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【個人事業主と法人ではこれだけ違う!】決算と確定申告や納めるべき税金について詳しく解説!

決算と確定申告は切り離せないものです。決算は事業活動を評価するさいの「成績表」のようなもので、確定申告は決算結果にしたがって所得や課税額を申告し納税するものです。しかし、決算と確定申告の方法は個人事業主と法人では異なり、納めるべき税金の種類や税率も異なってくるのです。

 

たとえば、給与所得者が退職して個人事業を始める場合や、個人事業者が「法人成り」で法人の設立を検討している場合を考えてみましょう。個人事業や法人の決算の内容や確定申告の手続き、それに納めなければならない税金の種類や税率など、それぞれの違いを理解していないと戸惑う事にもなりかねません。

 

そこで、決算や確定申告とは何かという基本的なことや、法人と個人事業主の決算と確定申告の手続きや内容について、まず説明します。次に他に確定申告が必要な場合や、確定申告により納税する税金の種類や税率などについて解説します。特にこれから個人事業を行う方や、法人成りを考えている個人事業主の方など、納税方法が変わる可能性のある方に参考にして頂ければと思います。

 

 

1 決算と確定申告

決算とは1年間の事業活動の収入と支出を計算し、利益または損失を算出し確定することです。決算は個人事業主や法人だけでなく、国や地方公共団体も行います。一方確定申告は、決算により算出・確定した会計結果をもとに、所得税や法人税および消費税などの納税額を確定し申告の手続きを行うことを言い、確定申告で申告した内容により納税します。

 

 

1-1 国や地方公共団体の決算

国や地方公共団体にも決算があり、当然のことですが確定申告はありません。国や地方公共団体では3月までに予算を作成し、4月1日から翌年3月31日までの1年間を会計年度として歳入と歳出を管理し、年度終了後に予算と実績とを対比して決算を行います。

 

①国の決算

国の決算は財務省が作成して会計検査院が検査し、次年度に内閣が検査報告と一緒に国会に提出します。国会で承認されれば決算終了となります。

 

②地方公共団体の決算

方公共団体では、現金の未収・未払いをする出納の閉鎖期間(4月1日から5月31日)から3ヵ月以内に会計部門が決算を作成して監査委員が検査し、知事へ提出します。知事は決算と検査報告を議会に提出し、決算を承認してもらえば決算終了です。

 

 

1-2 法人や個人事業主の決算と確定申告

法人や個人事業主は1年間の事業年度期間の収支を整理して決算を行い、それに基づいて確定申告と納税を行います。

 

 

1-3 その他に確定申告が必要な場合

源泉徴収で税金が給与から天引きされる給与所得者などでも、確定申告が必要な場合がありますので注意が必要です。

 

法人や個人事業主など事業を営む者は事業活動の決算と確定申告を行う必要があり、給与所得者でも確定申告が必要な場合があります。それぞれの決算と確定申告の手続きや申請方法と税金について、これから詳しく解説します。

 

 

2 法人の決算と確定申告

法人は事業活動の日々の収支を複式簿記で記帳し、決算で事業年度期間の収支を整理して損益を確定し、決算結果をもって確定申告を行い納税しなければなりません。

 

 

2-1 決算月

法人の決算月は、法人設立時に自由に決定できます。年1回決算の法人が多いのですが、投資家への情報公開を意識した年2回決算の法人もあります。平成28年度の法人数は268万3570ありますが、年2回決算の法人は2842で全体の約0.8パーセント程度です。

 

月の中では3月決算の法人が最も多く、大企業ほどその傾向が高くなります。これは、国や地方自治体の決算月が3月であるため、行政機関と関係するビジネスを行っていれば決算月も合わせた方が円滑に事業遂行できるということも理由の1つです。

 

また税制関連の法律を含め法律を改正した場合、その施行日が4月1日となる場合が多いため、法律改正による混乱を避けるためという意味もあります。

 

 

2-2 法人の決算で作成整理する帳簿書類

法人決算では決算月まで、たとえば決算月が3月の場合は前年の4月1日から3月31日までの1年間の収入と支出を計算して利益または損失を算出します。

 

この決算の過程で、納税に必要な帳簿と書類(帳簿書類)を整備します。帳簿として総勘定元帳・仕訳帳・現金出納帳・売掛金元帳・買掛金元帳・固定資産台帳・売上帳・仕入帳などがあり、書類は棚卸表・貸借対照表・損益計算書・注文書・契約書・領収書や、納税のさいに必要な申告書などあります。

