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改正された相続税法で富裕層が海外から戻ってくる?

(出典:CrystalsWeb)
(出典:CrystalsWeb)

4月から施行されている改正相続税法により、海外在住の富裕層から税理士に資産に関する相談が殺到していると日経電子版で報じられました。記事によると、従来は、海外に5年居住すれば相続税の適用対象外となるといういわゆる5年縛りのルールがあったため、やむ無く海外に渡る資産家たちがいました。

 

しかし、昨年末に発表された平成29年税制改正大綱で、4月1日より海外の居住期間が5年から10年となったことで、海外への資産移転を計画していた資産家たちは困惑。結果、税理士への問い合わせが急増しました。

 

政府は課税逃れのためだけに海外に移住する富裕層を国内に引き止めたい考えで、改正法の施行により帰国を検討している富裕層も多いとのことです。

 

もはや自然の流れともなった富裕層の国外流出は止めることはできるのでしょうか。

 

 

目次

  1. 1 改正相続法の概要
  2. 1-1 居住期間5年→10年に変更
  3. 1-2 相続税がある国とない国
  4. 1-3 アベノミクスで一転、資産フライトのオワコン化
  5. 2 富裕層の国外流出ランキング
  6. 2-1 2年連続でオーストラリアが流入数トップ
  7. 2-2 42000人の外国人富裕層が暮らすドバイ
  8. 3 今後も国外流出が予想される

 

1 改正相続法の概要

昨年12月に決定した税制大綱※では資産課税について以下のような見直しが図られました。

 

事業承継税制の見直し 災害時等における雇用確保要件の緩和
相続時精算課税制度との併用を認める
国外財産に対する相続税等の納税義務の範囲の見直し 住所が一時的である外国人同士の相続等については、国外財産を課税対象にしない
相続人または被相続人が10年以内に住所を有する日本人の場合は、国内及び国外双方の財産を課税対象とする
居住用超高層建築物に対する課税の見直し 居住用超高層建築物に係る固定資産税の税額の按分方法を、最近の取引価格の傾向を踏まえたものに見直し
償却資産に対する特例措置の対象追加 中小事業者等が取得する一定の機械・装置に係る固定資産税の課税標準の特例措置について、地域・業種を限定したうえで、その対象に一定の工具、器具・備品等を追加

 

 

1-1 居住期間5年→10年に変更

従来の税制では、資産を渡す人(親など)と相続する人(子どもなど)の両方が5年以上海外に居住すれば、相続税や贈与税の対象外となることができました。そのため、日本に住みたいが5年の我慢で相続税を回避できるならと考える資産家たちが多く、特に円高だった2011年以前はいわゆる資産フライトが話題となりました。

 

ところが海外居住期間を10年とする延長措置は、課税逃れのためだけに海外に移り住もうと計画していた富裕層の心理面に大きく影響を与え、すでに家族で海外に移住している人も、帰国か国籍を変えるかを検討しているといいます。

 

※ 税制改正大綱とは、翌年の日本の税制のあり方を網羅的にまとめた方針。景気や雇用情勢、財政健全化などを総合的に考慮し、税制改革の内容を細かく定めたものであり、政府・与党が毎年秋口から12月中旬頃にまとめ発表する。これにより翌年の国・地方自治体の税収見込みが立ち、国民生活や企業の事業計画などにも大きな影響を与える。この大綱に従い、翌年1月に行われる通常国会に税制改正関連法案が提出される。(出典:朝日新聞社 知恵蔵mini)

 

 

1-2 相続税がある国とない国

ところで、日本の相続税は先進諸国と比較するととても高く、フランス45%、米国40%、英国40%、ドイツ30%なのに対して、日本は55%となります。3世代で相続すれば資産がなくなる言われる税率です。

 

・主要国の相続税率比較

最高税率 最低税率 課税最低限 配偶者の免税
日本 55% 10% 3600万円 遺産額の半分
フランス 45% 5% 1350万円 あり
アメリカ※ 40% 18% 6億5160万円 米市民の配偶者
イギリス 40% 40% 6077万円 あり
ドイツ 30% 7% 5400万円 なし

(参照:日本税務協会)

 

一方、世界には相続税がない、または廃止している国も多く、たとえば北欧でのスウェーデンとノルウェーには相続税がありません。またカナダとオーストラリアは1970年代に相続税を廃止しました。アジアでは中国、マレーシア、シンガポールなどで相続税がなく、特にマレーシアやシンガポールは住みやすさから日本人資産家などに人気の居住先となっています。

 

また財務省が公表している主要国における相続税の負担率を見ると、配偶者が遺産の半分、子が残りの遺産を均等に取得した場合、課税価格10億円付近から日本の負担率がもっとも高くなっているのが分かります。

 

・主要国との相続税の負担率比較

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(参照:財務省

 

