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トランプは案外鋭い?経産省もクルマの対米輸出依存を危惧

トランプ米大統領による日本批判が再び話題となっています
1月23日、ホワイトハウスでの企業重役との会合で「アメリカの自動車は日本で販売が増えていないのに、日本はアメリカに何十万台も輸出している」と述べ、日米貿易は不均衡であると批判しました。

 

貿易問題に対するトランプ大統領の日本バッシングはメディアで何度も取り上げられてきました。ところが昨年発表された経産省による通商白書の内容が、トランプ氏の一連の批判と奇しくも一致していると注目を集めています。(参照:NIKKEI ASIAN REVIEW

 

 

 

目次

  1. 1 浮き彫りとなった自動車の対アメリカ依存
  2. 1-1 日本の対米輸出の現状
  3. 1-2 中国経済の成長は投資から消費へシフト
  4. 1-3 日本はサービス業の輸出が少ない
  5. 2 貿易収支、6年ぶりの黒字転化でトランプを刺激?
  6. 3 日本企業はアメリカ経済に十分貢献してきたが……
  7. 3-1 貿易摩擦以降、進んだ日系企業の現地化
  8. 3-2 日系企業による雇用創出は70万人以上

 

1 浮き彫りとなった自動車の対アメリカ依存

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「日本はアメリカに過度にクルマを輸出している−−」
これはトランプ大統領の発言ではなく、経済産業省が2016年に発表した通商白書※の中で指摘された内容です。

 

 

1-1 日本の対米輸出の現状

経済産業省は、アメリカ向け輸出における自動車分野の過度の集中が続いている現状を問題視。
「(日本の企業は)中国市場の変化に十分適応できておらず、国別では対米輸出、品目別ではクルマを中心とする輸送用機器への依存度が高まっている」と白書は指摘しました。

 

2015年の日本の輸出額は75.6兆円でリーマン・ショック以降最大。地域別のシェアでは、トヨタ自動車がある愛知県を中心に東海甲信地方からアメリカへの輸出が3割超を占め、対米自動車輸出の依存が浮き彫りとなりました。

 

東海

(参照:経済産業省「2016年版通商白書」)

 

また、2010年以降の伸び率を国・地域別の寄与度に分解した数値では、アメリカ(1.37%)、アジアNIEs(0.13%)、EU(0.10%)、中国(0.04%)、その他(0.68%)とアメリカ向け輸出による寄与度が他を圧倒しました。

 

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(参照:経済産業省「2016年版通商白書」)

 

自動車産業が好調なのは日本にとっては喜ばしいニュースですが、自動車産業と肩を並べる輸出分野がないことが課題。世界的に自国保護主義の風潮が強くなってきた今、輸出の主軸となるような新たな産業分野の登場が期待されます。

 

※通商白書とは経済産業省が発表する白書で、日本の貿易に関するデータを毎年発表している。

 

 

1-2 中国経済の成長は投資から消費へシフト

Chinese economy background

 

これまで多くの日本企業が中国に現地法人を設立するなど、日本は経済・貿易面で中国との結びつきを強めてきました。対中輸出では現地法人向けの鉄鋼・化学品、電子部品などを中心に拡大しました。

 

中国

(参照:経済産業省「2016年版通商白書」)

 

しかし中国経済の成長エンジンは投資から消費にシフトしつつあると、経済産業研究所の関志雄氏は指摘します。

 

「中国では、長い間、需要面では投資、産業面では工業が経済成長を牽引してきた。しかし、高度成長期から中高成長期を意味する「新常態」の段階への移行が進むにつれて、これらに代わる成長エンジンとして、消費とサービス業が浮上している。」(参照:独立行政法人経済産業研究所

 

白書は、中国の成長エンジンの変化について中国での人件費の上昇や為替変動のリスク回避のため、現地法人の現地調達率が上がってきており、付加価値の高い部品や素材だけは日本から輸出するという構造が変わりつつあるとしています。

 

中国政府は経済安定のため、今後も投資から消費への転換という方針を掲げており、これまでのような日本からの中間財※、資本財※の輸出は伸び悩んでいくことも考えられます。

 

※中間財とは、加工過程を経た製品で生産活動のため、さらに使用・消費される原材料、燃料・動力および生産活動の過程で使用される消耗品などのこと。たとえば加工過程を経て製品となる「製品原材料」、建築・土木などの建設活動で直接使用される「建設用材料」、生産活動のため燃料や動力源として使用される「燃料・動力」、さらに企業が使用する消耗品、包装材料、容器などが中間財にあたる。(参照:マネー百科

※資本財とは、将来の生産のために使用する機械、設備、原料などの財のこと。(参照:マネー百科

 

 

1-3 日本はサービス業の輸出が少ない

Participants from government ministries and agencies take part in the CYDER in Tokyo

 

一方、ITなどの非製造業については、卸売業のみが突出しており、小売業やサービス業などの海外進出が少ないことが今後の課題だと白書は指摘しました。

 

世界の貿易(輸出額)に占めるサービス貿易の割合は約20%にまで達し、先進国では国民総生産や就労人口のおおむね6割以上がサービス産業に関連しています。サービス業の輸出は重要産業となっています。

 

中国政府が投資から消費へのシフトを目指す中、このような日系現地法人の業種構成は、拡大する中国市場についていくことができなくなると懸念しました。

 

 

2 貿易収支、6年ぶりの黒字転化でトランプを刺激?

