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起業後初めての決算!知っておきたい決算の準備と注意点とポイント解説

起業後の事業は順調であるものの、目の前に迫った決算をどのように対処したらよいかと悩んでいる方もおられるしょう。

 

ここでは起業後間もない会社などが決算について何を準備すればよいかなどを説明します。決算を適正に実施するための知識や方法などの準備、そのためのポイントや注意点、納税にかかわる罰則等を紹介しましょう。

 

 

1 決算を適正に実施しない場合の問題

決算準備の前に、決算が適正に行われなかった場合、どのような問題があるのでしょうか。

 

 

1-1 確定申告での問題

決算への備えを怠ると、たとえば確定申告の期限に間に合わないという事態におちいり、罰則を受ける可能性があります。

 

決算を適正に完了するには1会計期間での企業における取引を漏れなく記録・整理したうえで適切な決算整理を行い、決算書を作成する必要があります。そして、そのうえで税務署に提出する確定申告書を作成の上期限までに提出することが税法上求められています。

 

しかし、起業後間もない会社では、毎日の取引の正確かつ漏れのない記帳、領収書等の管理などが適切に実施されていないケースも少なからず見られるのです。その場合、期末の決算業務は円滑に進まず想定外の時間がかかり確定申告の期限に遅れるといケースもあります。

 

実際に決算期日を過ぎても決算業務がはかどらず、慌てて税理士等の会計の専門家や事業者へ相談するケースもあります。そして、もし確定申告の期限に間に合わない場合や過少に申告する場合などは、第3章で説明するペナルティを受けることになるでしょう。

 

 

1-2 税金での問題

節税に対する意識をもって決算業務に取り組まないと必要以上の税金を納めることになりかねません。

 

税金は益金から損金を差し引いた所得に対して課税されることから適正な納税額の算定には適正な損金計上が求められます。しかし、決算および決算に至るまでの会計処理で損金が適切に計上されなければ、結果的に利益が過大或は過少に算定され適正な納税額にならいないのです。

 

特に起業後間もない時期ではキャッシュの確保が重要となりますが、損金計上できるものを見落とすことで納税額を増やすと納税資金の確保で苦労する羽目になるので注意しましょう。
(節税等に関する具体的な内容は「3 初めての決算の注意点、重要ポイント 」を参照)

 

 

1-3 資金調達での問題

決算への取り組みが適正でない、あるいは決算等での会計管理が不十分である場合資金調達などで問題が生じやすくなります。

 

①財務管理面での評価の低下

銀行などの金融機関は、会計を含むマネジメント体制が整備されているかを重視し、その点を評価して融資の判断を行うケースが少なくないです。

 

特に財務管理面については厳格に査定され、会計ルールにのっとって企業の取引が適正に処理され営業成績や財政状態が決算書に反映されているかが評価されます。損益計算書や貸借対照表の数値の内容はもちろん重要ですが、それ以上に適正に処理され信頼できる数値であるかどうかがチェックされるのです。

 

そのため決算書に不適切な部分が確認されるとその信用度は一気に低下し、融資を受けることが難しくなるでしょう。

 

②月次試算表等の要求が対応困難

融資を金融機関に求めるさい、彼らから月次試算表等の提出の要求を受けることがありますが、月次決算をしていない場合、その対応は容易ではありません。

 

月次決算は法的に課せられる業務ではないですが、期中の適切な会計処理の実現を通じて期末決算業務の負荷の軽減ならびに適正な期末決算業務の遂行に貢献します。また、月次決算を行っていることで金融機関から月次の試算表を求められても直ぐに提出できます。逆に実施していない会社はその要求に対して迅速に応えることは難しいといえます。

 

月次決算を行うことで多くの利点が得られますが、月次決算に取り組んでいない会社の場合、金融機関からの評価が下がることもあるわけです。

 

 

1-4 事業活動での問題

期末決算が適正に実施されない、月次決算が行われていない場合、期中・期末の経営状態の正確な把握が遅れ、適切な経営や意思決定ができない・遅いなどの問題が生じやすくなります。

 

期末決算業務が遅れている場合、期末および次期になってからの現金の動きが正確に掴めず、商品の購入や納税の資金不足で慌てて調達に走り回ることもあるのです。

 

逆に利益の見込みが遅くなり、来期の事業に寄与する資産を購入できる資金的余裕があったにもかかわらず投資できなかったという事態も十分に起こり得ます。

 

月次決算をしている場合は、企業全体だけでなく各事業、商品、店舗や担当者ごとの成績を把握することが可能です。その結果、早めに悪化の傾向に対して対策が打てるため業績の維持・向上が期待できます。

 

