な内容は以下の通りです。

 

1)新規参入の脅威

業界内への新規参入者が多いほど、入りやすいほど業界での競争は厳しくなるため、既存の事業者にとって新規参入の力は脅威となります。この新規参入の脅威の程度は、業界の参入障壁の程度(入りやすいのか、困難なのか)や参入してきた場合の既存業者の反攻の程度(参入者を打ち負かせるか)などに依存します。

 

たとえば、以下のような点が脅威の判断材料になるでしょう。

 

・業界内における規模の経済性の影響
⇒一定期間における絶対生産量が増加するにつれて1製品あたりの生産コストが低下するという「規模の経済性」が働く業界では既存の事業者は有利です。逆にあまり機能しない業界では参入障壁は低く参入者は増加していきます。

 

・既存企業の差別化の程度
⇒業界内の既存企業が特許などを得て商品・サービスを提供してシェアを多く占有している場合、参入障壁は高く競争は緩やかになる可能性が高いです。

 

・業界内での取引先や販売チャネルの開拓の必要性
⇒参入にあたり取引先や販売チャネルの開拓が必要で、手間・コスト・時間が多くかかる場合、参入は容易ではありません。

 

・許認可の必要性と取得の程度
⇒事業開始の許可や販売の免許などが必要で、取得が容易でない場合参入障壁は高くなります。

 

2)業界内の競争の度合い

「業界内の競争の度合い」は「既存業者間の敵対関係」として表現されることもあります。つまり、業界内での企業同士の競争関係の程度を見るものです。各企業の競争行為が多い、激しい場合敵対関係は強まり事業の継続は容易でなくなります。

 

その敵対関係が強まる要因として以下のポイントが挙げられるでしょう。

 

・業界内の同業者が多い
・同程度の事業規模の事業者が多い
・業界の成長率が低い
⇒市場規模が大きくなる速度が遅い場合に業者が多いと競争は激化しやすいです。
・在庫費用や固定費が構造的に高い
⇒業界内の企業の費用構造で在庫費用や固定費が高い場合、費用の回収のために値引販売やプロモーションが注力され競争が激しくなります。
・差別化が困難
⇒商品・サービスで差別が困難な場合、価格競争などに陥りやすいです。

 

3)代替品の脅威

「代替品の脅威」とは、現在の商品・サービスが別のものに置き換わることによるリスクを意味します。別の商品・サービスが既存のもの以上の価値(価格や機能等)を提供できる場合、既存のものはシェアの維持が困難になり市場からの退出を強いられることになるのです。

 

なお、代替品の脅威の程度は以下のような点が判断材料になります。
・代替品が、既存のものよりも性能・価格等の面で上回っているか

 

・代替品が、高収益を確保している業界から提供されているか
⇒高収益の業界側はコスト競争力が高いため、既存の企業が不利になります。

 

4)買手の交渉力

この買手とは自分の業界が提供する商品・サービスを購入する顧客のことで、自分の業界にとっては販売する相手です。買手は品質・価格・納期などの面で売る側に様々な要望を出してくるため、買手の交渉力の程度により業界が有利にも不利にもなります。

 

なお、「買手の交渉力」は「買手の圧力」と表現されることもあります。買手の交渉力の程度は以下のような点が影響するでしょう。

 

・買手の数や購買量の程度
⇒買手が少ない場合、1回の購入が多い場合などでは買手の圧力は増します。

 

・買手にとっての提供物の重要度
⇒売手が提供するものが、買手にとって重要度が高い場合、買手の圧力は弱まり、低い場合は高まるでしょう。

 

5)売手の交渉力

この売手とは自分の業界に商品・サービスを提供する側の業界およびその事業者のことです。従って、自分の業界は購入する側になります。また、「売手の交渉力」は「売手の圧力」とも表現され、売手と買手の立場の状況により売手からの圧力の程度が異なってきます。

 

その売手の交渉力の程度は以下のような点が影響するでしょう。

 

・売手の商品・サービスの差別化の程度
⇒差別化の程度が高く、買手である自社での必要性が高い場合、売手の交渉力は高まります。つまり、売手の方が価格や納期などの面で強気に出てくるケースが多いです。

