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OECDによる日本のニートレビュー、初公表

(出展:OECD)
(出展:OECD)

OECD(経済協力開発機構)は5月末、就業、就学、職業訓練のいずれも行っていない「ニート」に関する報告書を公表しました。

 

報告書によれば、日本のニートの割合は10.1%で、OECD平均の14.7%を下回りました。しかし2007年以降、日本では働く若者の数が約150万人減少しており、また若者のほぼ半数が非正規の職業についていることについて警鐘を鳴らしました。

 

このほか、世界のニートと比べて日本のニートは、3分の1以上が高等教育修了資格(高卒資格)をもっているなど、その特徴を詳細に分析しています。OECD報告書により世界と比較した日本のニートとの特徴と現状が見えてきました。

 

 

目次

  1. 1 日本のニート率10.1%でOECD平均を下回る
  2. 1-1 ニートの3分の2以上は求職活動を行っていない
  3. 1-2 20代後半の女性のニート率が高い?
  4. 1-3 30歳未満の引きこもり、32万人
  5. 2 OECDによるニート問題解決に向けた提言
  6. 2-1 不登校児童のフォローアップの充実を
  7. 2-2 就労支援サービスを充実させる
  8. 3 日本が今後とるべき道筋

 

1 日本のニート率10.1%でOECD平均を下回る

まず、ニートの定義がOECD報告書と日本で異なっており、報告書では「雇用・教育・訓練のいずれも受けていない15歳から29歳の若者で、求職活動を行っている者(Active)と、非求職/非希望型の者(Inactive)も含む」とされ、家事のみに従事する専業主婦(専業主夫)もカウントされます。

 

一方、日本では「15歳から34歳で、非労働力人口のうち家事も通学もしていない者」と定義され、専業主婦(専業主夫)は当たりません。

 

OECDが今回まとめた報告書である「若者への投資:日本-OECDニートレビュー (Investing in Youth: Japan – OECD REIEW ON NEETS)」は、若者の雇用、社会的支援、スキルを基に策定した「若者への投資」の7カ国目のシリーズです。

 

 

・地域別のニート割合

全国

 

 

1-1 ニートの3分の2以上は求職活動を行っていない

報告書によれば過去10年間で見るとニートの数は減少傾向にあり、2015年時点で約170万人とされます。

 

また、20代の日本の若者の4人に1人は4年間で少なくとも過去に一度はニートになっているとし、その約半数が1年超ニートであったと発表しました。
さらに日本のニートの3分の2以上が積極的に仕事を探していないこともわかりました。

 

・ 日本のニート率

ニート率

(参照:OECD「Investing in Youth: Japan」)

 

・ 世界のニート率との比較

世界のニート率

(参照:OECD「Investing in Youth: Japan」)

 

 

1-2 20代後半の女性のニート率が高い?

報告書では専業主婦(専業主夫)もニートに数えられるため、20代後半の女性の多くが育児休暇のために労働市場から退くので、ニート率における男女差は他のOECD加盟国よりも顕著だと指摘します。

 

日本の定義では、育児・家事に専念する専業主婦および専業主夫はニートに当たりません。また、他国と違い、日本では多くの若い女性が専業主婦としての生活を希望しているとの意見も紹介されています。

 

しかし、いずれにせよ、生産年齢人口が急速に減少しており移民も少ないことを考慮すると、全ての若者が労働市場に積極的に参加できるよう支援することが不可欠とのOECDの指摘を妨げるものではありません。

 

 

1-3 30歳未満の引きこもり、32万人

hikikomori

(出展:AnnaMariaPacilli.it)

 

報告書は、30歳未満の若者のうち約1.8%に当たる32万人が深刻な社会的離脱状態、いわゆる“引きこもり”だとしました。

 

引きこもりは、めったに自宅もしくは自分の部屋から出ることがなく、家族以外の誰とも関係を築こうとせず、社会的サービスによって手を差し伸べるのは非常に困難となります。

 

 

2 OECDによるニート問題解決に向けた提言

報告書では日本の若者の貧困率の高さについて、所得支援が限られていることが原因だとしてきしました。

 

ハローワークと職業訓練制度を例に挙げ、日本のニートは社会的支援と雇用支援の両方を活用できると分析。しかしながら、若い求職者が利用できる所得支援策には限りがあり、たとえば失業手当では20代の求職者のうち15%しか受給していないと指摘します。また低所得の若者は原則として生活保護の受給資格があるとしつつも、福祉事務所は主に高齢者と働く能力の低い人々を対象に支給するため、若者は0.5%のみしか受給できていないとしました。

 

その結果、日本の若者の貧困率はOECDでも高い部類に入り、18歳から25歳では20%近いと報告しました。

 

 

2-1 不登校児童のフォローアップの充実を

報告書では日本の教育レベルの高さと、子供達の学習到達度の高さについて「素晴らしい教育成果を生んでいる」と評価しつつも、国際的にみると不登校児童は少ないが、1990年始めから倍等しているとし、心理的、社会的、身体的な理由で学校への登校が困難な児童に多様な教育機会を確保することが重要だとしました。

 

報告書は、その具体策として、つぎのような政策を提言しました。

 

・ 教育課程に対する提言

1 リスクを抱えた若者の把握を向上させるため、児童生徒の出欠状況を学校と行政の教育担当者との間で共有
2 多様な教育 機会を確保のため、義務教育年齢の児童生徒で正規の教育の中で困難を経験している者に対して、不登校児童生徒のための専用教育課程の拡大やフリースクールの拡充
3 後期中等教育資格を得ずに学業を離れた生徒に対し明確なフォローアップ制度の確立

 

 

2-2 就労支援サービスを充実させる

報告書は、日本のハローワークについてキャリアの指導と相談を気軽な雰囲気で受けられると評価。全国160か所の地域若者支援ステーションは就職する準備が整っていないニートのキャリア計画の作成や雇用への障壁を克服するための支援を行っているとしました。

 

・ 雇用機会拡大に対する提言

1 自治体の福祉事務所が 就職可能な利用者を全てハローワークに誘導し、求職支援と就職のあっせんを受けられることを確実にするため、サービスの重複を避けるためにジョブカフェとハローワークの連携と情報共有の強化
2 起業の可能性を持つ若い求職者に対する小規模の起業補助金制度の整備
3 若い女性の労働参加率を上げるため、保育所増設など保育へのアクセスを改善
4 自治体レベルでの若者支援や、ハローワークの利用者のプログラム終了後・就職後のフォローアップを行う制度を確立および強化

 

 

3 日本が今後とるべき道筋

報告書では日本社会が抱える現状について、少子高齢化の進行と消極的な外国人受入れのため、世界で類を見ないほどの人口減少と急速な高齢化という課題に直面していると指摘します。

 

労働力の低下を防ぎ、将来の経済的繁栄を確保するためにも、日本は高齢者や若い女性の労働参加を促進し、労働生産性を高める政策を進める必要があります。しかし、そのためには、若者が直面する失業と不安定な雇用、そしてニート・引きこもり問題の改善に真剣に取り組まなければなりません。

 

一億総活躍社会の実現はまだまだ遠い道のりになりそうです。

 

 


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