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決算・経理業務・資金調達における大企業と中小企業の違い

日本には多種多様な企業がありますが、企業の規模を示す言葉として巨大企業、大企業、中小企業、零細企業といった言葉が使われています。大企業と中小企業の定義については、漠然と規模の違いによるものだと考えている方が多いと思いますが、実際には大企業と中小企業の区別について、業種・資本金・売上高・従業員数などを基準に法令で定義されています。そして大企業と中小企業では、利害関係者の数や社会に与える影響が異なることから、それぞれに適用される法令やその内容も異なります。本記事では、大企業と中小企業の定義と特徴、決算や経理業務の違い、資金調達面での違いなどについて説明します。

 

 

1 大企業と中小企業の定義と特徴について

大企業と中小企業の違いについて、大企業はトヨタやソニーなどの上場企業、中小企業は町の小さな工場や自営業といったイメージを持つ方もいるかもしれませんが、その定義は法令で定められています。なお大企業の中でも、上場している企業もあれば、非上場の企業もあり、大企業が必ずしも上場しているとは限りません。
また大企業と中小企業には法的な定義の違いだけではなく、組織体制やオペレーション、給与面などにおいてもそれぞれ特徴的な違いがあります。

 

 

1-1 法令による定義

①中小企業の定義

中小企業は中小企業基本法により定義されています。ちなみに中小企業基本法において、中小企業の呼称は中小企業者と言われていますが、本記事では便宜上、中小企業と呼称します。中小企業基本法における中小企業の定義は業種により異なり、以下のようになります。なおこの定義は、中小企業政策における基本的な政策対象の範囲を定めた原則であり、法律や制度により中小企業として扱われている範囲が異なることがあるのでご注意ください。

 

製造業その他:資本金の額または出資の総額が3億円以下の会社または
常時使用する従業員の数が300人以下の会社および個人

 

卸売業:資本金の額または出資の総額が1億円以下の会社または
常時使用する従業員の数が100人以下の会社および個人

 

小売業:資本金の額または出資の総額が5千万円以下の会社または
常時使用する従業員の数が50人以下の会社および個人

 

サービス業:資本金の額または出資の総額が5千万円以下の会社または
常時使用する従業員の数が100人以下の会社および個人

 

上記のように、中小企業基本法では中小企業が明確に定義されており、当該法律においてはこの定義より大きな会社については大企業という扱いになります。

 

また2017年度版中小企業白書によると、中小企業基本法の定義における中小企業の数は、日本全体で380.9万社となり全企業数の99.7%を占めています。従業員数については、日本全体で中小企業の従業員が3,361万人、大企業の従業員数が1,433万人となっています。このように企業数においても、従業員数においても、日本では中小企業の割合のほうが大きくなっています。
備考ですが、中小企業の最新の統計や動向、課題について詳しく調べたい場合、中小企業庁が発行する中小企業白書が参考になります。中小企業白書は中小企業庁のホームページより最新版を入手できます。

 

なお中小企業と比較されやすい企業にベンチャー企業がありますが、ベンチャー企業については、法令による明確な定義はありません。一般的には、会社を設立してから数年しか経過していない企業や、ビジネスの領域や手法が独創的革新的であるなどの条件を満たしていればベンチャー企業とされます。中小企業庁が起業家精神に富み、独創的創造的な事業活動に取り組む中小企業をベンチャー企業としているように、一般には中小企業の中でも特に新しい企業がベンチャー企業と呼ばれています。

 

②大企業の定義

上述したように中小企業基本法においては、中小企業に該当しない企業は大企業と定義づけられていますが、大企業を定義している法律の一つに会社法があります。なお会社法では大企業と言わず、大会社という呼称で定義されています。
具体的には、次に掲げる要件のいずれかに該当する株式会社が大会社となります。

 

  • 最終事業年度に係る貸借対照表に資本金として計上した額が5億円以上であること
  • または最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上であること

 

詳細は後述しますが、大企業は社会的に与える影響が大きいため、中小企業に比べて会社法におけるさまざまな規制があります。備考ですが、大会社が資本金などを変更し、大会社から中小企業になることも法的には不可能ではありません。実現はしませんでしたが、シャープが経営再建の検討案の一つとして、資本金を1億円に減資し中小企業としての扱いを受けようとする奇策もありました。

 