 

・売手の数の程度
⇒需要に対して売手が少なければ圧力は高まり、買手は売手の販売方針などを受け入れることが余儀なくされます。売手が多ければその逆になるでしょう。

 

②5フォース分析の例

5フォース分析でハンバーガー業界の状況を概観してみましょう。
*5フォース分析は、自社のビジネスの内容に合わせて(自社ビジネスから見た)5つの力関係を分析しますが、下記の例では各分野の状況を示しています。

 

1)新規参入の脅威

ハンバーガー業界では大きな市場シェアを占める大手がいくつか存在しますが、マクドナルドのような大手の新規参入は多いとは言えません。店舗数や価格面に加え、ブランド力も高いため同社の類似の規模を目指す新規参入は困難な状況です。

 

ただし、味やメニューなどでの差別化は可能であるため、小規模な事業で参入できる余地は小さくありません。

 

2)業界内の競争の度合い

大手では、マクドナルド、モスフードサービス、ロッテリア、フレッシュネス、ファーストキッチンやバーガーキング・ジャパンなどがあります。他には独自性の高い「手作りハンバーガー」などの小規模店を展開する事業者も多いです。

 

大手の場合多店舗展開でリーゾナブルな価格で商品を提供しているため、同じ業態の同業者は規模の経済がはたらかないと経営は厳しくなります。そのため、大手に属する企業同士では何らか(メニュー、味や材料等)の差別化で対応するケースが多いです。

 

小規模店の場合、コスト競争力やブランド力で劣るため、手作りやこだわりの材料・メニューなどの面で大手との違いを出しニッチなニーズに対応するケースが多く見られます。

 

3)代替品の脅威

ハンバーガーはファーストフードの代表格ですが、他のファーストフード業界や外食産業などが代替品の脅威になるでしょう。

 

気軽に軽い食事を低価格で提供したいハンバーガー店の場合、牛丼店、ラーメン店や宅配ピザなどの外食産業がライバルとなりますが、違うタイプの新たな業態が登場する可能性も低くありません。

 

また、コンビニなどがドーナッツのようにハンバーガーの販売に力を入れればこれも大きな脅威になり得ます。

 

4)買手の交渉力

ハンバーガー業界の主な買手は消費者です。もちろんスーパーマーケットなどの事業者へ販売する場合、買手は食品販売店などになります。

 

買手を消費者とする場合、どの層の消費者を相手にするかで商売のやり方が異なってきますが、手軽に安く買いたい消費者には低コストへの圧力が高いです。

 

一方、味にうるさい、新しいメニューを重視するといった消費者は独自性やこだわり感での圧力が高まります。

 

食品販売店を対象とする場合、競争相手の数にもよりますが低コストや多頻度納品などへの圧力が高まる可能性があるでしょう。

 

5)売手の交渉力

ハンバーガー業界への売手は、お店にパンや肉・野菜・小麦粉などの食品を提供する業界や企業です。大手の場合、1回の購入量が多くなるため、売手からの圧力は弱まります。

 

一方、個人店などの零細企業の場合購入量が少なくなるため、圧力は高まり売手の要望を聞き入れざるを得ないケースも多くなるでしょう。特に特殊で入手しにくい食材・食品などを購入する場合、圧力が相当高まる恐れも生じます。

 

 

2-3 SWOT分析

 

①SWOT分析の概要

SWOT分析は、外部環境と内部環境に分けて各々自社にとってどういう状況にあるのかを確認する最もポピュラーな環境分析手法です。

 

具体的には、外部環境は「機会」と「脅威」の観点で、内部環境は「強み」と「弱み」の観点で分析します。機会と強みは自社にとってのプラス要因、脅威と弱みはマイナス要因と考えて当てはめるとわかりやすいでしょう。図式にすると以下のような感じです。

 

プラス要因 マイナス要因
内部環境 強み(S:strength) 弱み(W:weakness)
外部環境 機会(O:opportunity) 脅威(T:threat)

 

