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融資するさい、銀行が見る決算書の項目

会社が事業を円滑に運営するために、必要な資金の調達はとても重要な課題です。事業資金をすべて自己資金でまかなえれば良いですが、大きな投資が必要となると銀行から融資を受けることを検討しなくてはなりません。事業運営を円滑に遂行し事業拡大を目指すためには、銀行からの融資は必要となってきます。

 

ここで融資する側の銀行が、どのような基準で融資の可否を決めているのかを知っておくことは有益なことです。銀行が融資を行うさい、融資先に返済能力があるかどうかが最も重要なことであり、銀行にとって不良債権とならないように慎重に審査しなければなりません。銀行が返済能力を確認する方法として最も大きな比重を占めるのが、融資先の会社の事業遂行の結果である決算書です。

 

それでは銀行は決算書の何を見ているのでしょうか。銀行からスムーズに融資を受けるためには、銀行がチェックする決算書の項目について理解し、融資を受けやすい決算を意識して事業経営を行う事も経営者として大事なことになります。

 

融資を受けるさいに、銀行が決算書のどこを見て審査するのかを知ることは会社を経営する人には大事な知識です。そのためには、まず銀行は決算書のどの書類を見ているのか、また銀行が融資の審査を行うさいにはどの書類のどのような項目を見て判断をしているのかが重要となります。

 

そこで銀行が見る決算書の種類とポイントとなるチェック項目について説明します。銀行から融資を受けることを検討している経営者の方の参考になれば幸いです。

 

 

1 銀行が見る決算書とは

会社の決算書には帳簿類から作成される決算書類と、決算の資料・証拠となる書類があります。特に、貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書・勘定科目内訳説明書・個別注記表などをまとめて、決算書(決算報告書)と呼びます。

 

これらの決算書の中で、貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書の3つは「財務三表」と呼ばれる重要な書類です。一般に貸借対照表は会社の財務健全性を、損益計算書は会社経営の成績を、キャッシュフロー計算書は会社の現金の出入りを示すもので、銀行の融資審査でもこれらの書類が重要となります。

 

そこで、貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書の3つについて概要を記し、それぞれの書類にはどのような項目が記載されるのかという事について説明します。

 

 

1-1 賃借対照表

貸借対照表(B/S: Balance Sheet)は、決算日時点でのその法人の資産と負債およびその差額である純資産(自己資本)を表すもので、資産は負債と純資産を足したものになります。賃貸対照表でその会社の財政状態が分かります。

 

貸借対照表は資産と負債及び純資産を対照表の形で記載するものですが、表の左側に資産を記載し右側に負債と純資産を記載します。それでは資産と負債及び純資産に記載される項目について説明します。

 

① 資産

賃借対照表の資産には、流動資産と固定資産及び繰延資産があります。

 

まず流動資産とは、1年以内に現金化できる資産のことです。この1年を基準として流動資産とするか固定資産とするかが分かれます。流動資産は具体的には次のようなものです。

 

  • 現金預金:現金、普通預金、定期預金、定期積立金など
  • 売上債権:受取手形、売掛金、貸倒引当金など
  • 有価証券:売買目的有価証券
  • 棚卸資産:商品、製品、原材料、仕掛品、貯蔵品など
  • その他の流動資産:仮払金、短期貸付金、前渡金、立替金、未収収益など

 

ここで、棚卸在庫のような資産は仕入から販売に至るまでの期間がたとえ数年を要する場合であってもすべて流動資産に該当します。

 

次に固定資産とは、長期間にわたって会社に使用され、または会社に保有される資産のことをいいます。固定資産は、1年以上の時間をかけて徐々に価値が減っていく資産で、減価償却の対象となります。固定資産は次のようなものになります。

 

  • 有形固定資産:建物・土地・構築物・機械や装置・車両・器具や備品など
  • 無形固定資産:特許権、借地権、のれん代、ソフトウェアなど
  • その他の資産:出資金、長期貸付金、株式、保証金、破産更生債権など

 

最後に繰延資産とは、支払い済みかまたは支払義務が確定しそれに対する役務やサービスの提供を受けた後も、その効果が将来にわたって現れる費用を指します。繰延資産には次のものがあります。