また大企業の中でも、特に証券取引所に上場し、株式が市場で取引されている企業を一般に上場企業といいます(中小企業に定義される企業が、中小企業のまま上場することもありえますが、本記事では便宜上、上場企業は会社法における大会社以上の会社と定義します)。上場企業になると、投資家や取引先、従業員など企業を取り巻く利害関係者がより多くなることから、社会に与える影響も大きくなるため、適用される法律も会社法に加え金融商品取引法などが適用され取り巻く法規制がより厳格になります。上場企業によっては、日本だけではなくニューヨーク市場など海外で上場している企業もあり、そのような企業は日本の規則だけでなく、上場している国の規則に従うことになります。

 

 

1-2 大企業と中小企業の特徴

定義を明らかにしたところで、大企業と中小企業の一般的な特徴について以下で説明します。企業により形態が異なるため一概には言えませんが、それぞれ次のような代表的な特徴があります。

 

①業務オペレーションにおける違い

大企業:一般的に組織が大きく、会社によっては事業部制などセグメントでオペレーションを行っています。大企業になればなるほどセクショナリズムが進み、経営陣に情報が届くまで幾度の報告ステップを踏むことになり、場合によっては情報が迅速に伝わりにくいというデメリットがあります。経営については、社長一人の独断で決めるより、取締役会や経営会議などマネジメント層の合意を通して事業を進めていく傾向があります。

 

中小企業:一般的に組織は小さく、部門数も少ない傾向があります。組織が小さいことから経営陣と現場が近くなる分、社内のコミュニケーションのスピードは速い傾向があります。経営については、大企業にくらべより社長の意思が強くトップダウンでスピード感のある経営が行われやすいです。

 

②給与・福利厚生における違い

大企業:平均給与は中小企業より高く、業績に極端な変動がない限り、給与は安定している傾向があります。また労働組合との交渉により賞与月数が決まるなど、組合が給与に関与する割合が高くなります。給与と同様に、福利厚生も一般には中小企業より充実している傾向があります。

 

中小企業:平均給与は大企業より安く、企業によっては労働組合が無い場合もあり、給与については経営者の裁量が大きい傾向があります。また業績との給与の連動が大きく、企業が成長すれば給与も上がるチャンスがあります。特にベンチャー企業などにおいて、ストックオプション制度がある企業は上場を達成することで、大企業以上の収入を手にすることもあります。反対に、業績が悪化すれば体力がない企業の場合、給与カットなどが簡単に行われるリスクがあります。

 

③キャリアパスにおける違い

大企業:明文化された人事ルールや昇進ルールがあり、大企業になればなるほど年功序列となる傾向があります。若いうちは裁量が与えられていないため雑務が中心となり業務も細分化されていることから、ゼネラリストというより専門性を高めていく働き方になります。ジョブローテーションによりさまざまな経験をしながら管理職となっていきますが、管理職以上の役職につくには厳しい競争に勝つ必要があり、ごく一部の人しか経営陣になれない傾向があります。

 

中小企業:大企業ほどに明文化された昇進規則がなく、年功序列よりも実力主義の傾向が強くなります。部門が少ないことから、限られた領域だけの業務を担当するより、たとえば経理と総務を兼任するなど複数の領域を担当するなど、大企業に比べゼネラリストの側面が強くなります。大企業に比べ経営者との距離が近いことから、経営者の目に留まれば早い段階でマネジメント層へ出世する可能性もあります。特にベンチャー企業では従来の価値観にとらわれない企業が多いため、人事の面でも早い出世ができるというメリットがあります。

 

・大企業と中小企業の違い

  業務オペレーション 給与・福利厚生 キャリアパス
大企業 セグメント(部門数)が多く、各部門ごとにのオペレーションが行われる 平均給与は高い。労働組合との交渉により賞与月数が決まる ジョブローテーションを経て管理職に就く。出世は明文化された人事ルールや昇進ルールに従う
中小企業 部門数が少ない。トップダウン方式での経営が行われやすい 平均給与は低い。労働組合がないところが多い。 複数の領域をこなすなど、ゼネラリストの側面が強い。出世が早い。

 

 

2 決算や経理業務における大企業と中小企業の違いについて

大企業と中小企業の規模については会社法や中小企業基本法で定義されていますが、会社の決算についても大企業と中小企業で異なります。また大企業のなかでも、上場企業か非上場企業かにより、決算手続きが大きく異なります。会社法で定義される大会社については、取引先や従業員など利害関係者が多く社会的影響が大きいため、業務が適正に行われるよう情報開示や企業統治などさまざまな規則があります。そのため決算手続きについては、大企業は中小企業より負担が重くなります。また社内の経理業務についても、大企業と中小企業では一般に体制や役割が大きく異なります。

 

 

2-1 法定決算手続きにおける違い

大企業と中小企業の定義が異なるように、法定の決算処理についても大企業と中小企業では異なります。代表的な違いは以下になります。

 