 

①帳簿

仕訳帳は日々全ての取引を日付順に記録するもので、勘定科目を使って「貸方」と「借方」に分けて記載します。

 

総勘定元帳は、全ての取引を勘定科目ごとに記録した書類で、単に「元帳」と呼ばれることもあります。総勘定元帳から、決算の重要な書類である貸借対照表と損益計算書が作成されます。

 

現金出納帳は現金の入出金を記録し、売掛金元帳は売上金の未収金を、買掛金元帳は未払い金を管理するための帳簿です。売上帳と仕入帳は、何を単価いくらで何個売ったか買ったかを記録する帳簿です。

 

固定資産台帳では、その法人で継続して使用する土地・家屋・机・PC等の資産の中で10万円以上のものを記録する帳簿です。決算で作成される書類には、固定資産の総額は記載されますが明細はわからないため、その詳細を明らかにするものです。また、固定資産の減価償却費用計算の根拠にもなります。

 

②書類

帳簿類から作成される決算書類と、決算の資料・証拠となる書類があります。特に、貸借対照表・損益計算書・勘定科目内訳説明書・個別注記表などをまとめて、決算報告書とも呼びます。

 

貸借対照表(B/S: Balance Sheet)は、決算日時点でのその法人の資産と負債およびその差額である純資産(自己資本)をあらわすもので、資産は負債と純資産を足したものになります。賃貸対照表でその法人の財政状態が分かります。

 

損益計算書(P/L: Profit and Loss statement)は、法人の1年間の決算期間の収益と費用を整理して比較し利益を示すものです。損益計算書は投資家などの利害関係者に、その年度の事業成績を提供します。

 

勘定科目内訳説明書は、賃貸対照表や損益計算書に記載された勘定科目の内訳を明らかにする書類です。

 

個別注記表は、法人の方針についての重要な注記や、賃貸対照表・損益計算書に関する注記をまとめた書類です。個別注記表を作成せずに、賃貸対照表・損益計算書などに注記することも認められています。

 

法人事情概況説明書は、法人の事業内容や取引情報、従業員の状況などを記した書類で、注文書や契約書、領収書は取引の正当性を証明するための書類です。

 

棚卸表は未出荷の商品や半製品・仕掛品などの未完成の商品、商品の原材料や備品及び費やした人件費や外注費などをまとめたもので、売上原価の算出のさいに使用されます。

 

③納税申告書

法人が納税をするさいの申告書も決算で作成します。法人は、法人税・法人事業税・法人住民税・消費税が課税されますので、法人税申告書と消費税申告書及び地方税申告書を作成します。なお、法人税と法人事業税は1つの申告書でまとめて納税します。

 

なお、納税申告書は確定申告のさいに必要となります。決算で作成しなければならないものではありませんが、納税額を確定する必要がありますので、決算のさいに作成する方が合理的です。

 

 

2-3 決算の公告

株式会社は定時株式総会の終了後、すぐに賃借対照表を公告しなければなりません。大会社(賃借対照表で資本が5億円以上か負債が200億円以上)は賃借対照表と損益計算書の公告が必要です。ほとんどの大企業はIR(Investor Relations:投資家向け広報)で決算公告を行っていますが、会社法に違反する決算公告を行っていない株式会社も多数存在します。

 

なお、決算の公告が不要な例外として特例有限会社があります。特例有限会社は2006年の会社法施行以前に有限会社であった会社で、現在もそのまま「有限会社」の商号を使用しているものです。

 

 

2-4 確定申告の時期

法人の確定申告と納税は、事業年度の終了日の翌日から2ヵ月以内に行わなければいけません。決算月が3月であれば、5月31日迄です。

 

 

2-5 決算帳簿書類の保存義務

法人は、決算や確定申告で作成した書類の保存義務があります。保存の方法は原則紙ですが、事前に税務署長に申請して承認を受ければサーバーやDVD/CD等の電磁的保存も可能です。

 

帳簿書類の保存期間は、原則、確定申告書の提出期限の翌日から7年間です。たとえば3月決算の法人であれば確定申告書の提出期限は5月31日となり、平成29年度の決算書類は平成30年6月1日から7年間ですので平成37年5月31日まで保存しなければなりません。

 