内部環境は自社の経営資源、事業の取り組み方(遂行方法)や組織・組織運営などが対象であり、強みとしては競争優位性の資源(生産規模、店舗数、自社開発の設備等)、得意とする能力(生産技術力、設計力、開発力、営業力や情報発信力等)、協力者・支援者、ブランド力や人材の豊富さ、立地やネットワーク(サプライチェーンや販売チャネル等)などです。

 

弱みは自社の弱点となる部分で、強みで挙げた資源や能力などで同業他社に劣る部分(逆の内容)になります。

 

外部環境はこれまでの環境の内容で紹介した内部(自社)環境を除くすべてが対象です。つまり、マクロ環境全体と自社を除くミクロ環境についての分析です。具体的には、規制緩和、消費税率、景気動向、人口統計、社会問題(少子高齢化等)、テクノロジーの動向(DX等)、文化・ライフスタイル(流行やブーム等)などになります。

 

そのため、外部環境の対象は広範囲となるので、重要な要因が漏れないように注意しなければなりません。

 

外部環境の分析を丁寧に行うには、先に挙げたPEST分析、ミクロ環境分析(自社、顧客、競合先の3つでの分析=3C分析)や5フォース分析を行うのが望ましいです。しかし、全部するのは手間と時間がかかるため、各分析の要因の項目を確認して漏れが出ないように利用すればよいでしょう。

 

以上のようにSWOT分析は外部環境と内部環境について、プラス面とマイナス面からみるものですが、外部の機会・脅威と自社の強み・弱みとを組み合わせて有効な事業の方向性を探るツールにもなります(クロス分析)。つまり、戦略の代替案を検討するのに役立つわけです。

 

具体的には、下表のクロス分析図を作成して戦略代替案を検討します。

 

機会 脅威
強み 自社の強みを活かして機会を捉え成長できることはないか? 自社の強みで脅威に勝る方法はあるか?自社の強みで脅威を機会に変えることができないか?
弱み 自社の弱みを克服して機会を捉えることができないか? 脅威が弱みに作用して最悪の事態を招かないようにする方法はないか(たとえば、撤退や他社との連携など)

 

②SWOT分析の仕方

環境分析は起業する時でも起業後何年か経ってからでも利用できるものですが、SWOT分析も同様です。起業時にはどのようなビジネスモデルを作りどのような戦略で事業を進めるための方向性と基本的な取り組み方を固めるのに利用できます。起業後はそれらの修正や変更を検討するのに有効です。

 

1)要因の列挙と整理

SWOT分析の行い方は、上記の通り外部環境と内部環境について、機会と脅威、強みと弱みを考えられるだけ列挙します。まずは参加者が思いついた内容を付箋などに記し、それをグループ化して項目内容まとめて最終的に下表の形で落とし込みます。

 

自社の強み(S)・・etc 自社の弱み(W)・・etc
外部環境の機会(O)・・etc 外部環境の脅威(T)・・etc

 

そして、SWOT分析の目的に合った項目をだけを残して整理します。具体的には、起業時のビジネスモデルや戦略代替案の作成のためや、起業後の戦略転換のためという目的で整理するわけです。

 

たとえば、今後の中長期の戦略を練り直す場合に、更なる事業拡大を図るため、新規事業を開発するため、○○分野への進出を図るためといった目的に合わせて要因を整理するとよいでしょう。

 

なお、強み・弱み、機会・脅威の内容は自社の状況やとる戦略・ビジネスモデルによってその捉え方が変わってくる点に注意が必要です。たとえば、少子高齢化という社会現象は通常需要の減少に繋がるケースが多いため脅威となる要因になりそうですが、介護サービス等の業界では逆に機会になります。

 

また、若手人材が少なく社員の高齢化という状態は一般的に弱みとして捉えられるケースが多いですが、中高年齢層をターゲットとするサービスなどでは逆に強みになるケースも少なくありません。

 

このようにSWOT分析の要因を列挙し整理する際には、その目的やビジネスモデルの内容などにマッチする形で、重要性の高い要因を採用するようにしましょう。

 

2)クロス分析

目的に合わせた情報を整理できたら次はクロス分析へ落とし込んでいきます。クロス分析はSWOT分析で得られた現状把握の結果から戦略代替案を導くための有効な手段です。

 