※ アメリカでは、2010年に遺産税は一旦廃止されたが、2011年に、基礎控除500万ドル、最高税率35%で復活した。当該措置は2012年までの時限措置であったところ、2013年以降については、2012年米国納税者救済法により、基礎控除500万ドルは維持しつつ最高税率を40%へ引き上げることとされた。なお、基礎控除額は毎年インフレ調整による改訂が行われ、2015年1月現在は543万ドル(6.3億円)となっている。(参照:財務省

 

 

1-3 アベノミクスで一転、資産フライトのオワコン化

2012年に政権が民主党(現民進党)から自民党に移ってからは円安が一気に加速。熱心に海外口座を開設していた人々も、外国での資産管理の維持の難しさに直面し、解約するケースが多くみられました。

 

司法書士の川原田慶太氏は、

 

「海外資産には取得時の苦労もありますが、維持・管理をしていくのも日本国内の資産に比べると難しいことがあります。例えば、預金口座一つをとっても、こまめにメンテナンスをしていないと、すぐにネットからのアクセスが凍結されたり、キャッシュカードが使えなくなったり、口座維持という名目でコストを課金されたりすることが起こりえます」(参照:NIKKEI STYLE

 

と話します。

 

 

2 富裕層の国外流出ランキング

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租税回避国(タックスヘイブン※)への資産移転は、海外では日本以上に行われているようです。2015年には64000人の富裕層が移住し、2016年では82000人に増えるなど、富の移転は加速しています。

 

調査会社のNew World Wealth(ニュー・ワールド・ウェルス)は、100万ドル(1億円)以上の資産家による海外移住者数を国別にランキング。海外流出がもっとも多かった国は、フランスで1万人でした。続いて中国9000人、イタリア6000千人、インド4000人となりました。

 

・富裕層流出国ランキング

順位 流出人数
1 フランス 10000人
2 中国 9000人
3 イタリア 6000人
4 インド 4000人
5 ギリシャ 3000人
6 ロシア 2000人
スペイン 2000人
ブラジル 2000人

 

フランスが流出数で第1位となった理由については、パリ同時多発テロなどを契機に、テロ事件を警戒する富裕層がもっとも多かったためだと見られています。

 

※ タックスヘイブンとは、外国資本や外貨獲得のために、意図的に税金を優遇(無税または極めて低い税率)して、企業や富裕層の資産を誘致している国や地域のこと。モナコ公国、サンマリノ、バハマ、バージン諸島、ケイマン諸島、アラブ首長国連邦、バーレーンなどが有名。アジア地域の香港やマカオ、シンガポールなども、税率が極めて低いため、事実上タックスヘイブン地域にあたる。(参照:WEB金融新聞)

 

 

2-1 2年連続でオーストラリアが流入数トップ

一方、富裕層がもっとも多く流入した国は、オーストラリアで8000人です。ついで、米国7000人、カナダ5000人、イスラエル4000、ドバイ3000人となりました。

 

・富裕層流入国ランキング

順位 流出人数
1 オーストラリア 8000人
2 アメリカ 7000人
3 カナダ 5000人
4 イスラエル 4000人
5 ドバイ 3000人

 

オーストラリアが富裕層がもっとも好む移住先となっている理由として、医療水準が高く、医療設備も充実していることが挙げられます。
また、中国、香港、韓国、シンガポールといった新興アジア諸国でビジネスを行ううえでアドバンテージがあることも大きな理由です。さらに、西アジアの混乱やヨーロッパの難民危機には縁遠く、英語圏でありながら米国や英国よりも相続税がはるかに低い点も魅力のひとつとなっているようです。

 

 

2-2 42000人の外国人富裕層が暮らすドバイ

近年、海外富裕層に人気の移住先となっているのがドバイです。現在、42000人以上の外国人富裕層がドバイに居住しており、2016年は新たに2000人追加されたことで、富裕層人口は5%増加しました。

 

特にエジプト、アルジェリア、モロッコ、トルコなど、北アフリカからの流入が多かったと、ニュー・ワールド・ウェルス社は報告しました。

 

また、中国メディアのレコードチャイナによれば、ドバイの人口の1割が中国人とされます。中国人投資家による高級物件の買い占めは2015年頃に話題となりました。ドバイに設立された中国系企業は4200社に上り、中国人旅行者は前年比で4倍に増えました。

 

このほか、バーレーンでも富裕層が移住するなど中東が富裕層から人気の移住先に選ばれる傾向があります。

 

 

3 今後も国外流出が予想される

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(出典:Innovators magazine)

 

2016年末時点で世界で約1,360万人の100ドル以上の富裕層がおり、その総資産は69兆ドル(7541兆円)に達します。ニュー・ワールド・ウェルスによれば、世界の富は2016年までの10年間で35%上昇すると予測されています。また次の富裕国にはベトナム、中国、インド、モーリシャス、スリランカなど高い成長率を維持する新興国がなるとも予想されています。

 

富裕層とそれ以外の格差はますます広がるばかり。各国政府は富裕層をなんとかして自国にとどめたい考えですが、少しでも節税したいと考える富裕層とのイタチごっこは今後も続きそうです。

 

 


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