但し、平成30年4月1日以降の「欠損金が発生する」事業年度では、保存期限が10年になりますので注意が必要です。

 

 

3 個人事業主の決算と確定申告

個人事業は納税のために確定申告が必要で、日々の取引を記録し事業年度期間の事業収支の決算を行わなければなりません。個人事業主は、法人と異なり決算を公告する義務はありませんので、主に確定申告のために決算を行います。言い換えると、確定申告のために行う一連の作業が決算です。

 

 

3-1 決算月と確定申告期間

個人事業の決算月は法人と異なり、12月と決まっています。したがって、1月1日から12月31日の期間の事業活動の収入と支出を整理して決算し、確定申告を行うことになります。確定申告の期間は、2月16日から3月15日の1か月間で、この期間内であればいつでも申告しても構いません。

 

 

3-2 確定申告が不要な場合

個人事業主が得た収入には所得税が課せられますが、この所得税には所得控除の決まりがあり、一定の所得以下の場合には所得税の納税を行う必要がありません。1年間の収入から事業に必要な費用を差し引いたものが所得になりますが、所得控除はこの所得から更に差し引ける費用です。

 

まず基礎控除として38万円を所得から控除できますので、所得が38万円以下ならば確定申告は不要です。

 

次に基礎控除以外に、災害や盗難で資産が損害を受けた場合の雑損控除や、医療費控除、寄付金控除、小規模企業共済等掛け金や社会保険や生命保険・地震保険などの各種保険料控除があります。更に障害者・寡婦(寡夫)・勤労学生に対する控除や、配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除など、個人的な事情を考慮した控除があります。

 

基礎控除に加えてこれらの所得控除金額を全て所得から差し引いて、所得がマイナスとなれば確定申告は不要となります。

 

 

3-3 個人事業主の確定申告は2とおり

個人事業主は確定申告の方法として、白色申告と青色申告の2種類から選択できます。白色申告は青色申告より比較的簡易な決算方法ですが、優遇措置が少ない方法です

 

 

3-4 個人事業主にかかる税金

個人事業主が白色申告または青色申告による確定申告により納める税金は、所得税・個人事業税・住民税・消費税の4つです。

 

それでは、この白色申告と青色申告による確定申告について順に説明します。

 

 

4 個人事業主の白色申告による確定申告

白色申告は青色申告に比べ、簡易な確定申告の方法です。

 

 

 

4-1 白色申告の方法

白色申告は、事前に事前申請なしで個人事業者が確定申告を行う方法です。つまり、申告しなければ白色申告になります。

 

 

 

4-2 白色申告で利用できる控除や繰越制度2つ

白色申告は青色申告に比べて優遇措置が多くありませんが、2つほど利用できる制度を説明します。

 

・白色事業専従者控除

白色事業専従者控除は、事業の専従者が事業主の配偶者の場合は86万円を控除し配偶者でない場合は1人につき50万円を控除した金額と、所得金額を専従者の数に1を足した数で割った金額を比べて低額の金額を、所得金額から控除するというものです。

 

たとえば、300万円の所得で専従者(非配偶者)が1人の場合は、300万円を2で割った金額150万円と86万円を比べ、金額の低い86万円が控除されます。ただし白色事業専従者控除を受けるためには、白色申告者と同じ生計の配偶者かそのほかの親族で、15歳以上で事業期間中6カ月を超える期間事業に従事していることが必要です。

 

②変動所得と被災事業用資産の損失繰越

白色申告で損失が出た場合は通常は損失の繰り越しができませんが、変動所得と被災事業用資産の損失については、3年間損失を繰り越せます。

 

変動所得とは、漁業やのり採取または魚介類の養殖での所得や、原稿や作曲での所得や著作権使用料など変動の大きな所得のことで、変動所得が損失となった場合に3年間繰越控除できます。

 

被災事業資産の損失繰越は、不動産所得や山林所得のある固定資産や、棚卸資産・未収穫農作物などが災害により損害を受けた場合に適用できるもので、損失を3年間繰り越せます。

 

 

4-3 提出書類

白色申告では「収支内訳書」と「確定申告書B
を税務署に提出します。

 

収支内訳書には、一般用と農業所得用及び不動産所得用の3つがあり、事業内容に応じた用紙を選んで記入します。農業所得と不動産所得以外の申告であれば一般用を選択しますが、たとえば、本業の他に不動産所得があれば一般用と不動産所得用の2つを作成する必要があります。