現状の結果を、強み×機会、強み×脅威、弱み×機会、弱み×脅威の4面で整理し有効な事業の方向性や戦術などを検討していきます。強み×機会が主要な戦略となり、残りの3面がサブのオプション戦略として採用されるケースが多いですが、実際にどうなるかはその企業の状況次第です。

 

機会 脅威
強み 強み×機会
・強みAと機会イの組み合わせ
・強みBと機会ロの組み合わせなど
強み×脅威
弱み 弱み×機会 弱み×脅威

 

 

2-4 環境分析の必要性

今まで確認してきたように環境分析を行うことによって、今後の事業をどのようにすればよいかの方向性や取り組み方を把握できるようになります。つまり、環境はビジネスを行う上での重要な前提条件であることが分かるはずです。

 

従って、自分がやりたいビジネスを開始する際にどの内部環境と外部環境が整っていれば、事業として成立し成功できる確率を高められるかを検討できます。また、その条件が整った時点が起業や事業の修正・変更のタイミングとして見ることも可能です。

 

たとえば、起業の際にどのようなビジネスを行っていくかというモデルや戦略を描くためにその前提として環境分析を行います。そして、自社・自分の強みで外部環境の機会を捉える方向でビジネスを組み立て、ビジネスモデルを作りあげていくのです。

 

後は戦略に沿ってビジネスモデルを具体的に進める実行方法を考案し推進していくことで起業が現実化します。ただし、起業時には戦略に採用した環境要因についての確認・評価が必要です。

 

機会としての要因の量や質が十分か、本当に機会となり得るか、といったチェックが不可欠で、強みについても同様に行う必要があります。そして、再チェックで環境要因が十分に妥当と評価できた時が起業のタイミングとなるわけです。

 

具体的なクロス分析や戦略代替案の導出のやり方は次のところで確認しましょう。

 

 

3 起業時の環境分析の仕方とタイミングの取り方の例

起業時の環境分析の仕方とタイミングの取り方の例

 

SWOT分析の仕方について例に挙げ、どのようなタイミングで事業を始めるかについて説明しましょう。

 

 

3-1 SWOT分析の仕方の例

飲食業(ファーストフード)での起業を想定して、SWOT分析のやり方を紹介します。

 

①SWOTによる環境分析

内部環境である自分の状況や検討している事業に関わる外部環境を分析します。ファーストフード事業で起業するという目的で要因を思いつくままに列挙し、重要要因をまとめて整理することが重要です。
*その結果が以下のような要因で整理できたとします(仮定)。

 

●自社・自分の強み
A:こだわりの食材・メニューが好評のハンバーガー店での勤務経験があり、自家製パンのノウハウがある
B:アイデアを活かしたメニュー開発が得意である
C:地域特産の食材を入手できる人脈がある
D:車の運転が好きで、キッチンカー等の改装が得意な整備工場と付き合いがある
E:イベントやスポーツに興味がありその開催場所などをよく知っている
F:ホームページの開設やインターネット通販の経験がある

 

●自社・自分の弱み
V:自己資金が少なく多額の融資を受けるあてがない
W:フランス料理などの専門料理は得意でない
X:食材を大規模店のように安価で入手できる購買力がない
Y:店舗の立地などを含め設置に関する知識は少ない
Z:店や料理人としての知名度が低い

 

●外部環境の機会
イ:新型コロナ禍でテイクアウト、デリバリーなどの需要が期待できる
ロ:近隣にイベント会場、スポーツ場、オフィス街、学校などがある
ハ:新型コロナ禍で飲食業からの退出者が増え新規参入者が少ない
ニ:新型コロナ対策で屋外での営業や販売の需要が期待できる
ホ:手作りのハンバーガー店や石窯焼きピザ店など独自性の高い店が近隣に少ない
ト:手作り、こだわり、創造性の高い商品を求める顧客層が存在する

 

●外部環境の脅威
チ:新型コロナ禍で店舗内でのサービス提供が厳しい
リ:新型コロナ禍でイベントやスポーツの会場で入場制限があり来場が減少している
ヌ:新型コロナ禍でテレワークの導入が進められ通勤者が少なくなっている
ル:学校でのオンライン授業や大学生の休学者の増加で出席者が少ない
オ:大手のハンバーガー店、ドーナッツ店、ピザ店などが近隣にも多い