しかし、逆に月次決算をしていない場合は、業績の悪化や問題が顕著になってからでないとそれらは把握しにくいです。また、どの事業、商品、店舗、担当者が悪いのかを特定することも簡単ではありません。そのため結果的に対応が遅れ、原因追求も不十分となりやすく問題解決までの時間が長くなってしまいます。

 

このように決算(決算業務)への備えが足りない、取り組みが不適切である場合などでは経営管理上の問題が生じやすく、解決が難しくなってしまうのです。

 

 

2 決算の準備

ここでは起業後間もない企業などが、第1章で確認したような問題を生じさせないために、どのように決算を準備すべきかを説明します。

 

 

2-1 決算とは

まず、決算を適切に準備するためには決算のことを把握するようにしましょう。

 

決算は企業の1会計年度における営業成績や財務状態を明らかにして確定させる行為であり、会社法や税法上に基づき企業に課せられています。

 

具体的には、企業活動の収益・費用、購入・売却した資産、借入れた負債、調達した資本金などの帳簿情報を損益計算書や貸借対照表等の財務諸表として作成する手続ときとなります。また、広義では税金を計算して納税までの作業がその範囲に加えられます。

 

簿記における決算は、期中取引の仕訳、総勘定元帳への記入・集計、試算表の作成、決算整理仕訳、精算表の作成、損益計算書・貸借対照表の作成などの一連の手続を意味します。企業の実際の決算では、これらの会計ルールに基づく手続が実施された上で財務諸表等の決算書の提出、税務申告が法的に求められているのです。

 

たとえば、法人税法第74条では、「内国法人は、各事業年度終了の日の翌日から2か月以内に、税務署長に対し、確定した決算に基づき一定の事項を記載した法人税の確定申告書を提出しなければならない」となっています。つまり、決算は企業に対して強制的に要求されるものであり、避けて通ることはできないのです。

 

株式会社等では決算書類の株主総会への提出、上場企業では決算発表なども求められています。ほかにも金融機関等では融資の際に決算書類の提出を依頼先に求め、政府機関等では補助金などの交付のさいに申請先に決算書類を求めることがあるのです。

 

さらに決算業務の集大成ともいえる決算書は企業の経営状態を示すデータであるため、分析することで業績の向上・拡大に向けた経営の実現に利用できます。つまり、企業の経営管理上きわめて重要な資料であり、活用しなくてはならないものなのです。

 

 

2-2 決算申告に必要な書類

会社は決算ごとに税務署などの役所等へ決算報告書や税務申告書(法人税申告書、消費税申告書、地方税申告書など)を提出しなければなりません。ここではこれらの書類について説明します。

 

①決算報告書

決算報告書(決算書)とは、決算手続が完了して作成される各種の書類の総称で、株式会社等は毎年会計帳簿に基づき作成の上、各種機関へ開示・提出しなければなりません。

 

決算報告書の各種書類の内容や呼び方などは適用される法律により次のようになっています。

 

法律 会社法 税法 金融商品取引法
呼び方 計算書類 計算書類等 財務諸表
提出先 株主総会等 税務署 内閣総理大臣
書類の内容 貸借対照表
損益計算書
株主資本等変動計算書
個別注記表
貸借対照表
損益計算書
株主資本等変動計算書
貸借対照表
損益計算書
株主資本等変動計算書
キャッシュフロー計算書
附属明細表

 

②税務申告書

税務申告書とは、上記の決算書をもとに納税額を算定し申告するための各種の書類のことです。具体的には、法人税申告書、消費税申告書、地方税申告書(東京都の場合は都民税・事業税申告書)であり、個人事業主は所得税申告書を作成して提出しなければなりません。

 

・法人税申告書

法人税申告書は「別表1」から「別表19」まである法人税の申告に使用される書類で、別表1が「各事業年度の所得に係る申告書(確定申告書)」です。別表1以外の別表は、申告書の「明細書」として使用されるもので、その申告書と明細書を合わせて法人税申告書と呼ばれています(*平成30年4月25日現在の内容)。

 

法人税申告書は、決算日の翌日から2カ月以内に勘定科目内訳書、決算報告書や法人事業概況説明書の書類(「確定申告書の添付書類」)とともに所轄の税務署に提出する必要があります。

 

・消費税申告書

消費税の申告に必要な書類が消費税申告書です。具体的には、「消費税および地方消費税の確定申告書」と「課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算表」になります。

 

なお、消費税申告書については、一定基準を満足する場合(納税義務がある場合)に提出する義務があり、該当しない場合は不要です。

 

・地方税申告書

地方税申告書とは、法人事業税と法人住民税を申告するために使用する書類で、提出先は各都道府県等になります。なお、支店や店舗などが複数の地域に渡って設けられ事業が行われている場合は分割して申告しなければなりません。