 

収支内訳書は1枚目に所得の計算に必要な収入や原価・経費・納税額・控除などを記入し、2枚目に1枚目の内訳を記載します。

 

収支内訳書の作成が終了したら、確定申告書Bを作成します。確定申告書Bは第一表と第二表があり、第一表に課税所得などを記入して納税額を確定し、第二表には必要事項を記入して納税額を確定します。

 

ここで複数の収支内訳書を作成する必要がある場合、確定申告書Bはそれらを「合算」して作成しなければなりません。所得税は累進課税となっており課税所得が増えれば税率も高くなるため、それらを分けて納税額を抑えることはできないのです。

 

 

4-4 書類の保存期間

白色申告では帳簿書類に保存義務があります。決算のもとになる収入金額や必要経費を記載した帳簿(法定帳簿)の保存期限は7年です。業務に関して作成した法定帳簿以外の帳簿(任意帳簿)や、決算に関して作成した棚卸表その他の書類、または業務に関して作成し、又は受領した請求書、納品書、送り状、領収書などの書類については5年です。

 

保存期間の開始は、確定申告を行った「翌年」の3月15日からですので注意して下さい。

 

 

5 個人事業主の青色申告による確定申告

青色申告は白色申告に比べて納税の優遇措置があり有利な制度です。青色申告の方法は3とおりあり、青色申告の優遇措置として、青色申告特別控除と純損失の繰越控除、青色事業専従者給与及び少額減価償却資産の特例の4つがあります。

 

 

5-1 青色申告の方法

青色申告の方法には、簡易簿記と複式簿記の2つがあり、特例として現金主義での申告が認められています。それぞれの方法について説明します。

簡易簿記 簡易簿記で使用する標準的な帳簿は、現金出納帳・売掛帳・買掛帳・経費帳・固定資産台帳の5種類。複式簿記に比べ簡易な方法
複式簿記 複式簿記では、全ての取引を勘定科目にしたがって「貸方」と「借方」に分けて記帳し、勘定科目ごとに集計する。一般に「簿記」というと、通常はこの複式簿記を指す
現金主義での申告 簡易簿記・複式簿記共に取引が発生した時点で取引を計上する発生主義が基本であるが、現金主義とは現金の授受の時点で取引を計上する方法。現金主義で確定申告には条件があり、前々年の所得金額が300万円以下の小規模事業者で、かつ事前の届け出と承認が必要となる

 

 

5-2 青色申告の優遇措置5つ

青色申告では色々な優遇措置があります。青色申告での優遇措置5つを以下に説明します。

 

①青色申告特別控除

青色申告特別控除は、所得金額から最高65万円または10万円を控除する制度です。

 

65万円控除の条件として、

  • 不動産所得か事業所得がある
  • 所得を総勘定元帳や仕訳帳などの帳簿に複式簿記で記帳する
  • 帳簿から作成した貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添付して申告する

などがあり、不動産所得と事業所得の合計額が65万円に満たないと、それが控除の上限となります。

 

65万円控除でない場合は10万円控除になります。不動産所得・事業所得・山林所得の合計額が10万円に満たないとそれが上限となります。

 

・青色事業専従者給与

青色申告では、青色事業専従者給与を必要経費にできます。その要件として、青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族で、15歳以上であり青色申告者の営む事業に従事していることが必要です。但し、青色事業専従者として給与を受け取る人は控除対象配偶者や扶養親族になれません。

 

③貸倒引当金

青色申告者が事業の遂行上生じた売掛金・貸付金などの貸金の貸倒れによる損失の見込額として、貸金の帳簿価額の合計額の5.5%以下の金額を貸倒引当金勘定へ繰り入れたときは、その金額を必要経費として認められます。ただし、金融業の場合は 3.3%になります。

 

・純損失の繰越控除

青色申告であれば、純損失を3年にわたって繰り越せます。

 

・少額減価償却資産の特例

価格が10万円以上の固定資産は減価償却が必要になります。つまり、仕事で使う車を200万円で購入しても、その全額をその年の経費にできず数年にわたって資産価値を減らしながら経費計上する必要があります。

 

しかし、青色申告では「少額減価償却資産の特例」によりを受けられ、30万円未満の固定資産はその事業年度の経費として全額計上できます。利益が多く出る場合は、この制度を利用して納税額を抑えられますが、この特例には合計の上限額があり300万円までとなりますので注意が必要です。