 

②戦略代替案の検討

次にファーストフード店を起業する目的でクロス分析を行いますが、まずは上記のSWOT分析の内容を簡単にまとめてみましょう。

 

自社の強み(S)
A:自家製パンを使った独自性の高いハンバーガーの提供が可能
B:メニュー開発が得意
C:地域特産の食材の入手が容易
D:車を利用した営業が可能
E:イベントやスポーツ等の開催場所に精通
F:インターネット通販が可能
自社の弱み(W)
V:多額の資金調達が困難
W:フルの専門料理の対応は困難
X:食材を安価で入手するのは困難
Y:店舗の設置に関する知識が少ない
Z:コスト競争力が低い、ブランド力なし
外部環境の機会(O)
イ:テイクアウト、デリバリーなど内食の需要に期待
ロ:近隣に多様な顧客層が存在
ハ:外食産業全体でライバル減少
ニ:屋外営業に対する需要に期待
ホ:独自性の高いライバルが少ない
ト:こだわり等を求める客層もいる
外部環境の脅威(T)
チ:店舗内での営業は困難
リ:イベント等での需要は減少
ヌ:オフィス街での需要は減少
ル:学校等での需要は減少
オ:大手外食産業のライバルは多い

 

・上記をクロス分析で事業の方向性や方策を検討

 

機会 脅威
強み

強み×機会
①A・B・C×ハ・ホ・ト:
独自性や独創性で大手外食産業と差別化を図る

 

②A・B・D・E×ロ・二:
キッチンカー・屋外サービスで多様な顧客に対応する

 

③D×イ・二:
キッチンカーで屋外需要やテイクアウトの需要を捉える

 

④F×イ・二・ト:
インターネット通販で販路を広げ多様な需要をカバーする

強み×脅威
①D×チ・リ・ヌ・ル:
キッチンカーでの営業で店舗営業の自粛、営業規制等に伴う需要減をカバーする

 

②A×オ:
独自性・差別化で大手ファーストフード店のコスト力やブランド力に対抗する

 

③F×チ・リ・ヌ・ル:
インターネット通販で各種の需要の落ち込みをカバーする

弱み

弱み×機会
①V×イ・二:
資金負担が比較的小さいキッチンカーでの営業で店舗外等での需要を捉える

 

②W・X・Z×ハ・ホ:
大手とのコスト面での競争は避け、独自性等で差別化する

弱み×脅威
①V・Y×チ:
コロナの影響を受ける店舗営業でなくキッチンカーで営業する

 

②Z×オ:
コストやブランド力で勝てないため大手と同じ業態は避ける

 

以上のような戦略代替案を作成できました。これらから事業のコアとなる基本戦略およびビジネスモデルを決定していき、サブのオプション戦略も続いて設定するという流れになります。

 

基本戦略は「強み×機会」を中心に策定されるケースが多いですが、上記の例の場合も当てはまるでしょう。具体的には、「強み×機会」部分の内容をまとめる形で考えるとよいです。

 

●基本戦略

独自性や独創性を重視したハンバーガーを中心としたファーストフードの提供をキッチンカーで行い、コロナの影響を回避しつつ屋外需要等を取り込み大手外食産業と差別化を図る

 

●サブの戦略

新型コロナによる需要の落ち込みには、営業場所の工夫(曜日や時間帯ごとの営業場所の柔軟な変更)やインターネット通販でカバーする

 

 

3-2 環境要因から判断するタイミングの取り方

事業の開始の判断は、「環境分析⇒戦略」の作業を終えてからになるため、戦略を規定した環境要因が整うことが、事業開始の条件でありタイミングになるわけです。

 

その環境要因が整う条件について、上記の例に当てはめて説明すると次のような内容が想定されます。

  1. 1)独自性や独創性の高いハンバーガー等のメニュー作りや生産が可能か
  2. 2)提供商品やメニューが顧客に受け入れられるか
  3. 3)材料等の入手は確実か
  4. 4)大手商品等との価格差を一定以内に抑えられるコストが実現できるか
  5. 5)需要に見合った供給能力を保有できるキッチンカーを予算内で入手できるか
  6. 6)ビジネスが成り立つ需要が本当にあるか
  7. 7)インターネット通販できる商品・メニューを開発できるか