 

 

2-3 決算までの流れと決算手続の概要

ここでは決算を完了するまでの流れを簡単に説明します。主要な項目としては、以下の通りです。

 

①期中での毎日の取引の記録・整理
②決算整理
③決算整理後の手続
④決算書の作成・提出(決算報告手続)
⑤税務申告書の作成・申告
⑥納税

 

①から⑤までの手続を税理士等に依頼する場合でも経理担当者はもちろん経営者も適正な決算を実現するためには下記の内容を理解しておくことが望ましいでしょう。

 

①期中での毎日の取引の記録・整理

決算手続に入るまでの期中の会計手続としては、会計上の取引の把握と仕訳帳への記入、仕訳帳から総勘定元帳への転記までが対象になります。

 

期末の決算手続を円滑に進めるためにはここまでの処理が適切に実施されていることが重要です。期中取引に漏れがありそれが決算期日の前後に判明するようでは決算書の作成が遅れてしまいます。

 

また、仮勘定などで計上した項目が多いとその内容を確認するための手間と時間がかかり、この場合も決算業務を遅らせてしまうのです。

 

税理士等に決算業務を任せている場合でもこのような状態なら、税理士からの確認の問い合わせも多くなり決算手続は遅くなり余計なコストをもたらしかねません。

 

こうした事態を回避するには、取引が発生した場合の確実・迅速な記録や仮勘定などの使用の回避が重要です。伝票発行や記帳を税理士等に依頼している場合は、取引内容の連絡や領収書の送付などが迅速に実施できる体制・管理が求められます。

 

②決算整理前の手続と決算整理

決算手続での主要な作業の一つが決算整理で、期中取引の処理(仕訳)の修正、認識されていない取引の処理などが期末に実施されます。

 

まず、決算整理の前には総勘定元帳の各勘定科目の残高をもとに試算表が作成されます。各勘定科目の残高が転記された試算表の借方・貸方の残高合計が一致したのを確認してから決算整理手続に入るのがルールとなっているのです。

 

・債権および債務の残高照合、預金・借入金の残高の確認

売掛金や未収入金の債権、買掛金や未払金の債務を確定するために、総勘定元帳の各勘定科目を集計したあと、関係先への残高照合依頼書の送付が必要です。

 

また、預金・借入金についてはその残高を明らかにするため、関係の金融機関に残高証明書を発行してもらう必要があり、依頼しなければなりません。

 

これらの確認の依頼が遅れると決算書の作成に影響するので総勘定元帳を早く締め切り、迅速に依頼書等を送付するようにしましょう。

 

・決算整理事項の処理

決算整理事項には、以下のような内容があり速やかに処理することが求められます。

 

A 売上高の確定

まず、売上高を自社の売上基準に沿って確定させなくてはなりません。

 

当期に含まれる売上が漏れなく計上されているか、期末前の売上で自社の売上基準のルール通りに認識されているかなどをチェックし当期の売上を確定することが求められます。架空計上や不適切な押し売りなどは問題となるため、証憑書類(証拠書類)などによる確認も必要です。

 

B 売上原価の算定

利益および税額に直結する売上原価を適正に算定することが求められます。

 

商業や製造業などでは棚卸による期末資産の評価により売上原価が算定され、その売上原価は「期首商品棚卸高+当期商品仕入高-期末商品棚卸高」の式で求められます。つまり、期末商品棚卸高の「多い、少ない」の内容により売上原価が影響されるわけです。期末商品棚卸高が少ないほど売上原価は多く利益は少なくなり、結果的に課税所得額が減少し税金も少なくなります。

 

たとえば、期末の大売り出しなどの販売促進を実施すれば期末在庫は少なくなり、結果的に納める税額も少なくなります。このように期末在庫によって売上原価が適正にコントロールされると売上高の増加や税金の削減につながるのです。そのため、早めに期末在庫の状況を把握し適切な在庫量に確保する取り組みが求められます。

 

なお、期末在庫の確認は実地棚卸による実際の有高確認が必要です。

 

C 仮勘定の整理

仮受金や仮払金の仮勘定は適正な勘定に処理されるまでの一時的な処理として使用される勘定なので、決算では適正な勘定科目に振り替えなければなりません。

 

何カ月も前の仮勘定の内容を確認するのは手間と時間がかかるため、月を股がない処理が求められます。決算業務を円滑に進め作業を早めに完了させるためには毎月の振替処理が欠かせません。

 

D 経過勘定の整理

経過勘定とは、当期に属する収益・費用と次期以降に属する収益・費用とを区別する際に使用される勘定で、前払費用、前受収益、未払費用、未収収益があります。

 