 

  • 創立費:定款作成や登記など会社設立のための費用
  • 開業費:会社を設立して事業を開始するまでの費用
  • 株式交付費:新株発行などの費用
  • 社債発行費:社債を発行するための費用
  • 開発費:新技術や新市場の開拓などの費用

 

② 負債

賃借対照表の負債には、流動負債と固定負債があります。流動負債は1年以内に支払うもので、固定負債は1年以上かけて支払うものという分類になります。

 

流動負債には、

  • 支払手形
  • 買掛金
  • 借入金
  • 未払配当金
  • 未払消費税
  • 仮受金

などがあります。

 

固定負債には、

  • 社債
  • 退職給与引当金
  • 退職給与引当金
  • 繰延税金負債(会計上の利益が税務上の課税所得より多くなるときに生じる)

などがあります。

 

③ 純資産

賃借対照表の純資産とは、会社法改正前まで資本の部や自己資本と呼ばれていたもので「株主からの拠出資本」に「利益の内部留保」を加算したものです。純資産の意味としては会社の総資産に占める株主の持ち分または株主に帰属する資産という事もでき、賃借対照表の中でも重要な意味を持ちます。

 

純資産は借り入れていない資本金や財産で、株式資本・評価換算差額金・新株予約権で構成されます。以下にそれぞれの内容について説明します。

 

株式資本は、

  • 資本金:会社の設立または株式の発行のさいに株主となる者がその株式会社に対して払込む財産の額
  • 資本準備金:資本金のうち、資本金として計上しないこととした額
  • 利益準備金:利益剰余金のうち、会社法によって積み立てることが義務付けられている額
  • 任意積立金:定款の規定や契約の定め,あるいは株主総会の決議などによって計上される利益の留保額
  • 自己株式:取得した自己株式のことで、純資産から差し引く額

などです。

 

評価・換算差額金は、

  • その他有価証券評価差額金
  • 繰延ヘッジ損益:時価評価されているヘッジ手段に係る損益または評価差額を、ヘッジ対象に係る損益が認識されるまで純資産の部において繰り延べられること
  • 土地再評価差額金

などです。

 

新株予約権は、会社が発行する株式をあらかじめ決められた価格で取得する権利のことです。

 

 

1-2 損益計算書

損益計算書(P/L: Profit and Loss statement)は、法人の1年間の決算期間の収益と費用を整理して比較し利益を示すものです。損益計算書は投資家などの利害関係者に、その年度の事業成績を提供します。

 

損益計算書は収益から費用を引いて利益を計算することで、1会計期間中の会社の経営成績を表すものです。損益計算書では、収益と費用をその性質により売上総利益・営業利益・経常利益・税引前当期純利益・当期純利益の5つを順番に算出します。5種類の利益の内容について、以下に示します。

 

① 売上総利益

売上総利益は売上高から売上原価を差し引いて算出します。売上総利益は粗利益とも呼ばれ、会社の基本的な収益力を示すものです。

 

② 営業利益

営業利益は売上総利益から、会社の販売活動や管理等に係る費用である販売費と一般管理費を差し引いて算出します。営業利益は会社の本来の営業活動から生じた利益を示します。ここで一般管理費とは会社の間接部門の人件費や事務所運営費用などの費用です。

 

③ 経常利益

経常利益は、営業利益に日常的な財務活動から生じる損益(経常損益)を加減した数値です。経常利益は営業利益に本来の営業活動以外から発生した収益である営業外収益を加え、本来の営業活動以外に要した費用の営業外費用を差し引いて算出します。

 

ここで営業外収益とは受取利息・受取手数料・受取配当金・有価証券評価益・雑収入などで、営業外費用は支払利息・社債利息・手形売却損・手形割引料・雑費用などです。

 

経常利益は「ケイツネ」などとも呼ばれ、会社の経常的な事業遂行の結果生じた利益を示します。

 

④ 税引前当期純利益

税引前当期純利益は経常利益に、その会計年度で本来の営業活動以外で特別に発生した収益である特別利益を加え、本来の営業活動以外で特別に発生した費用の特別損失を差し引いたものです。税引前当期純利益は、税引き前の会社の最終的な利益となります。