 

そして、事業を開始するかどうかの可否判断は、これの項目が満足できる状態にあることが前提になります。たとえば、以下のような判断が必要です。

 

1)
アイデアを活かしたメニュー等を開発し、試作まで完了している

 

2)
試作した商品・メニューのテストマーケティングを行い良好な結果を得ている

 

3)と4)
食材の供給業者と交渉して対象食材の確保と目標コストの実現に目途が立っている

 

5)
キッチンカーの製作業者と交渉して仕様を決定し予算内で購入できる

 

6)
曜日・時間帯ごとの営業場所の人通り、イベント等での予想来客者などの見込客数が十分である

 

7)
インターネット通販できるサイトの構築、商品・メニューの開発に目途が立っている

 

上記の他にも様々な環境要因が条件として起業の条件となりますが、以下のような項目は特に注意が必要です。

 

・許認可の取得や届出
キッチンカーでの販売では、営業する場所を管轄する保健所での営業許可証の取得が必要になります(「飲食店営業許可証」、「喫茶店営業許可証」や「菓子製造業許可証」等)。

 

・ライバルの競合状況
⇒同じ業態の競合業者の数やその競争力を把握しておき、自社が勝てる目途がついていることが必要です。

 

こうした環境条件を挙げ、クリア出来る目途が立った時が起業するタイミングと考えればよいでしょう。

 

 

4 法人化のタイミング

法人化のタイミング

 

ここでは個人事業からいつ法人化するかというタイミングに関する重要なポイントを説明します。

 

法人化のタイミング

 

 

4-1 税金負担が重くなる時

事業が順調に拡大していけば売上が増え利益も多くなるため、事業主としての所得も高額になっていきますが、個人の所得税は累進課税(5%~45%)であるため、所得が増えるほど税負担は増します。

 

他方、法人の場合、その利益にかかる税金は法人税や住民税などいくつかあり、概ね全体としての実効税率は30%程度です。ただし、法人の形態、資本規模や業績などにより実効税率は30%よりも低くなることがあります。

 

税金の計算はやや複雑ですが、個人所得が高額(営業収入が600万円以上等)になれば、法人化したほうが節税できる可能性が増してくるのです。もちろん個人事業でも節税できる余地が残されている場合(たとえば、家族の青色事業専従者等)があれば、法人化を先送りしたほうが良いケースもあります。

 

また、消費税の納税義務が生じる時点を考慮することも重要です。消費税は個人も法人も納税する義務がありますが、中小事業には特例が適用されます。

 

具体的には、「課税期間に係る基準期間(個人事業者の場合はその年の前々年、事業年度が1年である法人の場合はその事業年度の前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下の事業者は原則としてその課税期間の納税義務が免除される」というものです。

 

なお、この特例は個人事業主として適用された後、法人になった場合でも新たに適用されるため、最大で4年ほど免除されることもあります。個人事業として売上高が低いうちに法人化すれば、個人事業での免税期間をあまり活用することなく失うことになるため法人化の時期を考慮することは重要です。

 

税負担は各企業の状況によって異なるため、税理士などに相談して検討するようにしましょう。

 

 

4-2 許認可や信用の面で必要となる時

個人事業と法人とを比較すると、一般的に法人のほうが社会的信用は高いと言われています。もちろん名前だけが株式会社であっても事業内容や組織運営などが個人と変わらない程度であれば、世間から十分な評価を得ることはできません。

 

しかし、株主構成、資本金額や組織管理(計画に基づく事業運営、組織規定等による組織運営等)がしっかりとした内容であれば、取引先や金融機関などからの評価は高くなり取引や資金調達で有利になり得ます。

 

また、行政等の事業で許認可が必要となる場合は多いですが、最初から法人で取得する方が有利になることもあります。たとえば、建設業許可は個人でも法人でも得られますが、個人事業主の場合はその個人だけに与えられるため、その個人が亡くなれば家族などがその許可で事業を継ぐことができません。