たとえば、期中において前払いで支払っている家賃等を支払月で計上している場合などは当月の費用として処理する必要があり、そのために経過勘定が利用されるのです。当期中に支払った来期の費用分は当期の費用から除外し、前払費用として当期の資産に計上することになります。

 

ただし、金額が少なく重要性が乏しい項目については経過勘定科目として処理しないという選択も可能です。経過勘定の決算整理仕訳は多少手間がかかるため重要性の低い項目については税理士等に相談して、経過勘定として処理しない方法も考えるとよいでしょう。

 

E 各種引当金の設定

引当金とは、将来の費用または損失のうち、当期の負担に属する金額を当期の分の損益として処理した場合の貸方勘定のことを言います。

 

たとえば、当期に属する将来の貸倒れ分を見積り当期の貸倒れとして計上する費用科目は「貸倒引当金繰入額」で、その貸方の相手科目が「貸倒引当金」です。こうした引当金を設定することで適正な期間損益の実現が可能となり、適正な税額の算定にもつながります。

 

貸倒引当金以外には、退職給付引当金、賞与引当金などがありますが、その費用・収益が発生する可能性が低ければ引当金として認められなくなるので注意しましょう。

 

F 固定資産の減価償却

建物等の固定資産は収益に貢献する一方、時間の経過等で価値が減少するため、使用期間に対して取得原価を費用として分配させるのが妥当で、その手続きとして減価償却が使用されるのです。これも適正な期間損益を実現するために必要な手続きといえます。

 

なお、少額資産については一括償却できる特例制度があるので利益が多い場合には利用すると節税に有効です。タイプとしては3つあります。10万円未満の資産は即時償却が可能で全額損金算入できます。20万円未満の資産については3年間で毎年1/3ずつの均等償却による損金算入が可能です。

 

また、従業員1,000人以下の中小企業者等の場合、30万円未満の減価償却資産の取得について当該減価償却資産の合計額300万円までが全額損金算入(即時償却)できます*。なお、この中小企業者等に対する特例は平成31年度末まで変更なく延長されることが決定されました。

 

*「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」

 

G 有価証券の評価替え

株式などの有価証券は時価で売買されるため企業が期末に保有する有価証券も時価で評価される必要があり、帳簿価格を時価に修正しなくていけません(有価証券の評価替え)。

 

H 繰延資産の償却

会社設立費用などすでに支払った費用の効果が将来におよぶ場合、その費用を効果がおよぶ適切な期間に配分するために「繰延資産」として計上し、適切な期間に償却させます。

 

I 消耗品勘定等の処理

未使用の消耗品の期末棚卸残高は、当期の費用とはせず消耗品や貯蔵品勘定等で資産計上しなければなりません。

 

ただし、特定の消耗品について毎期一定の数量を取得し経常的に消費する場合には、税法上その消耗品は資産計上されなくてもよいことになっています。

 

J 現金過不足の処理

現金過不足勘定がある場合、決算にあたりそれを雑損益勘定に振り替えなければなりません。

 

期中で実際の現金有高と帳簿残高に原因のわからない差額が生じたさいには、帳簿残高を実際有高に合わせるため、「現金過不足」勘定で計上処理する必要があります。そして、原因が分かった場合には、その現金過不足を該当する勘定科目に振り替えるのです。

 

また、期末まで、すなわち決算日まで原因が不明である場合は、そのままにせず「雑損」または「雑収益」等に振り替えなければなりません。

 

現金過不足の状態を長期に放置していると原因の追究に手間がかかることも多いので、早めに処理するようにしましょう、

 

③決算整理後の手続

・精算表の作成

精算表とは、決算整理前残高試算表の内容に決算整理の内容を加え損益計算書と貸借対照表の状態にする手続をまとめた一覧表のことです。精算表は帳簿外として作成されますが、財務諸表を作成するうえでの基礎を提供し、その妥当性の確認に役立ちます。

 

・決算振替および帳簿の締切り

損益勘定が設定され、各費用・収益はすべて損益勘定へ、そして損益勘定で純損益が算定され資本金勘定へ振り替えられます。その後、仕訳帳や総勘定元帳などの各帳簿は締め切られるのです。

 

これらの作業のあとに繰越試算表が作成されることになります。

 

④決算報告手続(および決算報告書の作成)

今までの手続を無事完了できたなら次は決算報告手続として、財務諸表を作成します。財務諸表とは、貸借対照表と損益計算書のことですが、損益勘定から損益計算書、繰越試算表から貸借対照表を作成することが可能です。

 

そして、各提出先に必要な決算報告書が作成されることになります。

 

⑤税務申告書の作成・申告

すでに説明しました法人税申告書、消費税申告書、地方税申告書(東京都の場合は都民税・事業税申告書)の作成となります。

 

