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月次決算は有効か?その導入方法とメリット・デメリットで考える活用ポイントとは

期末決算の早期化や決算業務の負担軽減の必要性を肌で感じているビジネスマンもおられるでしょう。その決算業務のスピードアップや効率化には月次決算の導入が有効といわれています。

 

今回は月次決算の内容、メリットやデメリットを説明するとともに導入する上でのポイントや手順を紹介します。そして、月次決算を導入して経営の質の向上に繋げるための活用のポイントを説明していきましょう。

 

 

1 月次決算をしていない場合の問題点

ここでは月次決算業務を導入していない場合の期末決算業務でみられる問題点を確認してみましょう。

 

 

1-1 負荷の大きい期末決算業務

月次決算をしていない場合の期末決算では、以下のような軽視できない問題が生じやすいので注意しましょう。

 

①担当者の業務負荷の増大

月次決算をしていない場合、期末の決算業務では経理部門の負荷が増大し、残業や休日出勤などで担当者が疲弊するケースが少なからず見られます。

 

特に決算業務の効率化が実施されていない企業では、担当者任せの非効率な処理が行われ、結果として膨大な作業時間が必要となっていることも珍しくありません。

 

例えば、何カ月も前の「仮受金」などの内容について決算業務で正確な内容を突きとめるのは容易ではなく、判明するまでの時間もかかり過ぎてしまいます。こうした確認と適切な科目へ修正する仕訳が多くなると自ずと業務量は増え、残業等の増加へ、そして担当者の疲労蓄積へとつながるわけです。

 

②不十分な節税対策

月次決算をしていない場合は節税対策に必要なデータを期末までに揃えられず、結果的に節税につながる会計処理が困難になることが少なくありません。

 

その年度の利益額が期末ぎりぎりでないと見込めない場合は、利益が予想外に多いケースでも社員旅行の実施、不要資産の処理、期末セールなどの節税対策が困難になります。その結果、その企業は多くの税金を支払うことになるわけです。

 

単に節税だけを目的として上記の内容を実施するのは適当とは言えませんが、新事業年度の経営に効果をもたらすのであれば節税対策も重要です。しかし、期末決算業務で節税対策を検討するためのデータ入手が遅くなれば、節税対策は実行できなくなってしまうでしょう。

 

③決算書類の作成の長期化、決算発表の遅れ

月次決算を導入しておらず期末決算業務での効率化も進められていない場合、上記①の状態を招き、結果的に決算書類作成までの時間が長くかかり過ぎてしまいます。そして、そのことにより上場企業などでは決算発表の時期が遅くなってしまうのです。

 

期末決算業務が効率化されていないと、決算書類の完成に時間がかかり過ぎて、納税申告もぎりぎりというケースも生じやすくなります。上場企業では証券取引所から決算期日後45日以内での決算短信の公表が要請されていますが、非効率な決算業務ではその要請に応えることは容易ではないでしょう。

 

決算書類の作成が遅い、決算発表が45日ぎりぎり、といった状況は決算業務が非効率であると評価され、財務管理の体制が整っていない企業とみられるおそれもあります。つまり、ステークホルダーからの信頼に影響するため、決算短信等の決算書類の公開、決算発表の公表を遅くすることは企業経営にはマイナス効果となるのです。

 

 

1-2 経営改善の遅延

月次決算をしていないと、売上の減少、コストの増大、人手不足、キャッシュの過不足、売上債権の増大などの問題点の把握が遅くなりリスクの拡大につながりかねません。

 

毎月の営業成績や費用などを数値で正確に把握していない場合、どの部門、どの担当者の売上がどのような傾向になっているかを正確に掴むことは困難です。そうした数字を期末決算データから分析するようでは売上の減少が著しくなった状態からの対策となりその年度の売上を大きく落とす可能性を高めます。

 

また、人手不足を感じていたとしても、その実態を数値で捉えることができなければ、新たに人員を採用する決断も遅れてしまいます。機械や装置の新規導入も売上状況・稼働状況、キャッシュの過不足などを把握しないと投資の決断を下すことは困難です。

 

期末決算データだけに頼る経営では問題の把握が遅れたり、状況に適した対策を打ことができなかったりして業績を悪い方向へと招くことも少なくないでしょう。

 

 

1-3 金融機関等との関係構築で不利

金融機関に融資を依頼する場合、彼らから直近3期ほどの決算書類の提出のほか月次の試算表等を求められるケースも多く、月次決算をしていないとその要請に対応できないです。

 

銀行等は企業から融資を求められたさいにはその企業に対して複数期の決算書類、確定申告書などを求めるほか、最新の試算表なども要求します。

 

しかし、試算表については月次決算をしていないと直ぐに提出することは困難です。提出できない場合や遅くなる場合では金融機関のその企業に対する評価は下がり、結果として信頼が得られず融資されなくなる可能性は高まります。