 

 

5-3 提出書類

青色申告では、「青色申告決算書」と「確定申告書B」を提出します。

 

青色申告決算書には、一般用と農業所得用及び不動産所得用に加え現金主義用の4種類があり、事業内容に応じた用紙を選択して記入します。農業所得と不動産所得以外の申告であれば一般用を選択しますが、たとえば、本業のほかに不動産所得があれは一般用と不動産所得用の2つを作成する必要があります。

 

青色申告決算書は、現金主義様式の場合は損益計算書と貸借対照表の2枚となっていますが、それ以外の青色申告決算書は、3枚に渡る損益計算書に1枚の貸借対照表という構成になっています。

 

青色申告決算書の作成が終了したら、確定申告書Bを作成します。確定申告書Bは第一表と第二表があり、第一表に課税所得などを記入して納税額を確定し、第二表には必要事項を記入して納税額を確定します。

 

ここで複数の青色申告決算書を作成しなければならない場合、確定申告書Bはそれらを「合算」して作成する必要があります。所得税は累進課税となっており課税所得が増えれば税率も高くなるため、それらを分けて納税額を抑えることは許されないからです。

 

 

5-4 書類の保存期間

青色申告では帳簿書類に保存義務があります。決算のもとになる帳簿書類の保存期限は基本的に7年です。請求書・見積書・契約書・納品書・送り状などの書類は5年ですが、他の帳簿書類と合わせて7年保管する方が管理も容易です。

 

保存期間の開始は、確定申告を行った「翌年」の3月15日からですので注意して下さい。

 

 

6 その他に確定申告が必要な場合

個人事業主でない給与所得者などでも確定申告が必要な場合があります。

 

 

 

6-1 給与所得者で確定申告が必要な場合

ほとんどの給与所得者は、雇用主が行う年末調整によって所得税額が確定し納税も行いますので基本的に確定申告は不要ですが、確定申告が必要な場合を列挙します。

 

①給与の年間収入金額が2,000万円を超える人
②1か所から給与の支払を受けている人で、給与と退職金以外の所得が20万円を超える人
③複数から給与の支払を受けている人で、主な給与以外の収入が20万円を超える人
④同族会社の役員で、その会社から貸付金の利子や資産の賃貸料などを受け取っている人
⑤災害減免法により源泉徴収の猶予を受けている人
⑥源泉徴収義務されない給与の支払を受けている人
⑦退職所得の税額が源泉徴収された金額よりも多くなる人

 

なお、源泉分離課税される株式やFX(外国為替取引)による所得は、所得税の課税対象とはなりません。

 

 

 

6-2 公的年金受給者で確定申告が必要な場合

公的年金受給者で源泉徴収を受けている方は、年金額が400万円以下で年金以外の所得が20万円以下であれば、「確定年金不要制度」により確定申告が不要です。したがって、年金所得が400万円超か年金以外の所得が20万円超であれば確定申告が必要です。

 

 

 

6-3 源泉徴収されない退職所得がある場合

給与所得者の退職金は通常は雇用主により源泉徴収されますが、外国企業などで退職金の源泉徴収が行われない場合は確定申告が必要です。

 

 

6-4 贈与税も確定申告と同じ期間に申告が必要

確定申告の範囲から外れますが、贈与税の納税も忘れないでください。贈与税は1月1日から12月31日の間に贈与された財産について、2月1日から3月15日の間に申告が必要です。確定申告と同じ期間に贈与税の申告も必要ですので、留意して下さい。

 

 

7 確定申告で納める税金と税率について

確定申告により、法人では「法人税」「法人事業税」「法人住民税」「消費税」の4つが、個人事業主であれば「所得税」「個人事業税」「住民税」「消費税」の4つが納税対象となります。各々の税額や税率について説明します。

 

法人 法人税
法人事業税
法人住民税
消費税
個人事業主 所得税
個人事業税
住民税
消費税

 

 

7-1 法人税

法人税は法人の所得から、投資や雇用促進・子育て支援などの特別償却・特別税額控除などを控除し、法人税率を掛けた額になります。法人税の税率は、法人の種類により税率が異なりますが、法人の種類として、公益法人・社団法人・協同組合など色々ありますが、ここでは一般企業である中小法人と普通法人の税率について説明します。

 