①会計基準における違い

大企業の場合:大企業や上場企業の場合、財務諸表は会社法や金融商品取引法、国際会計基準などさまざまな会計基準にしたがって作成されます。一般的には、会計基準に準拠した形で作成される財務諸表をベースに、税法で要請される調整を加え、税務申告用の所得を決定するプロセスをとります。

 

中小企業の場合:一般的には、最初から税法に準拠した形で財務諸表が作成されます。最初から税法ベースで作成されるケースが多いので、中小企業の財務諸表は税務申告のための根拠資料という意味合いが強くなります。

 

②決算情報の公告や開示における違い

会社法において、全ての株式会社は定時株主総会の終了後遅滞なく、決算の公告を行わなければならないと定められています。これは株主や債権者等に対し会社の財務諸表を公告することにより、取引の安全性を確保することを目的としています。公告は株式会社であれば、企業の規模に関係なく必須となります。

 

大企業の場合:会社法で定義される大会社の場合、公告対象となる財務諸表は貸借対照表と損益計算書となります。大会社でない株式会社は貸借対照表のみ対象となり、公告は官報や新聞、webサイトなどを通して行われます。
また上場企業は公告に替わる開示手段として、証券取引所の開示や有価証券報告書の提出を行っています。上場企業でない大企業が法令で貸借対照表と損益計算書の開示を要求されるのに対し、上場企業を対象とした取引所の開示や有価証券報告書は遥かに開示情報が充実しています。財務諸表ではキャッシュフロー計算書も開示されますし、財務諸表の注記も細かく記載されています。

 

合同会社や有限会社の場合:公告の義務はありません。したがって自社の財務諸表が誰にでも閲覧可能な状態にはならないため、自社の経営状況について守秘性を高められるというメリットがあります。デメリットとしては、決算情報が開示されていないため、取引先の安全性を確認する場合など情報の入手が難しいことがあります。中小企業の財務状況などを知るには、帝国データバンクや商工リサーチなどの有料情報を用いるという手段もあります。

 

③会計監査における違い

大企業の場合:会社法における大会社では、会計監査人の設置が必須となります。具体的には、会社の財務諸表について、記載内容が一般に公正妥当と認められた会計基準に則り適正に作成されているか、公認会計士による監査が義務化されています。会計監査では、独立関係にある公認会計士に報酬を払う必要があります。また公認会計士との数値確認や整合作業など実務上さまざまな手番が発生します。特に上場企業の場合は、連結決算が要請されるので親会社だけでなく子会社も含めた連結グループでの監査が必要になります。また上場企業の場合、決算だけではなく内部統制や有価証券の記載内容についても監査を受けるため、企業規模が大きくなればなるほど監査の負担も重くなります。

 

中小企業の場合:会計監査人の設置は任意となります。会計監査を受ける必要がないので監査人に払う報酬を節約できるというメリットがあります。監査はコンサルティング業務ではなく、財務諸表の適正性について監査人がお墨付きを与えることまでしかできません。監査自体は自社にとってコスト面でメリットがあるわけではないので、法令で監査が強制されないことで監査報酬を抑えられることは中小企業にとってメリットと言えます。監査を受けないデメリットとしては、自社の財務諸表に対して公認会計士という第三者のお墨付きがないと、銀行などからの融資を検討するさい、財務諸表の適正性について信ぴょう性が薄くなります。

 

⑤内部統制体制の構築における違い

大企業の場合:会社法で定義される大会社は、内部統制システムの構築方針の構築が義務化されています。なぜなら大企業の活動は、社会に大きな影響を与えるうえ、経営陣が自社の全ての活動を把握することは現実的に難しいため、適正な統治がされる仕組みを整えることが必要になります。そのため会社法では、全ての大会社に対し、取締役の職務の執行が法令や定款に適合するなど、会社の業務の適正性や財務諸表の信頼性を確保するための体制(内部統制システム)の構築を義務づけています。具体的には、取締役の職務執行にかかる情報の保存管理体制や損失の危険の管理体制などが挙げられます。
内部統制システムの構築には、自社の業務フローの確認や、評価体制の構築など実務上難易度が高く多くの時間を要するため、会社によっては内部統制部門など専門職を配置する会社もあります。内部統制システムの構築により、企業のガバナンスは高まりますが、コストがかかるというデメリットがあります。

 