 

これは単に試算表が提出できない、遅いという評価だけでなく、財務管理を含む経営管理体制が成熟していないという評価につながり、銀行等との関係の構築・維持に影響するのです。重要な経営資源である資金の調達先を増やせない、限られるという環境では事業の発展やリスクへの対応の点で決して好ましい状況とは言えないでしょう。

 

 

2 月次決算の主な特徴

ここでは月次決算の主な内容、メリットとデメリットについて説明します。

 

 

2-1 月次決算とは

月次決算とは、経営に活用するための必要なデータを得るため、期末決算業務の負荷を低減するため、などに実施される任意の決算行為といえます。

 

期末決算は会社法や税法上に基づき企業に課せられる決算ですが、月次決算にはそのような法的制約はありません。つまり、月次決算をするかしないかは企業が勝手に決めてよいわけです。そのため、手間のかかる決算業務を毎月実施する月次決算を導入していない企業は少なくありません。

 

しかし、月次決算を導入している企業もまた決して少ないとはいえないのです。手間のかかる月次決算を行うのはそれだけの理由があるからであり、その点について次節で確認していきましょう。

 

 

2-2 月次決算のメリット

以下のようなメリットが見られます。

 

①経営状態の早期把握が可能

月次決算を導入して実行すれば、翌月の10日前後には前月の営業成績や財務状況を数値で掴み分析することで経営状態が把握できます。そして、問題点の把握、原因分析、対策の立案および実施により業績や財政状態の悪化をくい止め業績向上へ繋げることが可能となるのです。

 

「業績は悪くないと思うが本当に儲かっているのだろうか」などと期中に悩む経営者や担当者もおられるでしょう。このように悩む原因の一つは、その時点の企業の経営状態が把握できていないという点が挙げられます。

 

企業の業績や財政状態が期末の決算業務が完了しないと把握できなければ、業務上の問題点の認識が遅れ、それが顕在化するまではつかめず大きなリスクへと発展しかねません。

 

しかし、月次決算をしていれば、毎月10日頃には毎月の業績等を把握できるため、何が問題となっているのか、何が問題になりそうかなどが把握しやすくなります。具体的には、その企業の収益構造や費用構造の問題点などが把握しやすくなるのです。

 

例えば、特定の商品や店舗での売上が落ちている、ある月から利益率が落ちている、といった状況が月次データで把握できます。また、その原因が何かという分析も月次データから行えるケースも少なくないのです。

 

②予実管理による目標達成の促進

月次決算で毎月の営業成績が把握できることから年度計画(予算)との差異は明らかとなり未達幅への対策を早めに打てるようになります。その結果、計画の達成が実現しやすくなるわけです。

 

月次決算をしていない場合、予算と実績との正確な差が掴みにくいので、未達の場合の対策も打ちにくいでしょう。また、実際は十分に達成できている状態にもかかわらず、それが把握できていないために余計な対策を打ってしまうこともあります。

 

例えば、月次決算が導入されておらず売上実績を担当者が正確に把握していない場合、決算を迎えないと予算との差は明らかになりません。そのため予算に対して実績が大きく不足する場合でも必要な対策を実行することなく、予算未達で終わる可能性が高まります。また、逆に実際は予算を達成している状態でも実績がわからないために不安を抱き、余計な値引きセールなどを行ってしまうかもしれません。

 

月次決算で毎月の販売や費用などの実績を把握して必要な対策を実行すれば予算達成の確率は高められるとともに無駄な販売促進なども回避できるでしょう。

 

③タイムリーな意思決定が容易に

月次決算で販売状況や資金繰り等の状態が正確に掴めるので、投資や資金調達などの意思決定が適切に実施されやすくなります。

 

期中において、「業績も好調のようなので事業を拡大したいが人や設備を増やしても大丈夫だろうか」とか、「そのために金融機関等に融資を依頼すべきか」などと悩むこともあるでしょう。こうした判断を下すには状況を客観的に評価する必要がありますが、月次決算で毎月の状態を数値で把握しておかないと難しいです。

 

例えば、月次決算で「販売量が前年度比○○%アップして、生産量は□□アップしている」という情報が確認できれば、設備の新規導入や人員の補充などの判断は下しやすくなります。また、キャッシュの残高や来月以降の回収予定・支出予定などの資金の状況も掴みやすくなるので、不足の場合の資金調達も早めに対策が打てるはずです。

 

月次決算をしていない場合、業績悪化の傾向を早めに認識することが難しく対策も後手となる可能性は低くありません。そのため期末を迎える時点で経営状態の悪化が進んでいれば決算後には大きなリストラを余儀なくされることもあるでしょう。

 