 

特別利益や特別損失とは、例えば所有する不動産を売却したさいに発生する利益や損失の事です。

 

⑤ 当期純利益

当期純利益は税引前当期純利益から、利益に課税される法人税や住民税及び事業税を指し引いたものです。当期純利益は、会社の最終的な利益です。

 

 

1-3 キャッシュフロー計算書

キャッシュフロー計算書は非上場会社では作成義務はありませんが、金融商品取引法の適用を受ける上場会社では2000年3月期より作成と開示が義務付けられています。

 

キャッシュフロー計算書では、一会計期間の会社のキャッシュ・インとキャッシュ・アウトを捉え、会社のキャッシュの流れを計算して表示する財務諸表です。損益計算書と貸借対照表は決算日時点での財政状態を示すもので、キャッシュ動きを把握することはできません。

 

しかし会社の取引では売掛金・買掛金での取引があり、商品やサービスの売り上げにより損益計算書上では売上として計上しても、実際には入金されずに「売掛金」となる場合があります。このようなキャッシュの入金・出金のズレを把握できるようにするのが、キャッシュフロー計算書なのです。

 

キャッシュフロー計算書には、営業活動・投資活動・財務活動によるキャッシュフローの3つの項目があり、それぞれの項目について説明します。

 

① 営業キャッシュフロー

営業キャッシュフローは、本来の事業活動でのキャッシュのイン・アウトを示すものです。営業キャッシュフローはお金が入れはプラスでお金が出て行けばマイナスとなり、これがプラスになればなるほど良いことになります。

 

② 投資キャッシュフロー

投資キャッシュフローは、今後のための投資活動に関するキャッシュの流れを示すものです。投資キャッシュフローがプラスという事は会社の資産を売ってキャッシュを得ていることになり、マイナスは資産を購入しているという事になります。

 

一般的に成長している会社は、建物や設備投資などでこの投資キャッシュフローがマイナスになるとも言えます。

 

③ 財務キャッシュフロー

財務キャッシュフローは、会社の銀行からの借り入れや返済に加え、株式や債券の発行や払った配当金などキャッシュの流れを表します。借り入れなどにより会社にキャッシュが増えれば財務キャッシュフローはプラスとなり、借入金返済により会社からキャッシュが出てゆけば財務キャッシュフローはマイナスとなります。

 

この財務キャッシュフローは、基本的には業績がよければマイナスになり業績悪化ではプラスとなります。但し事業拡大のために財務キャッシュフローがプラスとなる場合もありますので、営業キャッシュフローと投資キャッシュフローと合わせて考えなければなりません。

 

次に、銀行が貸借対照表と損益計算書とキャッシュフロー計算書の3つの決算書類のどの項目を見て融資の判断を行うのかという事について説明します。

 

 

2 賃借対照表で見る項目

賃借対照表は主に会社の財務健全性を示すものですが、銀行が融資の審査を行うさいに重視する項目は、まず純資産で次に資産、そして負債の順になります。それではこの順番に賃借対照表で重要となる11つのチェック項目について説明します。

 

純資産 1 純資産がマイナスでは融資が厳しい
2 自己資本比率は高いほど良い
3 繰越利益剰余金がマイナスだとネガティブ評価
資産 4 現金預金が十分にあるか
5 売掛金は前期との変動をチェック
6 売買目的有価証券の時価変動
7 短期貸付金は避けるべし
8 建物・土地・株式などの固定資産の含み益・含み損
9 長期貸付金も避けるべし
負債 10 買掛金は増減だけチェック
11 借入金の規模や水準が適正水準か

 

 

2-1 純資産:純資産がマイナスでは融資が厳しい

貸借対照表では、純資産がプラスであるかが最初にチェックされます。この純資産がマイナスという事はいわゆる債務超過状態となり、融資を受けることは厳しくなります。会社の資産をすべて売り払っても負債が残ることになりますので、銀行からは融資の回収が困難と判断されてしまいます。

 

純資産のプラス・マイナスとその金額は、銀行が融資を検討するさいの判断材料としては賃借対照表に記載された各項目のなかで最も重要なものです。

 