・中小法人

資本金1億円以下の中小法人では、年800万円以下の部分の税率は15%で、これは本来の税率19%に対する軽減税率15%が平成31年3月31日まで延長されたものです。年800万円超の部分は23.4%の税率となりますが、平成30年4月1日以降は23.2%となります。

 

・普通法人

中小法人以外の普通法人は法人税率23.4%が適用されます、平成30年4月1日以降は23.2%になります。

 

 

7-2 法人事業税

法人事業税は、地方自治体から法人が事業を行ううえで都道府県の行政サービスや公共施設を利用することに対して負担を求めるもので、法人事業税は都道府県に納税します。

 

法人事業税は所得割額・付加価値割額・資本割額・収入割額から成りますが、付加価値割額・資本割額は外形標準課税対象法人(資本金1億円以上の法人)が対象で、収入割額は特定業種(電気・ガス・保険)が対象となっています。

 

所得割額は所得に税率を掛けたもので、付加価値割額は付加価値額(報酬給与額・純支払利子・純支払賃借料・単年度損益を全て加えた額)に税率をかけたもの、資本割額は資本金に税率を掛けた額になります。

 

また法人の規模で所得割額の税率が異なります。軽減税率不適用法人と呼ばれる,3つ以上の都道府県に支店などがある法人で資本金が1千万円以上の法人は税率が高く、「軽減税率適用法人」と呼ばれるそれ以外の法人は所得割額の税率が軽減されます。

 

・外形標準課税対象法人以外

外形標準課税対象法人以外では所得割額のみで、所得に対する税率は次のとおりです。

 

【軽減税率適用法人】

400万円以下の部分:3.4%
400万円超800万円以下の部分:5.1%
800万円超の部分:6.7%

 

【軽減税率不適用法人】

所得の6.7%

 

・外形標準課税対象法人

外形標準課税対象法人は、所得割額と付加価値割額と資本割額が課され、付加価値割額は付加価値額の1.2%、資本割額は資本金の0.5%です。所得割額の税率は次のとおりとなります。

 

【減税率適用法人】

400万円以下の部分:所得の0.3%
400万円超800万円以下の部分:所得の0.5%
800万円超の部分:所得の0.7%

 

【軽減税率不適用法人】

所得の0.7%

 

 

7-3 法人住民税

法人住民税は、法人も行政サービスを受けるため個人と同じように「住民税」を徴収して負担を分担するというものです。法人住民税には法人県民税と法人市町村民税がありますが、東京23区にのみ事業所のある法人はだけは例外的に法人都民税として一括となっています。法人住民税は、法人税割と均等割を足した税額となります。

 

法人県民税
法人税割は法人税に3.2%を乗じた金額で、税率は都道府県により異なりますが上限となる制限税率は4.2%です。なお、平成31年10月1日以後の事業年度では1.0%(制限税率2.0%)となります。均等割は次のとおりです。

 

【均等割】

1000万円以下:2万円
1000万円超1億円以下:5万円
1億円超10億円以下:13万円
10億円超50億円以下:54万円
50億円超:80万円
※都道府県により、均等割に森林環境税を上乗せしている場合が有ります。

 

・法人市町村民税

法人税割は法人税に9.7%を乗じた金額で、税率は都道府県により異なりますが上限となる制限税率は12.1%です。なお、平成31年10月1日以後の事業年度では6.0%(制限税率8.4%)となります。均等割は次のとおりです。

 

【均等割】

1000万円以下:12万円(従業者数50人超)、5万円(従業者数50人以下)
1000万円超1億円以下:15万円(従業者数50人超)、13万円(従業者数50人以下)
1億円超10億円以下:40万円(従業者数50人超)、16万円(従業者数50人以下)
10億円超50億円以下:175万円(従業者数50人超)、41万円(従業者数50人以下)
50億円超:300 万円(従業者数50人超)、41万円(従業者数50人以下)

 

 

7-4 所得税

所得税の税率は5%から45%の7段階の累進課税となっており、所得から所得控除金額を差し引いた課税所得金額に所得税率をかけて所得税を算出します。

 

・所得控除

まず基礎控除として38万円を所得から控除できます。基礎控除以外に、災害や盗難で資産が損害を受けた場合の雑損控除や、医療費控除、寄付金控除、小規模企業共済等掛け金や社会保険や生命保険・地震保険などの各種保険料控除があります。更に障害者・寡婦(寡夫)・勤労学生に対する控除や、配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除など、個人的な事情を考慮した控除があります。

 