法人税の申告は、事業年度終了の日の翌日から2カ月以内が提出期限です。たとえば、3月決算の会社では5月31日が法人税申告書の提出期限になります。なお、特例により1カ月や4カ月の延長が認められるケースもあります。

 

消費税および地方消費税の申告期限は、法人の場合事業年度終了の日の翌日から2カ月以内です(申告期限・納期限が、土曜日、日曜日、祝日等の場合は、その翌日が期限)。

 

法人住民税・法人事業税の申告期限は事業年度終了の日の翌日から2カ月以内です。提出先は以下のようになります。

 

・法人住民税

都道府県民税は県税事務所等へ、市町村民税は市役所等への提出です。東京23区の場合は、両者を合わせて都税事務所への提出となります。

 

・法人事業税

法人事業税は県税事務所等への提出です。

 

・地方法人特別税

地方法人特別税が県税事務所等への提出になります。

 

⑥納税

法人税、法人県民税、法人市民税、法人事業税の納税は、事業年度終了の日の翌日から2カ月以内が期限です。

 

消費税の納税については、法人の場合は上記の税金と同様事業年度終了の日の翌日から2カ月以内が期限になります。たとえば、3月31日が決算日の会社では5月31日が納付期限となるのです。

 

 

3 初めての決算の注意点、重要ポイント

初めて決算を迎える会社や起業後間もない会社が注意すべき点や重要となる点を紹介します。

 

 

3-1 発生主義による記帳

日本の企業会計では収益・費用の認識基準は原則として発生主義とされています。そ理由は、損益計算書の作成において収益費用対応の原則がとられており、一定期間の適正な損益計算を実現するために発生主義が必要と考えられているからです。

 

ただし、費用については発生主義が適用され、収益については実現主義が適用されています(企業会計原則第二損益計算書原則および中小企業の会計に関する指針72.収益および費用の計上に関する一般原則による)。

 

以上のことから日本の会社等では発生主義による会計処理が多く適用されていますが、現金主義で収益費用を認識して処理されるケースも少なくないでしょう。その場合、企業の決算後の利益は適正な期間損益を反映したものとはいえず、決算手続において修正が必要となるのです。

 

自社の経理部門で期中および決算期の会計手続をしている場合は発生主義で処理するようにしましょう。なお、発生主義を採用するメリットをまとめると以下の点が挙げられます。

 

①適正な期間損益を実現した決算書等の作成

費用と収益を対応させ適正な期間損益を確保している決算書や税務申告書は信頼性が高くなります。

 

逆に現金主義が適用された申告書では、税務調査が入った場合などに指摘され修正申告が求められることもあるのです。また、金融機関からの融資の際に現金主義が適用された決算書を提出した場合、その信頼性や会計管理に疑問が持たれ融資先としての評価が下がりかねません。

 

こうした現金主義によるデメリットを被らないために発生主義をできるだけ採用することが望まれます。

 

②決算業務の負荷の軽減

現金主義会計を極力少なくすることで、決算業務の負荷を軽減していくことが可能です。

 

経過勘定科目など特定の科目について現金主義で処理されるケースは少なくないですが、その科目や処理回数が多いと決算業務での現金主義会計処理の修正手続が多くなってしまいます。この修正は慣れていないものにとっては多少手間がかかる作業なので、会社の経理担当者の負荷が重くなっていくのです。

 

また、決算手続を税理士等に依頼している場合は、その処理手続の工数が多くなり結果としてコストも増大しかねません。

 

そうした負荷やコストの増大を回避するためには、費用収益を発生した事実に基づく、またその費用を収益の実現に貢献した期間に応じて適切に対応させるという発生主義の処理が求められます。

 

③個人事業主での青色申告の65万円控除の適用

発生主義に基づき複式簿記で収益・費用等を記帳し青色申告する場合に65万円控除の適用が受けられます。しかし、現金主義の場合はこの適用が受けられません。

 

65万円の青色申告特別控除とは所得金額から最高65万円を控除できるという特例で、不動産所得または事業所得を得られる事業を営んでいる者が対象です。したがって、法人には適用されませんが、法人化する前の個人事業主にとっては魅力的な制度といえるでしょう。また、青色申告制度では法人とっても欠損金の繰越控除や特別償却・特別控除といった特典が得られます。

 

なお、青色申告の10万円控除の適用では特例により現金主義・単式簿記の記帳が認められるケースもあります。

 

 

3-2 税務申告書の作成

決算では決算書の作成のほか税務申告書の作成も必要です。

 

決算書には、その費用のなかで税務上損金として認められないといったケースが生じることがあるため、税額を決定するために税務申告書の作成が求められています。

 