中小企業の場合:中小企業は内部統制システムの構築について、義務はありません。内部統制システムの構築が義務化されないため、コストをかけなくてすむというメリットがあります。ただ、内部統制システムの構築が強制されないとはいえ、本来内部統制システムは企業の健全なガバナンスを増強させるものであるため、強制されないとはいえ自社に何らかのシステムを構築することが推奨されます。内部統制システムがしっかり機能していれば、業務の効率化や不正の未然防止などに繋がるというメリットがあります。中小企業の場合は、自社の財務状況を考慮しながら、例えばIT分野だけでも統制を強くするといったように、とくに統制を強めたい領域にフォーカスすることも出来ます。

 

 

2-2 経理業務における違い

大企業と中小企業では、同じ経理業務でも役割や内容は大きく異なります。

 

①経理領域の組織体制における違い

大企業の場合:前述したように、大企業は利害関係者が多く、社会的な影響が大きいため、決算に関する規則も中小企業より厳しくなります。とくに上場企業では、外部提出書類の作成や対外発表の機会が多くなる傾向があります。そのため、経理業務の各領域に専属の要員を多数配置する必要があり、上場企業などでは経理部に数百人が配置されていることもあります。例えば経理部と一口に言っても、財務関連、税務関連、予算関連、決算関連、内部監査や内部統制といったように専門領域より部門が分かれているケースが一般的です。また法令で要請される決算以外にも、企業の広報活動の一環としてIR部門を設置し、アニュアルレポート(年次報告書)などで企業の財務情報発信を強化している企業もあります。

 

中小企業の場合:中小企業の場合は、大企業ほど決算関連の法令にしばられないことから経理部にあまり人を配置せず、複数の領域を数人でこなすケースが一般的です。例えば小口現金、決算、税務関連などを一つの課がまとめて担当するだけでなく、総務業務を兼業しているケースもあります。そのため中小企業では、経理責任者が企業を支えるキーマンとなっていることがあります。

 

 

②経理領域の業務内容における違い

大企業の場合:大企業や上場企業においては、前述したように法令のしばりが中小企業より厳しくなるため、経理業務も多岐にわたります。中小企業と同様に月次決算や年次決算を行うだけでなく、上場企業では単体・連結双方の決算が要請されます。加えて上場企業は四半期ベースでの証券取引所における開示業務や、金融商品取引法に基づく四半期報告書の提出などが要請されるため、四半期ベースで決算を行う必要があり、決算の業務負荷が非常に重くなります。このように上場企業の経理業務はより専門性が高いうえに負荷が重いため、一人で全ての領域を管理するというより、各分野の専門的な知識を持つ人たちが各分野の業務に専念する傾向があります。求められる知識も、会計基準・開示基準、連結決算、国内国際税務、内部統制など専門的な知識が要求されます。

 

中小企業の場合:大企業や上場企業に比べ、中小企業は法令のしばりが少なくなるぶん、一般的に経理業務の範囲は狭くなります。対外的な情報開示業務が少なくなることから、経理業務の中心は資金繰りの検討や、月次・年次決算、法人税申告などが中心となります。そのため中小企業の経理については、簿記2級程度と消費税の知識がある程度あればこなせることも多いと思います。ただ、大企業と異なり、中小企業の経理業務は経理以外にも総務業務などの管理部門全般を担うことが多くなるため、よりゼネラルな知識と経験、コミュニケーション能力が要求されます。

 

 

3 税制や補助金・助成金制度における違いについて

また大企業と中小企業では対象となる税制や補助金も異なります。基本的には体力のない中小企業を保護する観点から、中小企業のほうが税制や補助金についてメリットを受けられます。

 

 

3-1 税制における違い

リーマンショック以降、特に体力のない中小企業を保護するため、税制面では中小企業のほうが優遇されています。なお下記情報は平成29年4月1日時点のものであり、税法は都度改正されていくため直近情報については国税庁ホームページなどでご確認ください。

 

大企業:法人税率は平成28年4月1日以後の開始事業年度は23.4%。平成30年4月1日以後の開始事業年度は23.2%となります。また資本金の額または出資金の額が1億円を超える企業については、外形照準課税の対象となり、中小企業に比べると税負担は重くなります。海外に子会社を設立し海外との取引金額が多い企業は、税率が低い国外への利益移転を問題としたいわゆる移転価格の問題もあり、中小企業に比べ税務リスクは大きくなる傾向があります。

 

ただ実際の法人税率、いわゆる実効税率は表面上の税率より低くなる企業もあり、とくに国内外にグループ会社を持つ上場企業などでは実効税率が低い企業が多数あります。なぜなら親会社と子会社の損益を合算して納税する連結納税を採用する企業や、国内外からの配当益金不算入といった影響が大きくなるため、実際の税率より結果として税率が低くなることがあるためです。大企業については、事業規模が大きいことから税務戦略の検討、いわゆるタックスプランニングが重要となります。例えば海外に事業展開している上場企業メーカーでは、移転価格問題などで数百億の追加課税があったケースもあります。そのため一般には税務の専門部隊を配置している会社が多くなります。