なお、日本国内に住所がない非居住者の場合の所得控除は、雑損控除、寄附金控除、基礎控除の3つのみです。

 

②所得税率

平成25年から平成49年までの各年分の確定申告では、本来の所得税率に加え東日本大震災復興のための「復興特別所得税2.1%が加算されます。本来の所得税率は次のとおりで、括弧内の金額は控除額です。

 

【所得税率】

195万円以下:5%(0円)
195万円超330万円以下:10%(9万7500円)
330万円超695万円以下:20%(42万7500円)
695万円超900万円以下:23%(63万6000円)
900万円超1800万円以下:33%(153万6000円)
1800万円超4000万円以下:40%(279万6000円)
4000万円超:45%(479万6000円)

 

 

7-5 個人事業税

個人事業税は、地方自治体から個人が事業を行ううえで都道府県の行政サービスや公共施設を利用することに対して負担を求めるもので、都道府県に納税します。個人事業税は確定申告を行えば納付書送られて来ますので、自分で個人事業税の計算を行う必要はなく、8月と11月の年2回の納付となります。

 

個人事業税の税額を計算する必要はありませんが、次のとおり事業所得から控除金額を差し引いた金額に税率を掛けて算出されます。

 

・控除

個人事業税は所得から色々な控除額などを差し引いて算出した課税所得に税率をかけて計算します。個人事業税では、課税所得から事業主控除290万円を差し引けます。

 

・税率

税率は個人事業の業種により分かれますが、業種の概略と税率は次のとおりです。
第1種事業(物品販売業や飲食業等):5%
第2種事業(水産業や畜産業等):4%
第3種事業(医者や税理士等):5%

 

 

7-6 個人住民税

個人住民税は、所得税の確定申告を行うと行政から納税通知書が送られて来ますので、確定申告をしていれば自ら税額の計算を行う必要はありません。また給与所得者は源泉徴収により、給与天引きで徴収されます。

 

給与所得者は毎月源泉徴収により徴収され雇用主が納税(特別徴収)しますが、個人事業主が確定進行を行うと毎年6月に税額通知書が送付されます(普通徴収)。その税額通知書により納税しますが通常は6月・8月・10月・1月の年4期に分けて納税します。

 

個人で税額を計算する必要はありませんが、個人住民税には都道府県民税と市町村民税があり、それぞれ所得割・均等割と利子割・配当割・株式等譲渡所得割を合算し、更に東日本大震災の復興増税分を上乗せしたものです。

 

①所得割

所得割は「前年の所得」から各種控除を差し引いた課税所得に、10%(都道府県民税6%と市町村民税4%)を掛けた金額になります。

 

②均等割

均等割は、都道府県民税1000円と市町村民税3000円の合計4000円が基本金額です。これに加えて復興増税加算分が各500円で計1000円が、平成26年度~平成35年度までの10年間上乗せされ、計5000円となります。

 

③利子割・配当割・株式等譲渡所得割

銀行預金金利やFXや株式などの分離課税の利益については、20%(所得税の15%と住民税5%)が申告分課税または源泉分離課税により徴収されます。

 

なお、平成25年から平成49年までの各年分の確定申告では、本来の税率に加え東日本大震災復興のための復興増税分0.315%が所得税に加算され、税率は20.315%となります。

 

 

7-7 消費税

消費税は「消費」に対して課される間接税で、消費者が払った消費税を個人事業者や法人が納税するものです。

 

【消費税が非課税となる取引】

「消費」に対する課税という消費税の性格になじまないもの。

  • 土地の譲渡や貸付け
  • 有価証券や手形の譲渡
  • 利子・保証料・保険料
  • 郵便切手・印紙や商品券・プリペイドカードなどの譲渡
  • 各種証明書発行時の行政手数料
  • 外貨との両替

 

政策的に課税することが妥当でないもの。

  • 社会保険医療・介護保険サービス・社会福祉事業
  • 出産費用・埋葬料・火葬料
  • 身体障害者用の物品譲渡や貸付け
  • 学校の受験料・入学金・授業料や教科書代など
  • 住宅の貸付け

 

【消費税の課税事業者】

前々年度の課税売上高が1000万円を超える場合は、課税事業者となり消費税を納税しなければなりません。また前々年度の課税売上高が1000万円以下でも、事業年度開始から6ヶ月で課税売上高が1000万円を超えれば課税事業者となります。また消費税納税が不要な免税事業者でも、申請すれば課税事業者となれます。