たとえば、以下のような項目が「決算書では費用、税務上では損金でない」に該当します。

 

  • 法人税(事業税を除く)
  • 役員賞与(事前届出をする場合などは除く)
  • 賞与引当金や一部の貸倒引当金など
  • 貸倒損失(税務上の損金の要件を満足しない場合)

 

決算書の利益のなかで損金に該当しない費用を利益に加え、逆に益金に該当しない項目(決算書では収益、税務上は収益でない)を引いて所得を計算するために使用されるのが税務申告書です。

 

税務申告書の作成は一般的に税理士等に依頼されるケースが多いですが、自社自身で作成する場合は上記の点を正確に認識して作成しなければなりません。

 

 

3-3 節税や税制面の優遇制度の利用

起業して間もない時期で黒字を実現するのは容易ではないですが、黒字化の見込みがつけば早めに決算業務に取り組み節税対策を行い、キャッシュの確保に努めるべきです。また、税制面で有利となる制度もあるので調べて利用できるかどうか検討してみましょう。

 

①在庫調整による適正な売上原価の実現

商品の販売を行っている事業の場合、在庫の調整により売上原価が多くなれば利益は少なくなり納税額は小さくなるので、キャッシュの確保に有効です。

 

売上原価は「期首商品棚卸高+当期商品仕入高-期末商品棚卸高」の式で求められることから、期末在庫高が少ないと売上原価は大きくなり利益は小さくなります。逆に期末在庫を多くすると反対の現象が起こり利益は大きく納税額も増えるわけです。

 

そのため資金に余裕がある場合でも期末の在庫が増えるような発注は控えるべきで、できれば「期末在庫一掃セール」などの大売り出しを行い、在庫を減らすように努めましょう。

 

②固定資産の減価償却

固定資産のなかに減価償却し忘れているモノがないか、一括償却できるモノがないか確認し、対象のモノは確実に減価償却するべきです。すでに紹介した10万円未満の一括償却や「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」などが利用できます。

 

たとえば、パソコンなどの事務関連機器やソファーなどの事務用家具など30万円未満の取得があれば、特例の対象になるかどうかの確認が必要です。

 

なお、節税に有効な手段としては、決算賞与の支給、社員旅行の実施、来期に向けた広告宣伝の実施、固定資産の購入、経営セーフティ共済への加入などがあるので検討しましょう。

 

④その他の経費化

法人成りした個人が所有する車などを法人の業務で使用する場合、その車について個人と法人がリース契約を締結すれば個人は法人からリース料を得て、法人は賃借料として計上できます。つまり、個人は収入を得て法人は経費計上により節税が可能となるのです。

 

また、個人が業務で車を使用した場合のガソリン費用や高速料金も法人の経費として処理できます。なお、車自体の車検費用、修理費用、自動車税等の支出は個人の負担となりますが、個人が得たリース料に対する経費として処理することは可能です。

 

このように個人の資産で法人の業務に使用しているモノがあれば、税理士等に相談して経費化を考えてみましょう。

 

④所得拡大促進税制等の優遇制度の利用

所得拡大促進税制は青色申告書を提出している法人(または個人事業主)が、特定の要件を全部満足する場合に、雇用者給与等支給増加額の10%を法人税額(または所得税額)から控除(税額の10%(中小企業者等は20%)が上限)できる制度です。

 

このように起業間もない会社でも利用可能で納税において有利となる制度があるので、法人税額等を減らしキャッシュの支出を抑えるために利用を検討しましょう。

 

⑤青色申告制度

青色申告制度とは、一定の帳簿の備え付け、日々の取引の帳簿への記帳と保存に基づいて、正しい所得金額や税額を計算し、確定申告した場合に適用される税制面等の特典をもたらす制度です。法人の場合、個人事業主の青色申告制度とは多少異なりますが、個人以上の特典が得られるので起業後から直ぐに同制度へ申し込むべきでしょう。

 

・青色申告の申請

会社設立当初から青色申告制度を利用するためには、設立後3カ月か設立事業年度終了日のいずれか早い日の前日までに「青色申告の承認申請書」を所轄の税務署長に提出し、承認を受けねばなりません。なお、次年度以降に申し込む場合は適用したい事業年度の開始日の前日までの提出が必要で、1日でも遅れると適用されないので注意が必要です。

 

その承認の要件として、適用年度から複式簿記での取引の記録、総勘定元帳、仕訳帳、売上帳、仕入帳等の帳簿や貸借対照表、損益計算書等の作成が求められます。また、作成した帳簿書類、請求書、契約書、領収書等の証憑書類(証拠書類)は原則として7年間の保存が必要です。

 