しかし、月次決算で毎月の業績を掴み早めに問題を把握して対処しておけば、業績を改善させたり、リストラを最小限度に留めたりすることも可能です。

 

④期末決算対策として有効

月次決算をすることで、期末決算での業務負荷が軽減され余裕を持った決算業務も可能となります。その結果、節税対策、納税資金の確保、担当者の疲弊防止などが実現されやすくなるでしょう。

 

・節税対策

月次決算で費用として計上すべき項目の漏れをなくし適正な費用計上することで、余分な利益額を減少させるという節税対策ができます。

 

本来計上できる費用は適切に費用化するべきですが、期末決算の業務に追われて計上漏れするケースは珍しくありません。そうなれば利益を減少せず結果として納税額は多くなります。

 

例えば、少額資産購入の計上、社内旅行や決算賞与などを実施して適切に費用計上すれば利益を減少させ節税に結びつけられるでしょう。

 

逆に、売上原価の構成要素である期末在庫高を、適切に評価しなかったり、期末に大量に仕入れたりすると売上原価は少なくなり利益が増え税金の増加につながることもあるのです。

 

このように期末決算で適切な費用計上をするためには月次決算で費用化できるものを早めに計上し、節税に向けた時間を確保することが重要になります。

 

・納税資金の確保

月次決算を実施しておけば期末前後のキャッシュの過不足が掴みやすいので、納税資金の準備を早めに行え、納税資金の用意に困るという心配は少なくなるでしょう。

 

期末決算業務をできるだけ素早く済ませ節税も適切に行い利益を適正な額におさめたとしても、それでも利益が多い場合には納税額も多くなりそのためのキャッシュが必要です。

 

月次決算をしていない場合、期末決算業務の処理の目途が立たないうちは納税額がいくらになりそうか、決算後の現金の回収がどれくらいになるなどは把握しにくいです。そのため、月次決算をしていない場合は納税資金の不足についての把握が遅れやすいため、不足の手当を慌てて行うという可能性が高まります。

 

月次決算を導入していれば、早めに納税額を予測することが可能な上、期末前後の資金需要も把握しやすいので納税資金を慌てて準備するという苦労は回避しやすいでしょう。

 

・担当者等の疲労を軽減

期末決算業務は業務量も多く経理担当者に重い負担を強いることも多いですが、月次決算を導入していればその負担は軽減され決算業務での疲弊から解放されるでしょう。

 

決算業務は経理担当者にとっては重要かつ量の多い仕事であるため、その業務負担は精神的・肉体的に決して軽くありません。企業によって決算業務の質と量は大きく異なりますが、中小規模の企業でも経理担当者が少ない場合などは決算業務が過酷なものになることもあります。

 

特に月次決算をしていない場合、期末の1~2カ月前から期末後3カ月程度まで残業が多くなり休日出勤も必要となるケースも珍しくありません。しかし、月次決算を導入していれば、期末決算での業務量を相当程度減少させることも可能です。その結果、担当者の残業や休日出勤は少なくなり、彼らの疲労も大幅に低減されるでしょう。

 

⑤金融機関等からの信頼度の向上

月次決算を導入して最新の試算表等を提出できるようにしておけば、銀行などの金融機関からの急な提出要請にも応えられ、彼らの信頼度が向上します。

 

銀行等から融資を受けるさいには過去の決算書のみならず、最新の月次の試算表の提出が求められることは少なくないです。そのさいに、月次決算を導入して前月の試算表を直ぐに提出できると、自社に対する財務管理面での評価は高まり、融資実現のハードルは下がるかもしれません。

 

また、月次決算のデータを経営上の問題発見や業績拡大に利用していれば、その点を金融機関等にアピールすることができるので関係強化も図れます。

 

 

2-3 月次決算のデメリット

以下のようなデメリットが見られます。

 

①月次決算の導入時期等での業務負担の増大

期末決算業務は2カ月以上といった期間で作業されますが、月次決算は10日ほどの期間のため、決算対象の範囲や業務内容によってはかなり厳しい業務になることもあります。

 

月次決算は企業の任意事項ですが、その内容を期末決算と同様のレベルで実施すれば期間が短いだけに担当者への負担は相当重くなるでしょう。また、月次決算の対象や処理方法などを事前に決めておき、円滑に業務遂行できる仕組みを整備しておかないと10日といった期間で仕上げることも困難です。

 

特に導入したばかりの時期では相当な日数がかかるとともに担当者の残業も多くなることが予想されます。月次決算の範囲を徐々に拡大しつつ改善を継続していくというアプローチが必要になるでしょう。

 

②月次決算の導入時期での混乱やトラブル

月次決算の導入時期では営業、製造や購買等の各部門からの協力が必要ですが、彼らとの連携のさいに混乱やトラブルが生じることも珍しくありません。

 