 

【税率】

消費税の税率は6.3%で、地方消費税の税率1.7%と合わせた税率は8%となります。一般に「消費税」と呼ばれるのは、国税の消費税と地方消費税を合わせたものです。

 

【一般課税による消費税算出】

課税売上げの消費税額から、課税仕入れの消費税額を控除して納付する消費税額を計算します。つまり、課税売上高に消費税率6.3%をかけた額から、課税仕入れ額に6.3%を掛けて1.08で割った額を引けば納付する消費税額となります。

 

【簡易課税制度による消費税算出】

課税売上げの消費税額に「みなし仕入率」を掛けた金額を、課税仕入れの消費税額とみなして納付する消費税額を計算できます。つまり、課税売上高に消費税率6.3%をかけた額から、課税仕入れ額に6.3%を掛けてみなし仕入れ率を掛けた額を引けば納付する消費税額となります。但しこの制度を利用するには条件があり、課税売上高が5000万円以下の事業者で、事前に届出書を提出しなくてはなりません。

 

【みなし仕入率】

第1種事業(卸売業):90%
第2種事業(小売業):80%
第3種事業(製造業等):70%
第4種事業(その他):60%
第5種事業(サービス業等):50%
第6種事業(不動産業):40%

また複数の事業がある場合は、それぞれの事業毎の消費税を計算して合計します。

 

【地方消費税の計算】

国税の消費税額に1.7を掛けて6.3で割れば、地方消費税額となります。

 

【消費税の申告と納付】

確定申告と納付のほかに、中間申告と納付が必要な場合があります。

 

【確定申告と納付】

個人事業者は3月31日まで、法人は課税期間最終日の翌日から2か月以内に、消費税と地方消費税を申告し納付する必要があります。

 

【中間申告と納付】

前回の消費税額が48万円を超えると、中間申告と納付を行わなければなりません。また同時に消費税額に1.7を掛けて6.3で割った額を、地方消費税額として納めなければなりません。

 

48万円超400万円以下:年1回(2分割)
400万円超4,800万円以下:年3回(4分割)
4,800万円超:年11回(12分割)

 

また、前回の消費税額が48万円以下であっても、事前に申告すれば自主的に年1回の中間申告と納付ができます。

 

【届出】

事業者が届出を行わなければならないのは、次の場合です。

  • 基準期間の課税売上高が1,000万円を超えるとき又は1,000万円以下となったとき
  • 特定期間の課税売上高が1,000万円を超えることとなったとき
  • 資本金の額又は出資の金額が1,000万円以上の法人を設立したとき
  • 免税事業者が課税事業者を選択するとき、又は選択を取りやめるとき
  • 簡易課税制度を選択するとき、又は選択を取りやめるとき
  • 課税期間の特例を選択又は変更するとき、又は選択を取りやめるとき

 

ただし、免税事業者が課税事業者を選択するか簡易課税制度を選択した場合、原則として2年間は課税業者のままです。

 

【総額表示の義務付け】

課税事業者が、消費者に対して商品の販売やサービス提供を行う場合は、消費税相当額を含んだ総額を表示しなければなりません。なお特例として平成33年3月31日までは、消費税抜きの表示価格が消費税相当額を含んだ税込価格であると誤認されないようにすれば、税込価格を表示しなくても良いことになっています。

 

 

8 税制上のメリットが多いほど難易度と煩雑さは増す

ここまで個人事業主および法人の決算と確定申告の詳しい内容と、納税対象となる税金について解説してきました。給与所得者が退職して個人事業を始める場合や、個人事業主が「法人成り」で法人となる場合、決算や確定申告の内容や手続きがどのように違うのか理解頂けたのではないでしょうか。

 

個人事業主であれば白色申告に比べ青色申告は税制上のメリットがあり、青色申告の中でも複式簿記で確定申告すれば最もメリットが大きくなります。さらに個人事業を「法人成り」で法人化すれば、累進課税で最高税率45%にもなる所得税から最高税率か低い法人税が適用されますので、所得が高いほどメリットが一段と増すのです。

 

しかし、税制上のメリットが大きいものほど規則が多く複雑になり、日常の収支記帳や決算・確定申告作業は煩雑で手間がかかることも事実です。本記事が税制上のメリットと作業の難易度・煩雑さを理解する参考になれば幸いです。

 

 


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