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緊張が高まりつつある日米貿易関係に対して、火に油を注ぐかのようなデータが財務省より発表されました。

 

2016年の貿易統計速報によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は4兆741億円の黒字となりました。

 

・2016年分貿易統計

輸出 金額 70兆392億円 4年ぶりの減少
輸入 金額 65兆9651億円 2年連続の減少
差引 金額 4兆741億円 6年ぶりの黒字

(参照:財務省貿易統計から作成

 

2010年以降、日本の貿易収支は赤字が続いていましたが、6年ぶりに黒字転化。前年比で輸出額は減少しましたが、原油安や円高で輸入額が大きく減少したことが黒字に転化した要因と見られています。

 

なかでもアメリカ向け輸出は6兆8347億円の黒字。前述した自動車輸出のアメリカ依存や、今回の貿易黒字転化を理由として日米間で新たな火種となる可能性も出てきました。

 

 

3 日本企業はアメリカ経済に十分貢献してきたが……

日本アメリカ

 

昨年、アメリカの大手自動車メーカーのフォードが日本から全事業を撤退するなどアメリカ車は日本市場で苦戦しています。しかし、フォルクスワーゲンやBMW、ボルボをはじめとする欧州車の売れ行きは好調です。アメリカの自動車に対して関税をかけていないため、必ずしもアメリカ車の不振の原因が貿易不均衡にあるとは言えない状況です。

 

 

3-1 貿易摩擦以降、進んだ日系企業の現地化

1970年代後半からの日米貿易摩擦で日本製品の不買運動が発生したことを教訓に、日本企業は積極的に現地法人化を進めていきました。 例えばトヨタは、アメリカで過去30年間で2500万台以上のクルマを生産し、10の工場を建設させ、現在は約13万6000人の従業員を抱えています。(参照:TOYOTA

 

・トヨタ自動車のアメリカでの歴史

1957年 米国トヨタ自動車販売拠点設立
1972年 アメリカで自動車の生産開始
1977年 米国トヨタ技術センター設立
1987年 米国トヨタ会社設立
1996年 北米トヨタの製造本部を設立
2002年 北米車生産数、1000万台達成
2006年 アメリカでハイブリッド車の生産開始
2008年 100万本のプリウスが世界的に販売された
2012年 北米車生産数、2500万台達成
2015年 トヨタ、テキサス州プラノにある北米本社を新設

 

 

3-2 日系企業による雇用創出は70万人以上

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アメリカ・商務省が2012年に発表したデータによれば、在米日系企業が創出した雇用者数(2012年)は71万8900人でイギリスの96万2900人に次いで2位となっています。

 

さらにアメリカでの輸出全体に占める日系企業のシェアは4.4%で、他の外資系企業のなかでもトップでした。

 

・外資系企業の在米拠点からの輸出

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(参照:東京財団

 

自動車関連の日経企業によるアメリカでの雇用創出について、市場調査を行う株式会社TIWの自動車アナリストは
「日本の自動車メーカーの米国での販売シェアは4割弱(約680万台)を占めており、そのうちの半分以上が現地生産。リーマン・ショック直後はクルマが売れなくなり、生産ラインを止めたり、雇用を抑えたりしたが、最近の2~3年は生産水準をかなり高めている」と分析。

 

また「基本的に、『売れる市場で生産する』という考えがあるから、部品メーカーも含め、どこも米国投資を拡大している。それにつれて雇用も増やすから現時点でもだいぶ米国のためになっている」としました。

 

さらに企業がすべてアメリカに工場を移転した場合については
「米国がすべて現地化しようとすれば、安い部品などが手に入らなくなり、おのずとクルマの価格は上がる。結果的に消費者が買えなくなり、クルマが売れなくなる可能性がある」
(参照:JCASTニュース「トランプ、赤っ恥の「的外れ日本批判」 既にこんなに米国経済を支えていた」)
とコメントしました。

 

トランプ大統領の日本批判が的外れなものだとしても、アメリカ依存の貿易関係は見直さなければならないのかもしれません。今後、アメリカは自国優先の政策を打ち出す可能性は高く、貿易摩擦の再熱が心配されます。日本はトランプ政権とどのような貿易関係を構築するのか、注目が集まります。

 

 


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