月次決算は10日といった短期間で仕上げるために営業、製造や購買等の各部門からの協力なくして実現することは不可能です。月次決算の導入にあたり新しい会計処理のルールを作り、それを彼らに厳守してもらわないと予定の日数で仕上げることは難しいでしょう。

 

関係部門にとっては新たなルールが強いられ従来の業務方法の一部が変更されることになることから月次決算が歓迎されないこともあります。その場合、彼からの協力が不十分となり、予定の日に決算できなかったり、不適切な処理が実行されたりという状態に陥るかもしれません。

 

③月次決算のメリットの喪失

月次決算のデータを活用すれば業務改善や業績の向上に繋げることも可能ですが、活用しない場合はそのメリットは享受できません。

 

決算のデータは企業の経営診断に利用することが可能ですが、期末決算のみの場合は1年間の1時点での診断となります。一方、月次決算の場合は1年間に12回(期末決算を含む)、毎月の診断が可能となるわけです。

 

人間にたとえると、健康診断を年に1回するのと毎月するとの違いがあり、当然毎月診断するほうが体の状態を早く掴みやすくなります。そして、その結果で悪い傾向が確認できれば早期治療といった対策が打てるため悪化をくいとめ完治も早められるかもしれません。企業の場合は倒産リスクなどを低減させることが可能になるわけです。

 

月次決算のデータは経営状態を示す数値ですが、活用しない場合には単なる計上された数値で終わり、月次決算による最も活用したいメリットが失われてしまうでしょう。

 

月次決算のメリットとデメリットまとめ

メリット 経営状態の早期把握が可能
予実管理による目標達成の促進
タイムリーな意思決定が容易
期末決算対策として有効
デメリット 月次決算の導入時期等での業務負担の増大
月次決算の導入時期での混乱やトラブル
月次決算のメリットの喪失

 

 

3 月次決算の導入のポイントと手順

ここでは月次決算を導入していく場合の重要点と手順を説明します。

 

 

3-1 月次決算の導入のポイント

月次決算導入のさいの注意すべき重要ポイントとして、以下のような内容がみられます。

 

①目的の明確化

月次決算には多くのメリットが期待できますが、全部を直ぐに実現するのは困難なため達成したい目的を絞り明確に設定していくことが重要です。

 

例えば、月次データから予算と実績の乖離を把握して予算達成に向けた対策を立てる、キャッシュの動きを掴み資金繰りでの問題を回避する、など経営管理等での活用が挙げられます。

 

実現したい目的が定まれば、それに必要なデータ、そのための手続方法などが明らかになるので(簡素な手続の採用等)、効率的な月次決算の導入と運用が可能となるでしょう。

 

②月次決算の対象範囲

月次決算の導入初期などでは最初から月次決算の対象範囲を広げずに徐々にレベルアップしていくことが重要です。

 

会計業務に関するマネジメントが未整備、不十分である状態で正確な決算書類や分析資料を多数作成することは難しいでしょう。そのため自社の会計業務およびその管理のレベルに合わせて徐々にステップアップすることが望ましいです。

 

例えば、決算書類としては月次損益計算書を作成の上分析対象として活用し、その後月次決算業務が軌道に乗れば貸借対照表や資金繰表の作成・活用というような進み方もあります。

 

また、月次決算の管理対象をまず企業全体にして、それから部門ごとの月次決算の実現に取り組むべきです。その月次決算に余裕がでれば部門・店舗・担当者レベルで行えるように進むとい手順が望ましいでしょう。

 

③関係部署等の理解と協力を得る

月次で決算書類を10日ほどで作成するには従来の会計処理等の手続の変更も必要となるため、関係部署や取引先等の理解と協力が欠かせません。

 

そのため関係部署等には月次決算の目的やメリットを説明し自社にとって有益であることをまず理解してもらう必要があります。その上で関係部署等の協力を要請する必要がありますが、経理部門からの要請だけでは弱いので経営トップから直接的に依頼したほうがよいでしょう。

 

トップからの説明や要請がない場合、経理部門の都合だけで従来の会計ルール等が変更されようとしているなどの誤解が生じやすいでの注意が必要です。

 

④月次決算スケジュールに合わせてやるべき手続を設定する

月次決算の目的や対象範囲が定まれば、それを月次決算の日程に合わせて処理できる会計手続を検討しなくてはいけません。

 

月次決算書類を毎月10日までに出力するためには、どのような手続の変更が必要なのかを事前に洗い出し、実現させる取り組みが求められます。現金主義での費用計上を発生主義に変える、つまり、売上や仕入の計上のタイミングを発生の事実で計上するなどの変更が必要となるのです。

 

何が日程のボトルネックになるかは実際にやってみないと判明しにくいこともあるため、結果を分析しながら必要な手続を確立させていくことが重要になるでしょう。

 