・法人の青色申告のメリット

ⅰ 青色欠損金の繰越控除

青色欠損金の繰越控除は、毎期の所得を計算するうえで欠損金を翌年以降最大9年間繰り越すことができ、その間の黒字と相殺できます。

 

赤字を9年間も繰り越せることから起業後の赤字をその後の黒字で相殺できるので、赤字の年度でも費用を漏らさず適正に計上し、正確な欠損金を確定させることが重要です。

 

ⅱ 青色欠損金の繰り戻し還付

青色欠損金の繰り戻し還付とは、黒字で法人税を支払った期の翌期に欠損金を出した場合、その欠損金は前期に繰り戻されて前期の利益と相殺され、その法人税の還付が受けられる制度です。業績が不安定になりがちな起業後間もない会社にとってはありがたい制度といえるでしょう。

 

繰り戻し可能な期間は前1年間だけで、資本金1億円以下の中小企業だけが適用されます。ただし、資本金・出資金が5億円以上の法人の100%子法人等は適用除外となります。

 

ⅲ 各種特例制度の適用

青色申告制度の適用を受けていることで各種の有利な特例制度が受けられるようになります。取得価額の特別償却、法人税額の特別控除、取得価額の一定額までの損金算入などの特典を受けられる制度が用意されているのです。

 

既に説明した所得拡大促進税制、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例以外にも利用できる制度は少なくありません。たとえば、以下のような制度もあります。

 

A 地方拠点強化税制における雇用促進税制
B 中小企業技術基盤強化税制
C 中小企業等投資促進税制

 

ⅳ 更正および不服申立等の特例

青色申告法人は白色申告法人にはない更正および不服申立等の特例が受けられます。

 

白色申告法人では会社の状況(収益・費用、財産、販売等)から所得金が推計により課税されることがありますが、青色申告法人ではこの推計課税が制限されているのです。

 

また、青色申告法人では税務署から更正を受ける場合理由が付記されることになっており、更正について異議申立ができるほか異議申立なしに直接審査請求ができます。

 

 

3-4 申告期限と納付期限に関する罰則

申告期限と納付期限を守らない場合には以下のようなペナルティを受けることになるので注意しましょう。

 

①無申告加算税(加算金)

無申告加算税(加算金)とは確定申告書を期限までに提出できなかった場合に、国が納付すべき税額に一定割合の加算を課す税金のことで、課される金額は次のとおりです。

 

A 調査を受け期限後に提出した場合

新たに納付することとなった税金(増差税額)が50万円までは15%、50万円超からは20%を乗じた金額となります。

 

B 自主的に期限後に提出した場合

増差税額に5%を乗じた金額です。

 

なお、天変地異による災害など「正当な理由がある場合」や、「法定申告期限から1月以内にされた一定の期限後申告の場合」には不適用となるケースもあります。

 

②不申告加算金

不申告加算金は、期限までに申告されなかった納付すべき法人事業税額に対して都道府県が課す罰則的税金で、無申告加算税と同様の方法で加算部分が計算されます。

 

・期限後に自主的に修正申告(更正および決定があることを予知しなかった場合):
納付する税額に5%を乗じた金額

 

・調査を受けての期限後の申告の場合:
納付する税額(50万円まで)に15%を乗じた金額
50万円を超える部分には20%を乗じた金額

 

③過少申告加算税

過少申告加算税とは、確定申告の期限内に提出された申告書での納税額が過少である場合などに課される罰則的な税金です。

 

・調査の事前通知を受け自主的に修正申告する場合:
その申告による納付すべき税額に5%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は10%)を乗じた金額

 

・期限内申告後、調査により修正申告や更正がある場合:
その申告に基づいて納付すべき税額に10%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は15%)を乗じた金額

 

なお、正当な理由がある場合や更正を予知しない修正申告の場合(自分で気付いて自主的に申告)などでは不適用(加算税なし)となるケースなどもあります。

 

④重加算税

重加算税とは、確定申告の内容において隠蔽または仮装に基づいて過少申告があったと認められた場合に課される税金です。無申告加算税や過少申告加算税等に代わって課さることになります。

 

課される税額は、過少申告加算税等に代えて課される場合は、増差税額に35%が乗じられ、無申告加算税に代えて課される場合は40%が乗じられた金額です。

 

⑤延滞税

延滞税(延滞金)とは、税金が法定納期限までに納付されない場合の利息的な追加の税金で、納期限の翌日から納付するまでの日数に課されます。国が課すものは延滞税、住民税・事業税等の地方税に課されるものは延滞金です。なお、計算方法は両者とも同様の方法がとられます。

 

延滞税等の計算方法は以下のとおりです。

 

「納付すべき税額×延滞税の割合×期限から納付日までの日数÷365日」

 