 

2-2 純資産:自己資本比率は高いほど良い

純資産はまずプラスであることが条件ですが、純資産の額が大きいほど評価されます。財務体質の指標として純資産を総資産で割った自己資本比率がありますが、自己資本比率が高いほど財務体質は良いと判断されますので、融資を受けやすくなります。

 

 

2-3 純資産:繰越利益剰余金がマイナスだとネガティブ評価

繰越利益剰余金は過去の決算の繰り越しですので、過去の決算が赤字ならばマイナスになり、黒字ならばプラスとなるものです。過去の決算がマイナスになるという事は事業運営が順調ではないことを示していますので、銀行は融資に当たってはより慎重になります。

 

但し事業開始から間もない場合などは赤字決算となる場合も多々ありますので、繰越利益剰余金がマイナスだからといって、それだけで銀行が融資しないという判断にはなりません。

 

 

2-4 資産:現金預金が十分にあるか

会社の運営に当たってはキャッシュが必要です。現金預金が少なければ、たちまち資金ショートとなり金策に走り回らなければならず、収入をすぐに返済に充てるいわゆる自転車操業に陥りかねません。

 

一般的には現金預金は月商(売上高÷12)の3ヶ月分程度が目安と言われていますので、現金預金が月商の1ヶ月未満であれば、銀行から融資をするのは危険とみなされる可能性が高くなります。

 

 

2-5 資産:売掛金は前期との変動をチェック

売掛金については前期の決算と比べて金額の変動をチェックする程度ですが、売掛金の金額が大きく変動していれば、その要因が確認対象となります。売掛金が大きく増えていれば、それが事業拡大によるものか、それとも売掛金回収の長期化や回収困難な事情があるのかチェックされることになります。回収困難な売掛金があれば不良債権ですので、もちろんネガティブ要因です。

 

 

2-6 資産:売買目的有価証券の時価変動

売買目的有価証券は投資目的のものですので、時価変動でその会社の投資が成功したか失敗したかを銀行が認識する程度の意味合いとなります。

 

 

2-7 資産:短期貸付金は避けるべし

短期貸付金は会社が他者に貸し付けを行っているということで、銀行からの融資を受けにくくなる要因となります。特別な事情が無い限り、銀行から融資を受けようとしている会社が、他に貸し付けを行っているのなら融資を受ける前に貸付金を回収するのが当然ということです。

 

 

2-8 資産:建物・土地・株式などの固定資産の含み益・含み損

建物・土地や株式などの固定資産については取得原価で計上しますが、「時価」で売却することを考えると含み損または含み益があります。固定資産の時価が取得原価より高ければ含み益があることになり融資に関してポジティブな評価です。逆に固定資産の時価が取得原価より低ければネガティブ評価となります。

 

また、壊れて動作しない機械や収益に貢献しない高級外車などの固定資産があれば、これは融資する銀行からはネガティブな評価となります。

 

 

2-9 資産:長期貸付金も避けるべし

短期貸付金の場合と同じで、固定資産として計上される長期貸付金があれば銀行からの融資を受けにくくなる要因となります。特別な事情が無い限り、銀行からの融資を受けるならば貸付先から早く回収するべきです。

 

 

2-10 負債:買掛金は増減だけチェック

売掛金の項目で説明したのと同様ですが、買掛金についても前期の決算と比べて金額の変動をチェックする程度です。買掛金の金額が大きく変動していれば、その要因が確認対象となります。買掛金が大きく増えていれば、それが事業拡大によるものか、それとも買掛金支払の長期化や支払い困難な事情があるのかチェックされることになります。支払い困難な買掛金があれば会社の資金繰りが悪化しているとみなされ、もちろんネガティブ要因となります。

 

 

2-11 負債:借入金の規模や水準が適正水準か

借入金には流動負債の短期借入金と固定負債の長期借入金があり、これらを合わせたものが借入金の総額となります。ここで注意が必要なのは、これらの借入金の内役員から借り入れた役員借入金の扱いです。

 

役員借入金は会社の経営陣(社長や役員)が会社に貸したお金のことで、借入金ではありますが会社にとって安全で都合の良い借金として扱います。従って役員借入金を借入金から除いて考えます。