 

3-2 月次決算の業務フロー

ここでは月次決算の業務の流れとその内容を簡単に説明します。業務の主な流れは、月次決算仕訳・試算表の作成→月次決算書の作成→経営分析→月次会議の開催→対策の実施 などになります。

 

なお、月次決算も期末決算の処理と大きな違いはないですが、その目的に合わせて会計処理の手続を簡素化するとよいでしょう。

 

①月次決算のスケジュール

月次決算の日程はその企業の規模・業種のほか財務管理レベルなどによって異なりますが、毎月10日までには実現するべきです。それ以上遅くなるとデータの鮮度は落ち対策も遅れるので、改善効果が発揮されにくくなることもあります。

 

毎月10日に月次会議を開催する場合の月次決算業務の日程では、月次決算仕訳・試算表の作成および月次決算書の作成が6日~7日頃までに仕上げる必要があります。それから逆算すると各部門には必要な会計データを5日頃までに提供してもらわないといけないでしょう。

 

そして、8日や9日頃には予算と実績との分析のほか、必要な分析資料をアウトプットして問題点等の分析を済ましておく必要があります。その上で10日の月次会議では前月等の経営状況について議論されねばなりません。

 

②原則発生主義による仕訳

適正な月間の損益を把握するためには原則として発生主義会計で会計処理を進める必要があります。売上・仕入やその他経費の計上を現金の入金や支出のタイミングで計上するのではなく、収益・費用の事実が発生したタイミングで計上するようにしましょう。

 

・商品等の販売および仕入の発生月での計上

例えば、商品を販売してその代金が入金された時点で売上計上するのではなく、商品を発送した時点等で計上するわけです。仕入の場合も商品の代金を支払った時点で仕入計上するのではなく、商品が届いた時点等で計上します。

 

なお、取引先からの正式な請求書が届いた時点で計上されるケースもありますが、計上が遅れやすくなるので納品のさいに添付されている納品書・伝票等で計上するなどの工夫も必要です。

 

また、現金取引以外では売掛金や買掛金が発生することになりますが、適切に計上しなければなりません。売値や仕入値が確定していない場合は予定価格を確認し仮値で計上するようにしましょう。

 

③月次決算仕訳・試算表の作成

月次決算の実現にはまず、月次決算書の作成が必要となることから月次決算仕訳を行い、月次試算表を作成しなければなりません。ただし、会計ソフトを使用している場合月次決算に必要な仕訳を入力できれば、月次試算表や決算書類の作成は容易で時間も多くかからないでしょう。

 

月次決算は年次決算と比べ極めて短期間で仕上げる必要があり、かつ経営管理を主たる目的で実施されることから、正確性以上に速度が優先されます。そのため月次決算では日程上どうしても遅れるデータは見積計上での対応が必要です。見積計上した場合、後日実際のデータが確定した時点で洗い替えをしなくてはいけません。

 

なお、月次決算仕訳として適切に処理したい科目と内容は以下の通りです。

 

・特定の時期に計上する減価償却費等の計上

減価償却費、退職給付費用、賞与、固定資産税、各種保険料、労働保険料は期末に1回や複数回など特定の時期に計上しますが、月間の適正な期間損益を実現するには適切とはいえません。そのため各費用を適切に見積もった上で月割りして計上することが求められます。

 

例えば、減価償却費の場合、期末で計上が予想される金額の12分の1を各月に計上していくわけです。もし期末に120万円の減価償却費の計上が考えられる場合は毎月10万円を減価償却費として計上することになります。なお、その見積計上した科目については費用が確定する時期に修正が必要となることを忘れないようにしましょう。

 

賞与については賞与が実際に支給される月に、その支給対象期間中に毎月計上した賞与引当金を取り崩す処理が必要です。 例えば、毎月の仕訳では以下の処理が行われます(年間の予定賞与を360万円として、その12分の1の計上)。

 

賞与引当金繰入 30万円 / 賞与引当金 30万円 

 

そして、支給月(例えば12月)には次のような処理が必要です。

 

賞与引当金 120万円 / 賞与引当金繰入 120万円
賞与 120万円 / 現金 120万円

 

・仮払金、仮受金の整理

仮払金や仮受金はその内容を確認して適切な科目に振り替えなければなりません。これを期末まで放置しておくと内容の確認に手間がかかりすぎ多くの時間が割かれることになりかねないので注意が必要です。

 

・前払費用や未収収益等の経過勘定の計上

前払家賃などの経過勘定科目について、期中では現金主義で計上処理し、決算期に発生主義で修正するケースが多いですが、月次決算ではできるだけ発生主義で計上しましょう。
*ただし、多少手間がかかるため月次の期間損益の算定への影響が過少である場合などは従来通りで良いかもしれません。