 

中小企業:中小企業の税率で大企業と異なる点は、法人税率が所得金額により変わるという点です。具体的には、平成28年4月1日以後の開始事業年度から平成30年4月1日以後の開始事業年度までの期間について、課税所得の金額が800万円以下の部分は税率が15%になります(平成30年4月1日以後の開始事業年度の税率は19%)。800万円を超える所得分に対しては中小法人であっても大企業と同じ税率が適用されます。このように法人税率自体に中小企業に対して軽減税率が適用されています。

 

このほか、中小企業にはさまざまな優遇税制があります。たとえばIT化投資を促進するものや、先端技術や生産効率を改善するための設備投資を支援する中小企業投資促進税制、試験研究費の一部を課税対象から控除する中小企業技術基盤強化税制、生産性を向上し、商業サービス業を支援する商業・サービス業・農林水産業活性化税制など、中小企業の保護の観点からさまざまな優遇税制が制定されています。

 

 

3-2 補助金や助成金における違い

一般に補助金や助成金については大企業で適用できるものは少なく、例えば起業を促進するためベンチャー企業を対象にした創業補助金など、中小企業を対象としたものが多くなります。そして補助金や助成金には、経済産業省などの国が支援するものだけでなく、各地方自治体が企業誘致のため独自に設定しているものが多数あります。なお補助金や助成金という言葉を明確に規定した法令はないため、一般的に使われる概念として、補助金と助成金について説明します。

 

補助金や助成金を利用する最大のメリットは、原則的に返済が不要であるという点です。金融機関からの融資による資金調達は、金融機関と合意さえできれば、迅速に融資を受けられますが、借り入れであれば金利を負担したうえで返済しなくてなりません。それに対し、補助金や助成金は金額の上限や審査の厳しさというデメリットはあるものの、返済が不要もしくは金利が不要といったメリットがあります。

 

なお、補助金と助成金の違いですが、補助金は基本的に公募の形になります。
申請期間が短いことも多く、公募の要件に合致ことに加え、審査に合格してはじめて補助金を獲得することができます。倍率も高いため企業にとってはハードルが高いものになります。それに対し、助成金は基準を満たせば、原則として受給できるものです。大きく分類すると、雇用関係の助成金と、研究開発型の助成金に分かれます。

 

 

4 資金調達における違い

大企業と中小企業では資金調達などの手段でも大きな違いがあります。一般的には大企業ほど資金調達の選択肢が多く、中小企業は選択肢が少なくなります。

 

大企業の場合:かつては護送船団方式と言われる、銀行から借り入れる間接金融が中心でしたが、現在では大企業の資金調達手段は多様化しています。銀行借り入れは昔から主要な資金調達手段ですが、直接マーケットから資金を調達する直接金融も今では主要な資金調達手段となっています。たとえば社債の発行や増資をすることでマーケットから資金を調達すれば、基本的には銀行借り入れよりも調達コストが安くすみます。直接金融にしても間接金融にしても、調達コストに影響するのはその企業の信用力です。

 

信用力が高い企業は、例えば社債の利回りが低くても買い手がつき資金調達コストは低くすみますが、信用力のない企業はたとえ大企業であっても資金調達コストは高くなります。

 

中小企業の場合:中小企業における資金調達は、銀行からの借り入れが中心となります。とくに規模が小さい会社になるほど、公的金融機関や地場の銀行や信用金庫などからの借り入れが中心になります。大企業に比べ、資金調達の選択肢が少なくなるため、金融機関の借り入れに頼らざるを得ない状況になります。また借り入れのさいも、大企業に比べて信用力がない場合は、経営者が保証人となったうえで不動産などを担保にして借り入れる必要があり、経営のリスクを経営者がダイレクトに背負うことが多くなります。また信用力のある大企業に比べて借入金利も高くなります。

 

このような中小企業が調達コストを下げ、安定して借り入れを実施するためには、信用力の向上がポイントになります。企業が安定して収益を計上していれば信用力の担保になりますが、そこで前述したような会計監査の義務がない企業でも会計士の監査を受け、財務諸表が適正に作成されていることのお墨付きを得ると企業の信用力が高まります。また内部統制システムをしっかり構築し、経営の健全性をアピールすることも企業の信頼性を高める手段の一つです。

 

 


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