 

借入金から役員借入金を除いた金額を有利子負債といいますが、この有利子負債が売上高を上回るようであれば借入金が多すぎると考えられます。有利子負債の水準については業種により適正な判断の水準が異なりますが、一般に次のように考えられます。

 

有利子負債の水準を計る指標として借入金月商倍率があります。これは有利子負債の金額が月商の何倍であるかというものです。借入金月商倍率が3ヵ月未満であれば適正水準で、3~6ヵ月は借入金が多いと判断され、6ヵ月を超える場合は借入金が過大とみなされます。

 

借入金は適正水準に抑えておかないと、銀行から融資を受けるさいに返済能力を疑われる大きな要因となりますので、特に気を付けなければなりません。

 

また役員借入金が計上されている場合、たとえ純資産がマイナスとなっていたとしてもそれを上回る額であればポジティブに捉えられる場合があります。それは社長などの役員が自分の資金を投入して経営に取り組んでいるという事で、銀行にとってもプラスと考えられるからです。

 

 

3 損益計算書で見る項目

損益計算書には、売上総利益・営業利益・経常利益・税引前当期利益・税引後当期利益の5つがありますが、重要なのは営業利益と経常利益です。それでは銀行からの融資を受けるさいに銀行が損益計算書のどの項目をチェックするか、ポイントを説明します。

 

 

3-1 営業利益がプラスであることが重要

営業利益は本業の収益力を示していますので、営業利益がプラスであることは銀行融資のさいに大変重要です。営業利益は会社が本業でどれだけ利益を上げているかを示すものですので、営業利益がプラスであることが必要で、営業利益の額が大きいほど信用が高くなります。

 

銀行が融資の審査を行うさいには、その会社の営業利益は会社が継続して返済して行けるかの大事な指標になります。本業で十分な利益を上げられなければ今後の返済能力に疑いありと判断されてしまいますので、これは重要なポイントです。

 

営業利益がマイナスでは、本業の収益によって融資の返済を行うことが困難とみなされてしまうだけでなく、事業の継続性についても疑われてしまいます。営業利益がプラスでないと銀行から融資を受けることが困難と考えてください。

 

 

 

3-2 経常利益がプラスであることも重要

経常利益は、営業利益に日常的な財務活動から生じる損益を加減した数値で、会社の経常的な活動から生じた利益を示します。この経常利益がマイナスだと、このまま事業を継続しても融資の返済が困難とみなされます。

 

また経常利益はプラスであることが重要ですが、会社の収益力に関する基本的な指標として売上高経常利益率があります。売上高経常利益率は経常利益を売上高で割った指標で、経常利益と同様にその会社の本来の収益力を判断する指標です。

 

売上高経常利益率は業種や会社規模によって異なりますが、次のような目安もあり銀行が融資の審査を行うさいの判断材料の一つとなります。

 

優良 (5.1~4.0%) 非常に優良な会社(上位約20%)
良好 (4.0~3.0%) 良好な会社
標準(上) (3.0~0.6%) 健全な会社
標準(下) (0.6~0%) 標準的な会社
注意 (0~-3.0%) 努力が必要
危険 (-3.0~-8.5%) 根本的に利益を出すための改善が必要

 

 

 

3-3 税引前当期純利益は特別利益・特別損失をチェック

損益計算書では営業利益と経常利益が特に重要な項目ですが、会社の利益には他に税引前当期純利益と当期純利益があります。しかし税引前当期純利益は、その決算期に特有の特別利益・特別損失によって大きく変動するものであり、会社が継続して利益を出し続けられるかという判断を行うにはふさわしくありません。

 

そのため税引前当期純利益については、その決算期でどのような特別利益・特別損失が生じたのかをチェックします。ここでチェックするのは特別利益・特別損失が今後の事業継続に影響を与えるかどうかという観点です。事業継続に影響がなければ銀行の融資に対する返済に対しては大きな影響はありません。

 

 

 