 

発生主義による処理の例として、当月の家賃の支払いが前月の前払いという条件の場合の仕訳は次のようになります。

 

1月 前払家賃 15万円 / 現金 15万円

 

そして、翌月2月に経費の該当月として以下の費用計上が必要です。

 

2月 支払家賃 15万円 / 前払家賃 15万円

 

・月次棚卸による適正な売上原価の計上

毎月の売上原価を把握するため、売上高と売上原価との適正な関係を確保するためには、月次の棚卸を行いその棚卸資産の変動を売上原価に反映させ確定させなければなりません。もしそうしない場合は、売上原価が正確に把握できなくなるので注意しましょう。

 

売上原価の算定は、「月初在庫+仕入-月末在庫 = 売上原価」で得られ、以下の仕訳で確定できます。

 

仕入 / 繰越商品 
繰越商品 / 仕入 

 

例えば、月初在庫が300万円、月中仕入が500万円、月末在庫が200万円の場合の月中仕訳と月次決算仕訳は以下の通りです。

 

A 月中仕訳
仕入 500万円 / 現金 500万円

 

B 月次決算仕訳
仕入 300万円 / 繰越商品 300万円
繰越商品 200万円  / 仕入 200万円

 

C 売上原価の算定
300万円+500万円-200万円=600万円 

 

この例の売上原価は600万円になります。

 

なお、月次の棚卸が不可欠ですが、作業の負担の大きい場合は簡易な方法で対応することが重要です。実地棚卸が困難な場合は、商品の受入・払出を継続的に記録している帳簿残高で行う、売上高に一定の原価率を反映させて求める などの方法を検討するとよいでしょう。

 

・消費税の把握

税込経理方式で期末に消費税を計上すると損益に大きく影響することになるので、月次決算で消費税を把握しその影響を排除した損益を掴む必要があります。

 

消費税の税込経理方式の場合、収益や費用の額は消費税等の金額が伴う税込金額です。つまり、消費税等の金額が売上や原価などに含まれ、利益に影響することになるのです。

 

例えば、売上高1000万円に対しては1,080万円、家賃の支払い100万円に対しては108万円というように消費税等が含まれます。なお、例として、売上原価における人件費が600万円ある場合の損益は以下の通りです。

 

売上高     1080万円
人件費     600万円
家賃      108万円
税引前利益   372万円(税引前利益率 34.4%)

 

しかし、上記には消費税等が含まれているため控除する必要があります。売上高のうち80万円は仮受消費税等にあたり、支払家賃のうち8万円仮払消費税等にあたるのでその差額が消費税等としての支払対象です。つまり、「80万円-8万円=72万円」が消費税等として納める必要があるわけですが、その仕訳は次のようになります。

 

租税公課 72万円 / 未払消費税等 72万円

 

この結果は当然損益計算に入れるべきものになるので税引前利益は「372万円-72万円=300万円」となるのです。その結果、税引前利益率は30%となり、消費税等を計上する前よりも減少します。

 

こうした影響を回避するためには毎月の消費税を把握して、それを控除した損益計算で利益を算出する必要があります。

 

税抜経理方式の場合は、税込経理方式のような問題は生じないので税抜経理方式への移行は有効です。

 

④月次決算書の作成(出力)

③までの作業ができれば月次決算書の作成は、会計ソフトを利用しておれば容易です。そのため経営分析および月次会議で必要な書類・資料を適切に決めておくことが重要になります。

 

月次のデータを経営のどのよう場面で利用するのか、業績を向上させるために何が必要か、業務上の問題を発見するにはどの資料が適切か、といった点から必要な決算書や分析資料を決めましょう。

 

月次決算業務に慣れて正確さとスピードに余裕でてきたら作成書類も全社レベルから事業部門、支店や店舗、担当者の単位へと広げていくとよいかもしれません。

 

なお、一般的にアウトプットされる決算書や分析資料には以下のようなものが見られます。

 

全社ベースの損益計算書および貸借対照表
全社ベースの損益の推移表
全社ベースの資金繰表
借入金管理表
部門単位の損益計算書
部門単位の損益の推移表
得意先別、商品別の売上高推移表
経費管理表
売掛金残高表および買掛金残高表
在庫管理表
各種経営指標:売上総利益率、営業利益率、経常利益率、流動比率、固定比率、自己資本比率、売上債権回転率、棚卸資産回転率、損益分岐点比率、商品別貢献利益率 など

 

⑤予算と実績の比較分析を含む経営分析

企業の発展には目標の設定とそれに向けた効率的な企業活動が不可欠ですが、そのためには計画における数値目標が必要であり、予算として設定することが有効です。売上、原価や経費等を予算化することで、それを達成するための具体的な行動が期待できます。

