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保育所ビジネス、ニーズはあるのに盛り上がらない理由とは

待機児童問題が取り沙汰されてから20年余り。少子高齢化で子どもの数は減っているのにどういうわけか待機児童は一向に減りません。
政府は待機児童ゼロに向けて「待機児童解消加速化プラン」など数々の政策を講じてきましたが、待機児童の数はほぼ横ばいです。

 

一方、2000年に企業による保育事業の参入が解禁され、株式会社が運営する保育所の数は徐々に増えているものの、保育所全体に占める株式会社の参入率はわずか5%。民間企業はなぜ保育ビジネスに積極的でないのでしょうか。

 

 

目次

  1. 1 保育所の現状
  2. 1-1 会社運営の保育所数、1,236園
  3. 1-2 待機児童数の推移
  4. 2 儲からない保育所ビジネス
  5. 2-1 大都市圏だからこそ赤字になる
  6. 2-2 認可を満たす基準が厳しい
  7. 2-3 保育士不足
  8. 3 株式会社運営の保育所も公的教育機関に

 

1 保育所の現状

2000年の保育所の民間開放以降、コスト削減を図るため各自治体も民営化を進めた結果、公立保育所は徐々に減少。しかし、2016時点で保育所の多くは社会福祉法人が運営するもので、株式会社の認可保育園の数はまだまだ少ないと言えます。

 

 

1-1 会社運営の保育所数、1,236園

厚生労働省公表のデータによれば、2016年度における全体の認可保育所23,443のうち、株式会社・有限会社による認可保育所は1,236で、全体の5%ほどでした。

 

・認可保育所数の推移

運営主体 2014年 2015年 2016年
公立(市町村) 9,644 9,212 8,917
社会福祉法人 12,893 12,382 12,274
社団法人 5 18 31
財団法人 75 79 79
学校法人 652 366 381
宗教法人 237 233 226
NPO 94 165 142
株式会社等 657 927 1,236
個人・その他 167 155 157
合計 24,424 23,537 23,443

(▲厚生労働省公表数値より作成 )

 

このほか、認可外保育施設として各自治体が独自で定める要件を満たした保育施設があります。たとえば東京都の認証保育所や、横浜市の横浜保育室などの自治体単独保育事業です。民間企業の従業員の子どもを預かる事業所内保育施設などもあります。

 

これまで各自治体は、保育の質の低下などを理由に株式会社に対して保育所運営の認可に消極的でした。しかし、近年の保育ニーズの高まりを受けて方針を転換。積極的に株式会社の参入を認めた結果、2016年に初めて1000園を突破しました。

 

※ 認可外保育施設は、設置基準を満たしていないか認可申請をしていない保育施設のことで、非合法な施設ではない。認可外保育施設においても、地方自治体へ届け出を義務付けている。届出を怠っている場合は、過料も課される。地方自治体では、毎年最低1回は立ち入り調査を実施し、改善指導や監督が行われている。(参照:J-Net21

 

 

1-2 待機児童数の推移

待機児童の数は2016年4月時点で23,553人、前年比386人の増加となっています。

 

・待機児童数の推移

推移

(▲厚生労働省資料より作成 参照:事業構想

 

また、エリア別に見ると、関東では東京、神奈川、千葉、埼玉、関西では大阪、兵庫など待機児童の約8割が大都市圏に集中しています。なかでも0~2 歳児の低年齢児が多く、全体の8 割以上を占めています。そのほかの地域では沖縄が2536人で、全国第2位となります。

 

 

2 儲からない保育所ビジネス

みずほ銀行産業調査部によれば、認可保育所の市場規模は約2兆円、認可外保育施設の市場規模は約1,300億円とされています。
また保育所の増設が急がれるなか、厚生労働省の後押しもあり株式会社の参入を認める自治体は増えており、ビジネスチャンスは広がりを見せているように思えます。
ところが保育所ビジネスは現実的に厳しい経営に晒されていることが分りました。

 

 

2-1 大都市圏だからこそ赤字になる

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待機児童が地方にはあまり見られず都市部に集中しているのは、人口比に対して保育所の数が圧倒的に足りていないことが原因です。なぜかというと都市部の土地価格は非常に高く採算が取れないため、特に東京23区に地方並みの面積を持つ保育所を運営するのは困難で、民間企業は政府の後押しなしに保育所を開くのをためらうようです。

 

国の補助金を利用することもできますが、株式会社と社会福祉法人とでは金額に差があります。社会福祉法人については、施設整備費の4分の3が国・都道府県から補助され、残りの分についても独立行政法人福祉医療機構からの融資が受けられます。

 

一方、株式会社については施設整備費の補助はゼロ。運営費のみの補助となっており、補助金をアテにすることができないのが現状です。

 

 

2-2 認可を満たす基準が厳しい

そもそも保育所を開設するには、国が指定する基準をクリアする必要があります。

 

・ 児童福祉法などで定められた保育所の基準

保育者数 乳児3人に1人
1、2歳児6人に1人
3歳児20人に1人
4歳以上30人に1人
保育者 原則保育に従事する者はすべて国家資格である保育士
保育所面積 2歳未満児は乳児室1人あたり1.65m2
2歳以上児は保育室および屋外遊技場1人あたり1.98m2

 

この基準を満たす用地を都心部で確保することは難しく、確保できたとしても費用対効果が悪すぎるため、会社経営者は保育所の経営に積極的でないとされます。

 

2-3 保育士不足

さらに保育士不足の問題も深刻です。みずほ銀行産業調査部によれば、保育士の確保ができないことから、保育所を新設できないといった事象も発生しています。2017年度末には7.4万人の保育士が不足すると予想されています。

 

また、およそ125万人の登録保育士全てが実際に保育現場に従事しているわけではなく、資格を保有しているだけの潜在保育士が約60万人存在すると推計されています。

 

理由としては保育士の報酬が労働環境に見合わず低賃金であることが挙げられ、特に生活コストの高い東京では、保育士だけで生計を立てるのは困難とされています。

 

・保育士として就業を望まない理由

保育

(参照:厚生労働省)

 

 

3 株式会社運営の保育所も公的教育機関に

日本総研調査部の池本美香氏は、株式会社が設立する保育所を公的な幼児教育機関と位置付ける幼保一元化の検討が必要だと訴えます。

 

「他の先進諸国では、近年、幼児教育・保育制度を、小学校以上の学校を所管する教育関連省庁の所管に移す動きが目立っている。日本国同様、教育系と福祉系のサービスがあり、それらが異なる省庁で所管されていたイギリスやニュージーランド、オーストラリアで、すべての幼児教育・保育施設が、学校を所管する教育関連省庁の下で、所管が一元化された。

 

スウェーデン、ノルウェー、デンマークでは、学校とは所管が異なっていた幼児教育・保育制度を、教育関連省庁の所管に移す改革が行われた。ドイツでも、州レベルでは、幼保小の所管が一元化されているところが3分の1を超えている。

 

そして、これらの国では、学校担当省庁が所管する幼児教育・保育施設において、株式会社の参入が進んでおり、株式会社が設置・運営する施設も公的な幼児教育機関と位置付けられている」
(参照:日本総研調査部「幼児教育・保育分野への株式会社参入を考える」)

 

待機児童問題を解消するには官民一体となって取り組む必要があり、株式会社が保育ビジネスに参入しやすくなるよう、政府には民間企業を後押しする制度が求められます。

 


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