3-4 当期純利益は最終利益で来期へ繰り越し

当期純利益は税引前当期純利益から、利益に課税される法人税や住民税及び事業税を指し引いたもので、会社の最終的な利益です。銀行からの融資の返済という観点では、当期純利益よりも本業の利益を示す営業利益や会社の収益力を示す経常利益の方が重要です。

 

しかし当期純利益は会社の最終損益ですので、繰越利益剰余金として来期へ繰り越しされることになります。

 

 

 

3-5 役員報酬の増減をチェック

役員報酬は経営陣への報酬ですが、前回決算からの役員報酬の増減はチェック対象となります。役員報酬の総額は株主総会で決め、各役員への配分は取締役会で決定することができます。株主と取締役が重複していれば、会社の収益に関係なく役員報酬を増やし、銀行からの融資が投資ではなく役員報酬に回されてしまうという事もあり得ます。

 

このような事態が発生すると、銀行の融資に対する返済に支障が生じる可能性がありますので、会社の経営内容にふさわしい役員報酬かについてもチェックします。

 

逆に会社の財務改善のために役員報酬を引き下げると、経営陣が身を削って経営に取り組んでいるとポジティブに評価される可能性がありますが、会社経営が危機的な状況という場合もあり得ます。これについては他の経営指標と合わせて判断する事になります。

 

 

4 キャッシュフロー計算書で見る項目

キャッシュフロー計算書の作成義務は上場会社のみですので、非上場会社はこのチェックの対象外となりますが、キャッシュフロー計算書でその会社のキャッシュベースの財務の健全性が判断できます。

 

 

 

4-1 健全なキャッシュフローであるか

健全なキャッシュフローとは、本業で稼いだキャッシュの範囲内で投資して借金を返すというものです。この場合は、営業キャッシュフローがプラス、投資キャッシュフローがマイナス、財務キャッシュフローがマイナスとなります。これは会社が健全であることを示しています。

 

 

 

4-2 本業の稼ぎを上回る投資をしていないか

本業の稼ぎを上回る投資をする場合というのは、営業キャッシュフローがプラスで投資キャッシュフローがマイナスとなり、営業キャッシュフローより投資キャッシュフローが大きい状態です。この状態が続くと財務キャッシュフローのプラスが膨らみ続ける事になり、これは一般的に不健全な状態と言えます。

 

 

 

4-3 借入金で事業継続していないか

借入金で事業継続する場合は、営業キャッシュフローと投資キャッシュフローがマイナスで、財務キャッシュフローがプラスとなる状態です。借入金だけが膨らんでゆきますので、この状態が続くと会社の倒産の危険があります。

 

 

 

 

 

4-4 本業のマイナスを資産売却でカバーしていないか

本業のマイナスを資産売却でカバーする場合とは、営業キャッシュフローと財務キャッシュフローがマイナスで、投資キャッシュフローがプラスとなる状態です。資産が売れるうちは良いですが、売れる資産が無くなり借金が返せなくなると倒産の危機ですので、その前に事業立て直ししなければなりません。

 

 

5 銀行が見る決算書の項目まとめ

銀行から融資を受けるさいに、決算書のどのような項目が審査されるか説明しました。銀行が融資を行うさいに審査するのは、「融資対象の会社に返済能力があるか」についてですが、銀行が見る項目のポイントを整理すると次のようになります。

 

まず、賃貸貸借表で重要な項目は次のとおりです。

  • 純資産がプラスであるか
  • 自己資本比率が高いか
  • 繰越利益剰余金がプラスか
  • 現金預金が十分にあるか
  • 短期貸付金や長期貸付金が無いか
  • 借入金の規模や水準が適正か

 

次に損益計算書で重要な項目は、営業利益と経常利益がプラスであるかどうかです。

 

最後にこれは上場会社のみが対象となりますが、キャッシュフロー計算書が本業で稼いだキャッシュの範囲内で投資して借金を返すという健全なキャッシュフローであるかということも重要なポイントです。

 

銀行の融資は円滑な事業遂行のために、大変重要なものです。ここで説明した、銀行が見る決算書の項目に留意して経営状況を改善することは、銀行の融資を受けるさいに銀行の審査に通りやすくすることに繋がります。

 

本記事が銀行から融資を受けるさいの参考になれば幸いです。

 

 


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