 

他方、法人の場合は法人で取得するため、社長がなくなってもその許可は要件を満たしている限り有効です。このように事業を行う上で、取引を大きくする上で法人化したほうが有利になるなら、そのタイミングで法人化する意義があります。

 

 

4-3 社会保険等の経費負担を吸収できる時

法人化すると社会保険への加入が義務付けられるため、その費用負担に耐えられる財務基盤を確保できる時点が法人化のタイミングの1つになります。

 

個人事業の場合、常時雇用する従業員が5人未満なら社会保険への加入は任意ですが、5人以上になれば加入義務が生じますが、法人では従業員の数に関係なく加入義務があります。

 

具体的には健康保険と厚生年金への加入により、その保険の掛金を会社と従業員とで折半で負担することになるのです。個人事業の場合、事業主および従業員は通常各々本人で国民健康保険と国民年金の掛金を負担します。

 

法人化して社会保険に加入すると、従業員は少なめの掛金でより手厚い保険サービスが受けられることになりメリットがありますが、会社にとっては掛金の半分を負担するため従業員数が多くなるほど資金負担は重くなります。

 

従業員の福利の観点から「法人化⇒社会保険への加入」は重要ですが、資金繰りなどの影響がないことが加入の判断として必要です。

 

 

4-4 有能な人材を確保したい時

法人化したほうが人材を確保しやすくなるため、より有能・即戦力となる人材を必要とするようになってきた時が法人化のタイミングの1つになるでしょう。

 

一般的に法人化したほうが社会的信用は高まりやすくなります。また、法人のほうが事業基盤の安定性や従業員の待遇・福利の面で優れているケースが多く、求職者には魅力に映るのです。

 

簡単に言うと、法人のほうが企業としての安定性・成長性が期待でき、より望ましい待遇を受けられやすいと認識されます。上記のような理由で個人事業よりも法人を選ぶという傾向があるため、人材確保の点で法人化を検討することも必要です。

 

 

5 まとめ:起業時・会社設立時のタイミングと環境の注意点

まとめ:起業時・会社設立時のタイミングと環境の注意点

 

最後に起業や会社設立して事業を始める場合のタイミングとその前提となる環境についての重要な注意点を3つ説明しましょう。

 

●戦略・ビジネスモデルの前提となる環境を見極める

ビジネスの成功にはそのビジネスに適した戦略やビジネスモデルの策定が不可欠ですが、その戦略やモデルの善し悪しは環境要因を的確に特定できるかに依存します。

 

外部と内部の環境要因から自分のやりたいビジネスに関わる重要な要因を把握し、その要因を活用することで成功できる仕組みが完成できるのです。言い換えると起業の成功は環境要因の見極めと活用に直結するため、環境要因特定は漏れなく的確に行わねばなりません。

 

●環境が整わない時、起業は見送る

環境要因の特定と活用がビジネスを左右するため、環境要因が整わない場合起業は見送るべきです。つまり、戦略等の前提条件となる環境要因が揃った時が起業のタイミングとなるため、整わない状況はその時ではないということになります。

 

各環境要因について満足できる水準、事業が有利になる水準などを定め、その水準に達したかどうかを確認の上進めるようにしましょう。

 

●環境の機会や脅威は立場次第でどちらにもなる

各事象を一般的に捉えると機会と脅威のどちらかに特定されるケースは多いですが、事業者の立場によりそのどちらにもなり得ることに留意しておくべきです。

 

たとえば、パンデミックは経済や社会にとっては脅威に映りますが、事業者のタイプによっては機会にもなり得ます。具体的には、今回の新型コロナでは飲食サービス業など壊滅的なダメージを受けた業界がある一方、「巣ごもり需要」で大きく業績を伸ばした業界・企業も少なくありません。

 

任天堂はヒット商品による影響も大きかったですが、巣ごもり需要を背景として2021年3月期の連結業績で過去最高益を予想しています。機会や脅威は自社や取り組む事業によりどちらにでも傾く点に留意して分析するべきです。

 

以上の内容を参考に、起業・会社設立する際の適切なタイミングを測り、事業を有利に進められるように取り組んでみてください。


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