 

そして、その予算を各月の業務の繁閑などを考慮して適切に設定することで、実際の企業活動の結果を適切に評価することが可能となり、業務改善や新たな成長へ繋げられるのです。

 

月次データから何を分析するかは企業によってさまざまですが、月次決算のレベルや企業の状況(規模、業種、事業内容等)に合わせて、分析範囲を少しずつ拡大させるとよいでしょう。導入初期は全社ベースの収益および費用の確認と原因分析から取り組み、徐々に事業部別、支店・店舗別、商品別・担当者別等へ対象範囲を広げることが望まれます。

 

なお、月次会議で事業部別や支店別等の月次報告を求める場合は、月次データを会議の2日前には提供し、問題点および原因の考察ができるようにしておかねばなりません。

 

⑥月次会議の開催

予算を達成していくためには月次決算データに基づいて企業の状況および問題点を把握し改善を検討するための月次会議が必要です。会議の出席者は経営陣のほか、各事業部門の責任者、支店・店舗の責任者などが候補となるでしょう。

 

月次決算で月次のデータを得てもそれを分析して、問題点や課題を見つけ原因を解消できる対策を打たないと業績の改善・向上は望めません。月次会議はそうした問題の確認と対策の立案の場となるべきです。

 

なお、企業によって何をするかは異なりますが、会議でやるべきことを明確に設定して、必要最低限の時間で完了できるように設計することが求められます。単に売上や原価の内容・推移を説明して終わりというのではなく、その結果となった原因の解決手段や事業をさらに強化する方法などの提案まで議論されるべきです。

 

また、当月の会議で決まった対策の実行結果を次月の会議で確認するといったルールの設定も必要になるでしょう。まとめると、月次会議では前月の経営状況の確認、問題点の把握、原因の追究、対策の立案、対策の実行結果の確認および改善が主なテーマとなるのです。

 

 

4 月次決算のデータで行う経営改善

ここでは月次決算のデータを活用してどのように経営に役立てるかという点を説明します。

 

 

4-1 月次データの主要なチェックポイント

経営の向上に役立ちやすい主な月次データのチェックポイントを紹介しましょう。

 

①売上高および利益の予算と実績の対比、推移の確認

売上高の予算と実績との比較、期単位や月単位の推移データを分析し、その増減の原因分析が求められます。複数の事業や店舗を展開している場合などは、事業単位や店舗単位のデータも同様に分析するべきです。さらに担当者単位での分析に展開できればなお良いでしょう。

 

利益も売上高と同様の分析が必要ですが、費用の面から増減の問題点を探ると原因が掴みやすいです。売上高総利益率の場合は売上原価の内容、売上高営業利益率の場合は販管費の内容チェックが重要になります。

 

例えば、ここ2~3カ月の売上高総利益率が同程度なのに売上高営業利益率が落ち込んでいる場合、販管費の増大が問題点の候補として挙げられます。その販管費の中で急に金額が多くなっている科目、例えば人件費等が主たる原因の候補として分析できるはずです。

 

なお、売上高も利益も自社のデータだけでなくライバル企業や業界でのデータと比較した分析も重要になります。同業者で同じ地域のライバル企業のデータを入手することは困難ですが、業界平均値や他の地域の企業のデータなら得られることもあるので分析に活用すべきです。

 

②商品等の残高の確認・分析

商品の在庫金額が適正かどうかの確認・分析が求められます。売上高の伸びに対応して在庫高が増加していればよいですが、そうでないなら資金繰りや長期在庫化・デッドストック化の点で問題です。そのため現状の在庫高が適正かどうか、増減している原因などの分析が求められます。

 

デッドストックや長期在庫の現状を把握するとともに、在庫回転率などの推移を確認し長期在庫化していないかの確認が重要です。

 

③資金繰りの確認

資金ショートは倒産に直結するため短期の資金繰りには特に注意が必要であり、一定期間の資金需要と資金の回収状況を確認しておかねばなりません。

 

短期資金の過不足を掴むための管理には資金繰表を作成して利用するのが有効であり、適切な資金管理が期待できます。毎月の現金売上および売上債権の入金・回収と現金支払いおよび買入債務の支払い・出金などを一覧表に記入することで現金の過不足の把握ができ便利です。

 

なお、キャッシュフロー計算書を分析して営業面、投資面、財務面からキャッシュの状況や問題点を掴むのもよいでしょう。

 

④売上債権の残高の確認

資金ショートに大きくかかわる売上債権の残高および回収状況を確認・分析するべきです。売上債権の増大が売上の増大に比例するものなら良いですが、そうでない場合は問題です。全社的な回収の遅延、特定顧客での回収の遅延といった状況の分析のほか早急な対策の実行が求められます。

 