国税庁のホームページによると、延滞税の割合は以下のように定められています。

 

A 納期限までの期間および納期限の翌日から2月を経過する日までの期間に対しては、年7.3%と「特例基準割合(※)+1%」のどちらか低い割合が適用され、下表のA部分の割合となります。

 

B 納期限の翌日から2月を経過する日の翌日以後に対しては、年14.6%と「特例基準割合(※)+7.3%」のいずれか低い割合が適用され、下表のBの部分の割合となります。

 

※特例基準割合は、「各年の前々年の10月から前年の9月までの各月における銀行の新規短期貸出約定平均金利の合計を12で除して得られた割合として各年の前年の12月15日までに財務大臣が告示する割合に、年1%の割合を加算した割合」のことです。

 

期間 割合
A B
平成26年1月1日から平成26年12月31日 2.9% 9.2%
平成27年1月1日から平成27年12月31日 2.8% 9.1%
平成28年1月1日から平成28年12月31日 2.8% 9.1%
平成29年1月1日から平成29年12月31日 2.7% 9.0%
平成30年1月1日から平成30年12月31日 2.6% 8.9%

 

⑥青色申告の取り消し

確定申告書が提出期限にまでに提出されなかった場合や期限後申告等で隠蔽・仮想があった場合などでは青色申告の承認が取り消しとなることもあるので注意が必要です。

 

青色申告は確定申告方法の1種で、個人事業主は「所得税の青色申告承認申請書」、法人は「青色申告の承認申請書」の税務署への提出によりその適用が承認されます。

 

青色申告には、青色申告特別控除(複式簿記での記帳で最高65万円の所得控除)、青色申告者の専従者控除(個人事業主での家族等の給与の経費算入)、欠損金繰越控除(法人は9年、個人は3年の欠損金の繰り越し)などのメリットがあります。

 

青色申告の承認の取り消し要件はいくつかありますが、確定申告に直接的に関わる点としては以下の2点です。
*国税庁の「法人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)」

 

A 所得金額や欠損金額で隠蔽・仮装がある場合

期限後申告で「決定」された所得金額や「更正」された所得金額について、隠蔽または仮装による「不正所得金額」が50%を超える場合に取り消しが適用されます。

 

また、欠損金の減額の更正において、その減少部分について隠蔽または仮装による「不正欠損金額」が当初申告した金額の50%を超える場合も取り消しとなるのです。

 

B 無申告または期限後申告の場合

無申告や期限後申告など、「2事業年度連続して期限内に申告書の提出がない場合」に取り消しとなります。このケースでの取り消しは、当該2事業年度目以後の事業年度が対象です。2事業年度連続で提出が間に合わなかった場合が対象となるので、1事業年度目が期限内提出できなくても次の年度で間に合えば取り消しは回避できます。

 

決算への準備が上手くいかず確定申告の期限に間に合わない、内容が不正確(隠蔽・仮想等を含む)である場合などは、上記のようなペナルティを受けかねないので注意しましょう。

 

 

3-5 適切な決算をするメリット

今まで確認してきた決算に関するメリット・注意点等をまとめると以下のようになります。

 

①税務申告のミスや申告の遅延の防止

決算業務で適正な会計処理が実現され、正しく税金の計算ができれば税金の申告で過大納付や過少申告のようなミスを防ぎ、申告期限に遅れることも回避しやすくなります。

 

②ステークホルダーからの信頼の向上

適正な会計ルールにもとづいて作成された決算書により、その会社に対する投資家や金融機関等からの信頼度の向上が期待できます。信頼度の向上は企業との取引や資金調達などに有利に働くでしょう。

 

③経営管理力の向上

経営者や管理職などにとって経営の判断等は決算の数字を根拠として実施されるべきものなので、適正な決算書を作成することにより適切な経営の意思決定が可能となるのです。

 

④倒産リスクの低減

正しい決算は会社の経営状態を正確に把握することを可能とします。また、月次決算をしている場合は資金状態の把握をより迅速かつ正確にするため、資金ショートによる倒産リスクを低減させます。資金の不足が早い段階から掴めるようになるため、資金調達を慌てて行うことも少なくなるはずです。

 

⑤余裕を持った効果的な節税対策の実現

決算業務に早くから取り組み効率的に進めていけば、決算業務に余裕が生まれ効果の高い節税対策を実施していくことができるようになります。

 

⑥無駄な費用の削減

決算業務を通じて無駄な費用の多さに気付かされ費用削減への意識が高まりやすくなります。また、月次決算を導入していくと月単位で費用の動向が把握できるので、早めに対策を実施して年間を通じて無駄な費用の削減が可能となるのです。

 

 


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