分析には売上債権回転率や売上債権回転期間などを利用するとよいでしょう。

 

 

4-2 問題点および原因分析からの対策立案

ここでは前節の問題点と原因の分析から対策を立てる方法や例などを紹介します。

 

①売上高の回復や向上への対策

減少し出した売上高の回復を図るには減少した原因を突きとめそれを解消できる対策を立案すべきです。減少はしていないが他社と比べ売上高が横ばいである場合は、顧客の視点を踏まえて他社との比較から原因を探り解決策を検討することが求められます。

 

商品別の売上高を確認して特定の商品の売上の落ち込みが影響していると判断できた場合、その販売方法の強化や変更が必要です。広告宣伝の強化や値引きセールの実施のほか、新規取引先の拡大といった積極的なプロモーションの展開が必要になるかもしれません。

 

また、それらの方法が限界である場合は顧客ニーズを確認して早急に代替品の投入を進める必要もあるでしょう。

 

もちろんライバル企業の商品や営業活動に対する分析結果も踏まえて解決策を検討することも重要です。ライバル企業の商品と比べて、価格、性能、品質や納期のほかサービス面で自社製品が見劣りしていないか、チェックして不利になっている点を補強する対策が求められます。

 

②利益の回復や向上への対策

利益も売上高と同様の対策の立案が必要ですが、利益額に直結する費用の面に分析のメスを入れ対策を考えることが重要です。

 

事業別、商品別や店舗別で利益を確認して特定の事業などで利益が落ち込んでいる場合、直接的な原因はその事業そのものです。問題はその事業の何が原因で利益が落ちているかという点ですが、費用の増減や業界平均・ライバル企業のデータとの比較で予想がつきます。

 

例えば、ある月から人件費が増大して利益を圧迫している、他の事業と比べ広告宣伝費が多い、ライバル社等と比べ人件費や広告宣伝費が多い、といった内容が分析により確認できることもあります。

 

他店舗や他社と比べアルバイトの人数が多く人件費が多い場合の対策としては、人員を削減して効率的に稼働できる体制を整備するなどの手段が必要です。また、他社に比べ広告宣伝費が多い場合などは利用している広告媒体の効果を測定し直し、費用対効果の高い方法へ変更或は絞り込んでいくなどが考えられます。

 

③商品回転率の向上

売れるモノを多く揃え、売れないモノを排除していくことで商品回転率を上げ売上の向上と資金回収のスピードアップが実現できます。

 

商品別の売上高と利益額を月次データで把握できれば、何が売れ・売れていないか、何が儲かる・儲からないかが容易に判断でき、その原因を掴むことも困難ではないでしょう。

 

ただし、商品別というよりは特定のサイズ、カラー、形状等のタイプ、性能、価格帯などで売れ行きが悪いケースもあるので、そうした点の確認も重要です。

 

流通業でPOSシステムを導入していれば、上記のような状況は毎日把握することも可能ですが、導入していない場合は月次データで確認できることが求められます。

 

回転率の改善・向上には、多く売れているものを切れないように発注し在庫するという発注管理も重要です。定量発注方式や定期発注方式など多様な発注方式がありますが、自社の販売管理も考慮して最も有効な発注管理の方法を採用しましょう。

 

④資金繰りの改善

売上債権額が売上高の伸びに比べ大きい、同業他社と比べ多い場合などは資金繰りの悪化が懸念されるため改善策が実施されなければなりません。

 

資金繰表などでキャッシュの動きを掴み資金ショートの兆候が見られる場合には万が一に備えるための資金調達の準備も必要です。短期資金の確保においては機動的に実施できる手段を複数準備しておくことが望まれます。

 

例えば、生命保険等の解約、金融機関等のビジネスローンによる短期資金の迅速な借入、小規模企業共済からの貸付金の利用、といった方法です。

 

また、そうした資金調達を実際にしないで済ませるための対策も必要になります。資金ショートの原因はさまざまですが、顧客からの売上債権の回収遅れが原因となることもあるので事前の対策が重要です。

 

顧客からの支払手段は手形から現金に変更してもらう、新規取引では現金取引する、といった継続的な取り組みが求められます。特に大企業における資金調達のコストは極めて低い水準にあることから現金払いの大企業は少なくありません。顧客との関係性を考慮しつつ、現金取引を提案し実現のための交渉を粘り強く行うことが重要です。

 

売上債権管理も重要であり、売上債権の回収が遅れている顧客がないか、回収が遅れがちな店舗や担当者がないかチェックした上での適切な処置が求められます。

 

回収の遅れている顧客には支払の確実な履行や現金取引への変更を求めることも必要です。また、原因が自社の店舗や担当者にある場合は、売上の早期検収、確実な請求と回収の実行ができるように指導することも必要でしょう。

 

 


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